若狭湾の夕暮れ

この日、空は厚い雲に覆われていた。
ほんの少しの希望を頼りに、陽が地平線から
落ちる時間までここで粘ることにする。
日本海の大海原を眺めて、すでに2時間。
そろそろあの水平線上少しのところに、太陽が来ているはずだ。
ところが目の前の風景は、ただ闇に向かっていた。
「あと10分待とう」
そう自分に約束をしたあとは、腕時計の方につい気をとられる。
「あっ」
不思議なことに、約束の時間ぴったりに、
雲の合間から赤い太陽が顔を出し始めた。
「・・・・」
無我夢中でシャッターを切り続けた。
赤い陽が姿を消したあと、
その一瞬に対する「ありがとう」の想いが胸いっぱいに
拡がっていた。

 
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Photo&Essay:Shuji Enmando