■高校野球は連日熱戦を繰り広げています。僕的に正確に申し上げると、「いるようです」。朝日放送従業員としてそんなことでよいのか!とお叱りを受けそうですが、自分が高校球児より年上になってしまった時点で、あまりTV観戦もしなくなってしまいました■子供の頃は、高校野球ファン、というより京都の某古豪チームのファンだった祖父に連れられて、西京極球場によく地区予選を観に行きました。また高3の夏には、母校の野球部の応援団に参加しました。男子校だったものでチアガールなどいません。さてどんな応援をしようかというミーティングを同級のY君の部屋でやることになり、それが終わって皆と一緒に帰ろうとしていたらY君に引き止められ、その後二人で交わした会話が高校時代の僕の大切な思い出のひとつなんですが、それはまた別の話■大人になってからは唯一、KKコンビのPL学園は見ていた気がします。『甲子園は清原のためにあるのか!』という植草アナの伝説の実況も生で聞きました。そんなところ。実は今年の地元の代表校がどこだかも知らない体たらくです。申し訳ありません■さて、奇特にもこのブログを読んでいただいている方はご存知かと思いますが、この1月から、『浦川泰幸の劇場に行こう!』というラジオ番組で、近々上演されるお芝居について毎回1コーナー喋らせていただいております(毎週日曜21:05~22:00、もちろんABCラジオ 1008kHzです)。『貴重な電波やないか、シロートのおっさんに喋らせるより○○か誰かに喋らせろ、ないしはオレが喋る!』という声なき声があるのは重々承知しております、しかしまあ、予算やスケジュールなど諸々事情がありましてご容赦ください■外部の方にお願いしにくい理由のひとつに、『プロ野球のナイター中継が押すと放送が短縮、あるいは無くなってしまう』という事情があります。ご存知の通りABCラジオは阪神タイガースのゲームを中心にお送りしているわけですが、ラジオの野球中継というのはテレビに比べて大変フットワークが軽く、A球場で予定されていたタイガースの試合が中止になったら直ちにB球場の別試合に切り替え、みたいな態勢が整っていて、しかも昨今ドーム球場が増えていますから、真夏の日曜の夜には必ずどこかでナイターをやっており・・・(泣)。実は昨日・8/18夜の『劇場に行こう!』の放送も見事なくなってしまったのです■演劇、しかもたいてい小劇場演劇についてレギュラーで喋るというラジオ番組というのも全国的に見ても稀有ではないかと、いつもそれなりに頑張っているわけですが、大変残念です。
■昨夜ご紹介しようと思っていたのは(というか録音・編集まで済ませていたのは)、8月22日(木)から27日(火)まで、大阪・日本橋のin→dependent theatre 2ndで上演される、悪い芝居の『春よ行くな』という作品でした。いま全国的にも注目の若手演劇人の一人である山崎彬さんが劇作・演出をつとめる劇団の新作です■実は先週、京都の稽古場に取材というか見学にお邪魔したのでした。面白かったー!悔しいのでそのことを少し書きます■稽古のはじめ、演出の山崎さんと俳優の対話の時間が持たれたのに先ず驚きました。役へのアプローチ、今回なぜこういう身体性にこだわるのか、みたいな。演劇論ってやつですね■前に番組内では少し話したことがあるのですが、1990年代後半以降、日本の演劇はかなり「わかりやすく」なっています。60年代に始まったアングラ・小劇場運動では、才能溢れる作家がイメージの赴くままに書いた、筋とか辻褄とかはよく分からないけど何だか面白くて高揚する舞台がメインストリームでした。バブル期にはそれがより洗練され、それでもやはり結構難解であることに変わりはない作品に、大企業がお金を出したりもしていました。『ストーリーより演劇ならではの華やかな興奮』、が価値を認められていたのです■しかし、阪神淡路大震災やオウムの事件が起こった95年頃から、演劇界に『物語回帰』が叫ばれるようになります。演劇のみならず、恐らくあらゆる表現において、頭でっかちの理論よりも、わかりやすさ、感動、が、求められるようになってきた。不安な時代、右肩が上がっているとはいえない時代の空気なのかもしれません。言い方に少し悪意がこもっていて恐縮ですが(ここはあくまで僕の嗜好性の問題です)、若手集団のレパートリーに、RPGみたいなファンタジー芝居、あるいは閉鎖的シチュエーションコメディが増えたように思います■話が少々大きくなりましたが、山崎さん自身が冗談ぽく話してくれたように、悪い芝居はそういう意味において、『古い芝居』だという気がするのです■『春よ行くな』には、現代日本の若者の生活を彩る様々な記号が溢れています。言葉遣いはとてもリアルで軽い。しかしそのコミュニケーションの底に横たわる"何か"は果てしなく重く、切ないのです。正直云って、『オシバイを観て元気になりたーい!』という方にはお勧めできません。置いていかれるかもしれない。しかし、『演劇にとってリアルな俳優の身体と言葉とは何か?』『それによって何が表現できるのか?』・・・まあそんな頭でっかちな動機でなくても、現代演劇のひとつのエッジに触れてみたい、演劇でしか味わえない興奮を体験をしたいという方には是非観てもらいたい、と思いました■ところで、どうして『悪い芝居』という劇団名なのか?ホームページやチラシには『悪いけど芝居させてください』の略だ、と書かれていますが、多分嘘です。または韜晦です■かつて日本で、『悪所』といえば遊里と芝居小屋でした。つまり、芝居小屋は、遊郭と並んで人間を駄目にする場所だとされていたのです。『悪い芝居』は、ちょっと健康的になり過ぎた日本の現代演劇に、密かに悪だくみを仕掛け続けているのだと思います■悪い芝居『春よ行くな』、22日(木)初日です(艦長)
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- 2013年08月19日月曜日