2011年1月16日放送
ぬけ落ちそうな見番
■芸妓の踊りを一般の方に披露する催し物をおこなっているが、会場が稽古場を兼ねた見番の2階の為、手狭な客席では足も伸ばすことも、体制も変えることもできず、お客様に窮屈な思いをさせてしまっている
■100人以上のお客様が2階に入ると、1階の天井がたわみ、耐久性に不安を感じてしまう
■会場が2階のため、お客様に階段を上ってもらわねばならず、きつい傾斜角と踏み板の数が、中高年の方の足腰に負担をかけてしまう
■舞台袖や後ろの目隠しが無いため、出番の人と捌ける人が同じ場所を通じて控え室を出入りすることとなり、その動線上がごった返す
■舞台の床板に穴があり、怪我をすることがある。また、老朽化が激しく、踏むと沈んだり、ミシミシと音が鳴る
■鳴り物の稽古場と踊りの稽古場が近く、両方で稽古をしていると、お互いの音が邪魔になって集中できない
■控え室が狭いため、身支度するスペースが足りず、ご近所に部屋を借りることがある
■1階に以前 貸し店舗だったスペースがあるが、現在は倉庫代わりに使われ、雑然としている
京町家の粋人
坂田基禎
構造的な不安がある。2階に上がったときに床がしなってたわんでいるように感じた。
せっかく中で稽古しているのに建物が閉鎖的。観光客が見番を訪れたときに、練習風景が少し見えるような開放的な工夫を加えると、面白い建物になると思う。
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赤いカメラをクリックするとビフォーアフターの変化をご覧いただけます
観光客に知ってもらうために
新しい外観となり、大きく印象を変えた見番。新名所となるために、お客さんを楽しませる様々な工夫を「匠」は凝らしました。
新調された置屋の名を記したちょうちんは、以前より小ぶりの可愛らしいデザインになりました。
風情ある格子戸が面した通りの角に位置する場所には、稽古中の芸妓さんの名前と芸歴の年数が書かれた札が置かれています。より親しみを持ってもらえる工夫の1つです。
格子戸の桟は上半分を下げることができ、先ほどの名札で紹介されていた芸妓さんたちのお稽古の様子を、ガラス越しに外から見ることができます。
また、暖かい季節には、全面の格子戸を開け放ち、大きく開口することで、お客さんが気軽に中に入って見学できるようにもしました。
通り沿いには、観光客が街の散策の途中に休憩できる縁台と、木桶が用意されていました。それは隣にある蛇口から出る温泉を使った無料サービスの足湯。一人用の桶を使うことで無駄がなく、お客さんにとっても衛生的です。
新しい表札
格子戸が印象的な舞台の入り口とは別に設けられた、芸妓さん達の出入口となる玄関。その脇には立派な表札がかかげられているではありませんか。
この表札の文字は、書道が得意だという見番の理事が、達筆の腕を奮って書いたもの。
それを、地元の彫師が、菱彫りという技法で立体的な文字に仕上げたのです。
理事の筆跡に沿って山型に掘り込まれた文字の部分を墨で彩色すれば完成です。
観光客や、催しを観に来た人達の目を惹く、素晴らしい出来栄えとなりました。
稽古場として、舞台として
軽量鉄骨を組み込んで構造を強化することで、視界を遮る柱が1本もない、端から端まで見通せる広い空間を1階に創りだした「匠」。
そこに現れたのは、普段は稽古場として使える、客席の設備も兼ね備えた大広間でした。稽古場となる畳敷きのスペースは、16畳もの広さです。
大広間の畳は、催しの際、動かしてベンチにすることができます。広げて配置すれば、お客さんが靴のまま入り座って観られる100人分の客席に! その左右には、演奏もできる桟敷席を作ることも可能です。
見番の軒先にぶらさげられた提灯にも描かれている四葉の紋をかたどった紋章が鮮やかな畳ベンチにも一工夫。かばんなどが置ける便利な荷物入れになっています。
また、舞台の下には引き出しがあり、座布団などを仕舞っておける、奥行き3mもの収納が5つも確保されていました。
そして、舞台の上にも、考え抜かれた工夫が。
舞台の袖には幕を隠す板があり、それを開いて障子のつい立てを置くと、そこが踊り子さんたちの通路に。舞台裏に行き来できる動線を作ったことで、出番の人と捌ける人で大混乱していた問題が解消されます。
問題点を解決した2階
2階にあった、かつて大広間だったスペースは分割し、会議や集会など、さまざまな用途に利用できる部屋として生まれ変わりました。
天井は手を加えず、以前のまま。
隣の部屋と仕切った壁には、直接行き来できる扉をつけました。
その扉をくぐった先の部屋には、大容量の壁面収納が。もちろん使い方は自由自在。部屋の奥には、ちょっとした打ち合わせにも便利な来客用のスペースが用意されました。
2階の南側には畳敷きの部屋が並びます。中央に位置するのは、およそ19畳もある控え室。壁いっぱいの収納棚には、稽古で使う楽器などを並べておけます。
そして、互いの楽器の音が気になり、稽古に集中できないという問題を解消するため、控え室を挟む形で2つの稽古場を配置。控え室の東側にあるのが、一番音が響くと言われる、三味線の稽古場。反対側には、鼓(つづみ)や太鼓の稽古場が配置されました。位置だけでなく、それぞれの稽古場には遮音シートを貼り、十分な防音対策を施しました。
鼓の稽古場の壁際に据え付けられた化粧台は、かつての梁に磨きをかけて再利用したもの。隅々まで「匠」の粋な感性が行き届いています。
埼玉県和光市
株式会社田中工務店
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