勲章のように貼られたプレートにこの電柱の歴史を感じる。 ところが、その背後に立つ土蔵群や、この町並みは、 この電柱の歴史など比にならないほどの年月を経てきている。 この風景にすっかりとけ込んでいる古ぼけたこの木の電柱でさえ、 新参者ということだ。 もし「たたら」という一大産業が生まれなかったら、 ここは今も、深い山野なのかもしれない。 豊かな資源と技術が生んだ町並みは今、 人通りもなく、少し寂しそうに青空を行く雲を見上げていた。