船通山ふもとに広がる深い森をゆく川。 辺りはすでに闇がはじまろうとしている静寂の中、 この川のほとりに立つことに少し居心地の悪さを感じる。 例えて言うなら、それは黒い雨雲が音もなく、 周囲からゆっくりと覆い被さってくるような感じだろうか。 深い森と闇が迫り来て、 私だけが取り残されていくかのようだ。 そんな心境をよそに、この川だけが唯一の生き物のように、 たえず音を立てながら流れていた。