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明日へ

■というわけで、劇団Patch『SPECTER』全9ステ終了。次回公演『幽悲伝』(作/演出・末満健一)は、堂々森ノ宮ピロティホールで上演です■「もう帰ってくるなよー!」なんてつれないことを言う気はありませんが、とはいえ劇団Patchは『好きの一念』だけでやっている集団ではありません。日本の芸能界を長らく背負い、業界の表も裏も知りつくした大手芸能プロダクションが運営している劇団です。いずれ、いや一日も早くビジネスとして成立することが宿命づけられているのです。それはひょっとすると『劇団』としてでなく、その中の幾人かが『俳優』、『タレント』として売れていくことであるかもしれない。当たり前のことですが、そんな厳しさを湛えた劇団Patch、一つ先のステージに進んだことだけは間違いありません。健闘を祈ります。

■いやあ、でも、若い劇団とかね、学校の演劇部とかね、素敵ですよね集団として。Patchの若者たちの努力、そして彼らに対する演出家の厳しい指導をハタで見ていてつくづく感じますが、演劇は心の格闘技です。球技では味方同士でボールを投げあったり蹴りあったりしますが、演劇においては『心』がボールなんです■・・・私見ですが、『演技』とはつまるところ、俳優の演じる役が、≪今この状況でどんなふうに台詞を喋りどんなふうに動くべきか≫を、彼(女)の『心の中のシステム』が判断し実行した、そのアウトプットです。そしてこのアウトプットを見る人が見れば、その俳優の『心のシステム』を形成している彼(女)の知性や感受性や人生経験、そしてシステムが出した結論を的確に表現するための肉体的スキルのレベルも含めて、全部露呈してしまうのです■だから、サッカーの練習中先輩に「どこに蹴ってんだよ!!」と云われるのと、演劇の練習中に演出家から「なんだよその芝居!!」と云われるのとでは精神的ダメージが全然違う。人間全体を否定されるみたいっていうか•••。特に、不安定な自我を抱えた思春期の子たちが集う高校の演劇部って、結構大変なところなんです。ある意味、傷つけあってばかりかもしれません■なんて、今更ながらに思ったのは、先日ついに、映画『幕が上がる』を鑑賞したせい。原作・平田オリザ、脚本・喜安浩平(「桐島、部活やめるってよ」)、監督・本広克行、主演・ももいろクローバーZ、という最強の布陣による、高校の演劇部を題材にした映画です■本広監督と云えば、「踊る大捜査線」シリーズをはじめとする大作映画を手掛ける一方、小劇場に足繁く通う演劇通としても知られています。常に新しい才能を求め続け、特に、京都のヨーロッパ企画の2作品、「サマータイムマシン・ブルース」と「曲がれ、スプーン」を映画化されたのにはヨロキカファンの僕もびっくりしました。今回は演劇作品の映画化、ではありませんが、高校演劇に青春を捧げる少女たちの奮闘を描きながら、作者である平田オリザさんの演劇論も詰まった一作。青春映画としても、アイドル映画としても、とても素敵な作品でした■余談ですが、作品中に、青森在住の高校演劇界のカリスマ顧問・畑澤聖悟さんによる「修学旅行」、「もしイタ~もし高校野球の女子マネージャーが青森のイタコを呼んだら」、「さらば!原子力ロぼむつ」などの傑作群が、ももクロたちのライバル校の作品としてチラリと登場するのも高校演劇ファン(?)にはたまりません■よかったなあ・・・。柄にもなく何度もウルウルしてしまいました(艦長)

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