再び樹海の道に戻る。
森が暗いのは、頭上を木々の葉で埋め尽くされているからであるが、やはりそうは言っても、布を張るようにはいかない。
ところどころに木漏れ日のスポットライトが差し込み、見ようによっては美術館の中を散策しているようだ。
そんなライティングのされているところに、ちょうどシダの葉が輝いている。
シダなど、どこでも見ることが出来る上に、はっきり言って美しいと思って、観賞することもあまりないのではないだろうか。
ところが、そこに輝くそれは、言いようもなく美しい。
静寂の中、近寄り難い空気すら感じられるのだ。
この光景に、熊野の神の気配を感じる私は、その神がとてもやさしいものであるように思えるのだった。
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