■最近僕のお気に入りは、東京のラジオ局の番組で流されている書評や映画評をpodcastで聴くことです■まあ、いくつかのワイド番組の、それぞれ2,3のコーナーがアップされているのを全部iPodに入れて順に聴いてるわけなので、その種の批評コーナーはその中の一部なのですが。でも、毎朝愛犬と散歩してる時間や、通勤での歩きの間(電車に乗ってる間は読書か居眠り)ずーっとなので、なんだかんだで1日2時間くらい聴いてるるんじゃないかしら■書評の方は、ヒットシリーズ「文学賞メッタ斬り」のコンビとして有名な、大森望さんと豊崎由美さんのコメントが辛口で激オモロです■で、今特にハマっているのは、町山智浩さんと宇多丸さんの映画評■町山さんはアメリカ在住で、歯に衣着せぬ辛口批評で有名です。大手資本が金を出し大スターが出演する類型的な大作映画を舌鋒鋭く批判し、「映画」が今何を伝えるべきか、語るべきか・・・そんなことをいつも熱く語られています。日本で公開予定のなかった、あのルワンダの虐殺を描いた秀作「ホテル・ルワンダ」の上映運動を続け、遂に実現させたことでも有名です■一方宇多丸さんは、ライムスターというヒップホップ・グループのラッパーです。その方面のこと僕はまったく分からないので説明できませんが、日本のラップ界の草分けとも言えるスターだそうです。でもね意外にも (という云い方は不適切ですが)、 この人の映画の分析力、そしてその表現力が凄いんですよ。それもそのはず (と云うのもまた不適切ですが)、東京の超有名進学校から超一流大学を卒業されている秀才だそうです。なんと、高校時代に全国模試2位という実績の持ち主だとか。考えてみれば、ラップのリリック (っていうんですか) をよく聴けば、そのメッセージ性、語彙の豊かさ、リズム、構成力、韻の踏み方・・・どれをとっても非常に高度な技術や知識が必要ですよね■でこの宇多丸さんが自分の持ち番組の中のコーナーで、同時代性や倫理性にこだわりつつ実に論理的に、洋邦問わず公開中の映画を20分間語りまくる・・・これがすんごい芸なんです。時にはその番組の放送局が出資している映画を酷評することもあり、その勇気には、拍手拍手です■でもね、不思議なモンで、「あれだけボロカスに云われる映画って一体どんなんだろう?」って怖いもの見たさでかえって観たくなったりして。的確な批評っていうのはどんなジャンルにも大切だよなーと思う次第■ああしかし、映画に比べて演劇の批評って難しい・・・■今、ABCホールでは、アクサルが5日間、8ステの公演中ですが、これだって長い方ですからね。例えば批評家や新聞記者の人がこの作品をご覧になって新聞や雑誌に劇評を載せても、それが世に出る頃にはとっくに公演は終わってる。まあ、1か月近いロングラン公演なら、初日を観ての批評が新聞に載り、それが読者の観劇のガイドになる、ということもないではないですが、関西では、歌舞伎や相当メジャーな商業演劇でしかそういう状況は生まれないわけで・・・■しかも舞台芸術はフィルムと違って複製がまったく不可能ですから、実に悲しい■だから必然的に、「演劇批評の構造」というものを少し意地悪く解釈すればこうなります。
「こんな劇が先日上演された。こういう欠点は少しあるが、こことこことここが実に素晴らしかった、十年に一度の傑作だ!!・・・しかし、残念だがもうこの作品をあなたは永遠に観ることはできないのだよ。私は関係者招待席で、しっかりこの目に焼き付けたがね、ふふふ・・・」 なんてね。
■批評というものは鑑賞ガイドのためだけにあるのでは無論ないけれど、でもなあ・・・そういう困難が演劇というジャンルのファンを限定しているよなあ■ま、「その時その場にいた者だけが共有できる体験」という特権性が、演劇の一番の快楽のツボではあるのですが(艦長)
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- 2008年12月27日土曜日