■ABCホールプロデュース#3『目頭を押さえた』、一昨日無事終了しました。ご来場いただいたお客様、本当にありがとうござました■金替康博さん、緒方晋さんら、関西が誇る巧い役者陣、そして東京小劇場界の人気女優・七味まゆ味さん。芝居好きなら誰もが『いいキャスティングですね』と褒めてくださいました。そして作品の骨格となったのが、横山拓也さんの脚本、上田一軒さんの演出です■この2人が初めて組んだのは、実は"真夏の會"という演劇ユニットで2009年に上演された、『エダニク』というお芝居でした。この作品は日本劇作家協会新人戯曲賞を受賞し、その後2011年に伊丹と東京で再演されました。僕はこの時お誘いをいただいていたのですがスケジュールの都合がつかず観に行けませんでした。ところがこの公演を観たN君がその内容の素晴らしさに感銘を受け、その話を聞いた僕も後日ビデオを取り寄せてもらって拝見し・・・結果今回の公演の中核を担っていただくことになったのです■『エダニク』は、タイトルから連想されるとおり、食肉処理場で働く人々のお話です。普段なかなか人の目に触れない場所なのですが、横山さんは現場をきっちり取材して執筆し、リアルな会話劇に仕上げました。『働くこと』についての男たちの物語です■そして今回、横山・上田コンビが挑んだ題材は、『人を葬ること』についてでした。これまた重たいけれど、人生において誰もが直面する問題です。誰もが何度か近親者の死に立ち会い、そして最後は自分が主人公になる。僕個人も3年前に父を亡くし初めて喪主というものを体験して、その時も『お葬式ってドラマの宝庫だな』と心の片隅で考えたりしていたこともあり、とても興味がありました。脚本が徐々に上がってきて、『喪屋』という不思議な存在や、『村人の遺影を撮る女子高生』という実に巧みな設定を目の当たりにし、手応えは更に強まりました。面白くなりそう。・・・しかし、いくらいい芝居が出来ても、お客様に観てもらわなければ意味はありません■PRという点では、難しい作品だったといえそうです。、絶対面白いんだけど、地味。チケットを買おうか迷っているお客様に、どうすれば『目頭』の魅力が伝わるだろうか?朝日放送が主催する舞台ですから、テレビやラジオでのPRなど、一般の小さな劇団に比べればはるかに情報宣伝に関する条件は恵まれています。それでも、やはり相当の困難が予想され、それは当たりました■しかし、初日が開き、お客様の高い評価が口コミやTwitterなどで広がったのが力となったようです。千秋楽は、お蔭様で満席で終えることができました。前にも書きましたが、新聞や雑誌に載る"劇評"というものは、残念ながら、特に関西において滅多に観劇ガイドにはなりません。読者の目に触れた時点で殆どの場合その公演は終了している。対して、Twitterを代表とするソーシャル・メディアは、誰でもほぼリアルタイムに観劇の感想を発信することが出来ます。初日が開いた後、どれだけの感想ツイートが寄せられるかがその後の集客に大きな影響を及ぼす、とは最近楽屋内でよく云われているお話です。今回も、ご覧いただいた皆様の声が大きな後押しになったのだと思います■小劇場におけるロングラン公演の必要性を説く声を最近よく耳にします。"どこの劇団だから"、"誰が出てるから"、ではなく、『面白いから』お客様が集まる、というのは、興行としても芸術活動としても正しいあり方であるはずです。だからこそ、のロングラン待望論なわけですが、小さなカンパニーには経済的においそれと挑戦できないことも事実です。すでにお伝えしたとおり、今秋以降ABCホールでは定期的なTV番組収録がなくなり、これまではお断りせざるを得なかったロングラン公演が出来るようになりました。どうですか?関西の現状を変えるために、誰か一緒に考えませんか?■・・・さてさて、関西若手劇団期待の星・ミジンコターボさん、今朝小屋入り。これまで文化祭には出ていただいてますが、劇団公演としては初ABCです。すごく素敵な舞台装置が出来上がりつつあります。初日は金曜日!長くなったのでミジンコさんの件は明日にします■写真は、千秋楽の終演直後、『目頭』の作/演とキャスト、黄金の十人です。イェイ(艦長)
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- 2012年07月25日水曜日