梅雨が明け、初夏を迎えた沖縄県久米島に、ある家族からの依頼を受けて1人の匠がやってきました。
久米島と言えば、小島よしおさんのお母さんが営む店を手がけた、松永務。
今年3月の新装開店以来、お母さんの店は前にも増して連日大盛況なのですが、
困っていることとは、一体何なのでしょうか?
家庭用の5倍ものパワーがある業務用の高圧洗浄機を使い、屋上の汚れを一気に落とします。
屋上への唯一の動線は店の裏にある外階段。重さ80キロ以上ある機械を運ぶのにひと苦労。
常連客の皆さんの助けで作業もはかどり、長年溜まっていた汚れはきれいに落ちて、40坪以上ある屋上が隅々まで磨き上げられました。
実は、洗うと同時にひび割れのチェックを行い、屋上からの雨漏りがないことが確認できました。
大工さんと共に到着したのは、あらかじめ指定した長さにカットした足場用の鉄パイプ。さびに強いメッキ加工が施されています。
さらにコンクリートブロックも運び込みます。
そのコンクリートブロックを屋上の周囲を囲む塀に沿って等間隔に並べると…
その真ん中の穴に長さ2メートルの鉄パイプを立て、横にも鉄パイプを渡し連結。
お隣は民宿の客室、北側には住宅がある屋上。
目隠しのフェンスを作ることで視線を遮り、お客さんが屋上に上がっても迷惑が掛からないように。
屋上全部を客席にするには広すぎるので、ぐるっと囲い、目隠し兼客席のエリアを絞りこむという2つの役割があります。
屋上の塀に沿って立てた鉄パイプの骨組み。
そこへ運ばれてきたのは、様々なサイズの金網。それを四角く組んで、フェンスの足下を固めたコンクリートブロックの基礎を囲んでいきます。
小島さんの伯父さんから譲ってもらった2トントラックいっぱい分の琉球石灰岩。
それらをフェンスの足下を覆うように組んだ金網の中へ、ぎっしりと詰め込んでいきました。
コンクリートブロックの支えも作り安全になっているが、さらにガーデニングで石を詰めて使う「ストーンボックス」を利用し、台風に対し、万全の対策を施した匠。
琉球石灰岩を足下に積むことで重石にし、見た目にも沖縄らしい雰囲気を味わえるようにしました。
作業は屋上だけでなく、店先でも進められていました。
およそ2畳分のコンクリート土間を剥がし、撤去。
そこに型枠が組まれ、コンクリートが流し込まれました。そこは何やら片側が半円状に丸く型どられています。
その真上では、木の庇が切り取られ、庇だけでなく屋上のブロック塀も切断し、幅1メートル分が完全に取り除かれました。
店の正面に組んだコンクリートの基礎には、金物を等間隔に丸く並べ、時計の文字盤のように配置します。
そして、その中心の金物に、5メートルの足場用の鉄パイプが立てられました。
そして、中心のパイプと周囲のパイプを短いもので繋ぎ、そこにアルミ製の板が取り付けられました。
3ケ月前に完成したばかりの庇を一部切り取り、店の前に作ったもの、それは…
そう、屋上へと伸びる螺旋階段。
実はそこに、松永の緻密な動線計画がありました。
屋外の席が好評で、行列までできていたオーハッピー。
その店先に螺旋階段が出来、そこから上がる屋上に待望のテラス席ができました。
掛け看板は見えやすい位置にかえ、螺旋階段にはネットを張って安全対策も万全。
店の前のデッキは、螺旋階段まで段差なく最短距離でアクセスできるよう延長。
その上り口には扉を付け、営業時間外は閉めておけるようにしました。
キッチンから受け取ったテイクアウトの料理を楽に運べるよう階段の幅も広めにしています。
殺風景な屋上が、南国リゾートにぴったりの開放的な屋外テラスに大変身!
店の前のルーバーと一体となった日よけを組み、その下にテーブル席を3つ。
適度に日差しを遮りつつも沖縄の青空が満喫できるこの席は、常連さんが大勢集まっても余裕の広さです。
少し日差しが強すぎる時には、日よけについているロープを引っぱると…
客席の上にシートが張られ、日差しを遮ることができるのです。
急なスコールにも対応できます。
むきだしになっていた貯水タンクの目隠しを兼ねて、フェンスでスペースを仕切り、新たにヤシの木を囲むベンチ席を2つ設けました。
匠が、断水した時のための貯水タンクに与えたもうひとつの役割。
それは、琉球石灰岩や赤瓦を使い、南国の草花で飾った水場。暑さを和らげ、心を潤す、真夏のオアシスが誕生しました。
水受けにあしらわれた青や緑のきれいなガラス模様。
実はこれ、匠と小島さんが2人で作りあげた物。
海で拾った珊瑚や貝殻も使って小島さん自らがデザイン。
可愛らしいカメやカニのモチーフで、自然豊かな久米島の海を表現しています。