■中学高校時代の一時期、「京都労演」という会に入っていました。京都勤労者演劇協会。職場や学校で何人かのサークルを作り、そのサークル単位で会員になって会費を払うと、毎月1回その町で上演される演劇のチケットがもらえるという、全国いくつかの都市で運営されていた演劇鑑賞組織です。やってくるお芝居は、文学座、民藝、俳優座、青年座・・・といういわゆる新劇系の大劇団がほとんど■僕が所属していたのは1970年ごろですから、まだ世の中全体に政治運動の嵐が吹き荒れており、演劇を作ることはもちろん、鑑賞することも、「運動」、「学習」の一環であるという空気が濃厚でした。思春期を迎えたばかりの僕は、劇場ロビーなどに漂うお勉強っぽい雰囲気に反発し、「なんか暗くて小難しくて新劇って面白くないよなー。観る方もなんかスカしちゃってさー」なんて思っていたのです■でも地方都市に暮らしながら、例えば滝沢修さん、宇野重吉さん、杉村春子さんら日本演劇界の偉人たちの舞台をたくさん観ることができたのは今にして思えば貴重な体験でした。後年番組でお会いした時に伺ったのですが、僕と同い年の俳優・段田安則さんは高校時代京都労演でバイトされていたそうです。僕はサークル代表で御所の近くにあった労演事務所に毎月通っていたので、ひょっとしたら、僕が段田さんに月例会費を渡して代わりにチケットをもらった・・・なんてこともあったかもしれません。ま、どうでもいいんですけど■先日ABCホールに劇団民藝の方が秋の公演の下見に来られたもので、ふと懐かしくなって例によってネットで調べてみたのですが、京都労演はまだ存続しているものの、大阪労演は一昨年の末をもって解散したそうです。60年代半ばには何と20,000人!もいた会員が最後は400人になっていたとか。なんだかとても寂しい気がします■僕が京都の町でちょっと疑問を感じながらも労演の例会に通っていた頃、東京では、唐十郎、佐藤信、寺山修司ら「新劇」に異を唱える人たちの爆発的な活動によって演劇の表現そのものが大きく様変わりを始めていました。やがて政治の季節が終わり、バブル景気へと向かう時代の空気の中で、唐さんたちが始めた新しい手法はその刺激的な娯楽性の部分だけが受け継がれ、日本の演劇の主流はエンタテインメントとしての色をどんどん濃くしていくのです。・・・うーん、僕も大学に入る頃からそういうエンタメ系演劇の洗礼を受け、その魅力に目覚めたクチではあるのですが・・・■やっぱりがっちりした新劇も、労演も繁栄していてほしい。生命世界と同じく、一番大切なのは「多様性」だと思うのです。
■さて、この秋、ABCホールで上演される民藝のお芝居はこれです!
すごいやろー!別役の新作で、大滝秀治でっせ!
(ここは勢い重視で敬称略・艦長)
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- 2009年03月10日火曜日