「匠」を、出迎えるユージさんとお母さん。
早速、庭へと案内します。
玄関の階段も自分で作ったというお母さんが手がけた庭の飛び石。話を聞いていた「匠」がふと、『ハート型』の飛び石に気づきます。理由を尋ねると、飛び石を埋める作業が地味だったので、たまに遊ばないと続かなかった、とのこと。
最初は雑草が生い茂り、不法投棄のゴミや廃車まで捨てられていた土地を、ユージさんとお母さんの二人で片付けて、重機で整え耕したとのこと。これにはさすがの「匠」もびっくり。
さらに驚くことに、かつて建築関係の仕事をしていたユージさんの経験も活かして、途中までしか無かったブロック塀を、お母さんと二人で庭を一周するように仕上げたそうです。しかも鉄筋も入った本格的な作業。
ふと、庭に置かれたビニールシートが「匠」の目に留まります。シートの下から出てきたのは、ブロック塀を作ったときのセメントや道具。雨に濡れないようにとシートを被せてあったのです。
自前で揃えたプロ仕様の道具の数々。その中には、テコの原理で簡単に鉄筋が切断できる「鉄筋カッター」も。鉄筋を切断するお母さんはあまりいない、とユージさんも苦笑い。
庭に置かれた倉庫。実はこれ、お母さん手製です。しかもキットではなく、完全オリジナル。外観を見た「匠」は、デザインも含め完璧だと言ってくれましたが、「実は問題あり」とお母さん。付けた扉が内開きで、中に入って扉を閉じないと物が取り出せないという難点が。
更にお母さんの頑張りどころが…水はけの悪い赤土が、駐車スペースをはじめ庭全体を覆っていたのですが、石で壁を作り、土をさらに盛ることで、根が腐らない深さの土壌を持った畑を作り上げたのでした。全てを独学で学んだお母さん。今では30種類もの無農薬野菜を育てています。
親孝行リフォームは、「匠」やかつての仲間の助けを受けながら、無事終了。
想いを込めて作った庭がついに完成しました。
お母さん手作りの飛び石の回りに手入れが簡単な和芝が貼られると、生き生きとした緑が鮮やかに映え、庭に出るのがますます待ち遠しくなるアプローチになりました。
庭仕事が好きなあまり、無理をして腰を傷めてしまったお母さんが、少しでも楽に作業出来るよう、60cmも高さがある畑を作りました。
ここでは、今までできなかった根の深い大根や人参などの根菜が育てられます。
植木鉢が雑然と積まれていた庭の西側には、新たに畑仕事に便利な水回りの設備が整いました。地中には、500リットルの雨水が溜められる貯水タンクが設置されています。また、電動ポンプが装備されているので、普段は蛇口をひねるだけで、不自由なく水が使えます。雨水を使うので水道代がかからない上、停電でも使える手押しポンプも装備、万一の時に安心です。
そして、もう一つお母さんの負担を減らすものがありました。足下の赤いバルブを開けると、畑の間を走る緑のホースからスプリンクラーのように自動で散水をしてくれるのです。
50坪の庭の畑仕事を一人でこなすには大助かり!
かつて、庭づくりに使う工具や農作業の道具が雑然と置かれていた家の軒先には、畑作業の合間に休憩したり、友人を招いてバーベキューなどが楽しめる多目的なテラスが完成しました。テラスの基礎の中には、本来使う砕石の代わりに、壊したブロックや駐車場からでた土を無駄なく再利用しています。
テラスに置かれた「匠」オリジナルのテーブルは廃材だけで作られており、脚には柱、天板には丸太が使われています。
お母さんが腰を傷めたせいで、作りかけのままになっていた駐車場。ここでも廃材が活用されました。
雨が降るとすぐにぬかるむ赤土には、古タイヤ28本を埋めて滑り止めとしての役割を持たせました。間に砕石を敷いてタイヤをしっかりと固定すると、さらに赤土を敷き、芝生を植えて、緑が眩しい駐車スペースが完成しました。
幅が1mほど広がった駐車スペースの入り口から続く壁は、廃材のアスファルトを『小端積み』という技法で積み上げ作りあげたもの。不規則な断面が自然石のレンガのような独特の風合いに仕上がっていきました。その壁の内側の植栽や、駐車スペース壁面を飾る「残った古タイヤと木の枝で作ったプランター」は、四季の彩りを添えてくれることでしょう。
工具や農機具が入りきらなかった、お母さん手作りの小さな倉庫は、「匠」の手によって真っ二つに分けられた後、間をつなげ横幅を広げて約3倍の大きさに。その正面の壁にはユージさんが描いた、燦々と太陽がふりそそぐ真っ青な海と常夏のビーチ。それは、お母さんとの大切な思い出がある、自分が生まれ育ったマイアミの風景でした。
得意の絵で想いを表現したいと、ユージさんが2晩かけて描き上げた絵が印象的な倉庫。
もちろんその中も完璧な仕上げ。
中の広さはおよそ4畳。棚が取り付けられ、工具や農作業の道具を整理して収納できます。
廃材のスタイリストは、無機質で殺風景なブロックの外壁にも、楽しい演出を用意していました。今回参加してくれた仲間たちが、一緒に庭を作った記念にと、裏の空き地に落ちていた枯れ木や、余った廃材を利用して作品にしたものを、この庭の新たなシンボルとして、まるで壁に開けられた窓のように掲げました。