「匠」が訪れたのは、1階で美容室を経営する、あべこうじさんのご実家。ご両親とあべこうじさんが「匠」を出迎えます。紹介もほどほどに、早速現場検証で家の中へ。問題のカウンターテーブルが置かれたダイニングルームは2階にありました。話を伺った「匠」は、諦め顔のお母さんの気持ちを汲んで、リフォームに挑むことに。
2階の構成を変える大胆なリフォームになるため、2階のキッチンと隣の和室にある荷物を一旦外に預けることになりました。次々と荷物が運びだされる中、「いつもこうなっていれば本当はね…」と、お母さんが名残惜しそうに磨き上げたカウンターテーブルも分解し、しばしのお別れです。
全ての荷物が運びだされ、がらんとした2階の室内では、和室の畳を剥がし運び出し始めました。畳が無くなると、2つの部屋の間にあった壁や鴨居が取り壊されました。柱も切断され、ひと続きの空間になった部屋の境目には、太い梁を新たに入れて、しっかりと補強しました。これで広々としたLDKとして使う準備が整いました。
続いて、壁にあったキッチンを撤去。空いたスペースには、大きな食器棚が作り付けられました。そして、食器棚の手前の床には穴が開けられ、給水管が通されました。そこに置かれたのは、さきほど解体したばかりのキッチン。まだ10年程度しか使っていなかったため、向きを逆にして再び設置されたのです。
工務店の作業場で待つ「匠」の元に、あべこうじさんが駆けつけました。呼ばれた理由を「匠」に問うと、おもむろに「匠」が大きなシートをめくり上げました。そこにあったのは、あのカウンターテーブル。これを部屋に合った形に加工して、より一層使いやすいキッチンにしようというのです。
「匠」から作業の手伝いを頼まれた あべこうじさん。職人さんの手ほどきを受けながら、カウンターテーブルの分解作業を始めました。すべての部品をひとつも捨てることなく、丁寧に取り外されたパーツは加工され、使いやすい形にリメイクされていきます。
翌日、カウンターテーブルが再び家へ。運びこみの手伝いをする あべこうじさんも、リフォーム中の2階へ上がるのは、これが初めて。すっかり姿を変えた2階に感動する あべこうじさん。天井から下がるセンターフードの換気扇にも驚き、口から繰り返しでるのは「すごい」の一言。
感心している間にも、どんどん組みあがっていくカウンターテーブル。移動したキッチンにぴったり合わさると、再び感嘆の声をあげる あべこうじさんに、「匠」から収納についての説明が。カウンターの天板が跳ね上げ式になっており、その下にはリメイクによって反対向きに取り付けられた、容量たっぷりの使いやすい収納があるのです。
アイランドキッチンとなったその向かいに、カウンターテーブルが一体化し、すっきりとしたスペースへと生まれ変わったダイニングルーム。匠の見事なパズルによって真っ直ぐになったカウンターは、最大5人が並んで食事をとることが出来るようになりました。以前はシンクの中で、まな板を使っていたお母さんのために新たに作業台も設置されました。
反対向きに取り付けられた収納は、天板の一部を跳ね上げ式にすることで、簡単に出し入れができます。さらに天板を跳ね上げ式にした理由がもうひとつ。元々、天井にあったロフトへの収納梯子をカウンターにぶつけず下ろせるよう、計算されていたのです。キッチンの向こうの壁には、大容量の食器棚を備え付けました。
かつて台所の隣にあったご両親の寝室は、壁を取り払われ、広々としたリビンクダイニングの一部に。「ゴロゴロしながらテレビを観たい」というお父さんのために琉球畳が敷かれたスペースは、新たに貼り足したフローリングとフラットにつながっています。家具を置かずに済むよう、一角には大きな収納も作り付けられました。
元は、あべこうじさんの部屋で、ほとんど使われていなかった2階北側の洋室は、ご両親の寝室にあった畳が表替えされて敷かれ、新たなご両親の寝室に生まれ変わりました。反対側から使っていた押し入れは、タンスや家具が置けるスペースとして使えるよう姿を変えました。こうして完了したリフォーム。いよいよご両親にお披露目です。
まるで他所の家の様と驚くお母さんに、憧れのカウンターテーブルがより便利に使えるようになったことを報告。お金の心配をするお父さんには、「稼いだお金も、他に使えるところが無いから、お父さんとお母さんの為に使えて良かったよ」と照れる あべこうじさん。そこにやってきた「匠」も、お母さんの嬉しそうな顔を見て、安堵の表情を浮かべます。そして、あべこうじさんが、色々と苦労を掛けたことへの感謝と、これからも元気でいて欲しいという願いを、ご両親に伝えたのでした。