2010年7月25日放送
裸で庭を駆け抜ける家
■築およそ70年の京町家で、土間と座敷の40cmの段差や、高さ60cmの空井戸の上に乗せた食器棚など、家主の78歳のおばあちゃんには上り下りが厳しい箇所が幾つもある
■押入れの中の階段が、踏み板の奥行きが狭い上、急角度なため、上り下りが非常に危険
■洗面所やトイレ、お風呂などの水回りが、すべて家の外にある
■家の外にあるお風呂場は、脱衣所が無く、湯上りにはバスタオル1枚で、近所の目を気にしながら、裏庭を走って家の中に駆け込んでいる
■おばあちゃんが普段過ごしている1階の3畳間は、光がほとんど入らず、昼間でも真っ暗
■5年前に瓦を全て葺き替えたが、2階の天井は、酷い雨漏りの跡がそのままで、今にも崩れ落ちてきそう
■台所が通り庭の土間にあり、冬場の冷え込みが厳しい。設備も古く、流し台の排水が土間に直接流れている
動線の旅人
関谷昌人
今はお一人で元気に、段差や急な階段もなんとか大丈夫と言いながら暮らしているが、いつまでもそうは言ってられない。やらなければならない事は沢山ある。
ただ、町屋の形が綺麗に残っているので、それを上手く活かしてリフォームすれば、面白い事が出来そう。
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赤いカメラをクリックするとビフォーアフターの変化をご覧いただけます
風情と歴史を感じる住まい
「匠」は、おばあちゃんが今まで使っていた家具も再利用して、より味わいのある住まいを作り出しました。
玄関に入ってすぐに目に留まるのが、歴史を感じさせる下駄箱。実は、かつての水屋箪笥を再利用して作ったもの。
雰囲気ある意匠の押入れ箪笥は、趣は変えずに新調した客間の壁に組み込み再利用しました。
以前は、家の外にあって不便だった水回りが収められた空間には、おばあちゃんがずっと愛用していた鏡台が置かれました。
ずっと安心して暮らせる住まい
これからも一人暮らしを満喫したいという家主のおばあちゃん。しかし、高齢であることを心配した「匠」は、先の事も考えた作りにしました。
リフォーム前にあった土間から部屋への大きな段差は、玄関の段差を二段にして小さくすることで解消しました。その新しい玄関の脇には、座ったまま靴を履けるベンチと手すりが備えられました。
おばあちゃんの身長に合わせたシステムキッチンは、安全面に配慮してIHヒーターが組み込まれています。
ダイニングの奥に作られた寝室。引き戸を開け放つと、トイレやお風呂といった水回りにつながり、まるでワンルームのよう。動線を短くすることで、冬場の水回りとの温度差を抑え、ヒートショックによる体の不調も抑えられます。
そんな配置にもこだわったトイレやお風呂には、足腰が弱っても楽に立ち上がることが出来るよう、手すりがついたものが採用されました。
より快適に過ごせる住まい
「匠」は、風情を残したリフォームの中にも、数多くのアイデアを盛り込みました。
客間の押し入れ脇に収められたのは、簡単に移動できるキャスター付きのミシン台。折り畳んだ天板を上げれば、アイロン台にもなる大きさです。おばあちゃん愛用のミシンに形を合わせて作られた「匠」からのプレゼント。
キッチンの上には、家全体を明るく照らす吹き抜けの天窓。その天窓には、光を通しながら気密性を高めるポリカーボネートのスライド式建具を取り付けました。この建具は、2階の部屋から掃除もできます。
ダイニングのテーブルは、「匠」オリジナル。解体の時に納戸から見つかった建具を再利用しました。お客さんが来た時は天板を広げて使えます。
おばあちゃん待望の家の中に作られた新しいお風呂場。そのヒノキを使った壁には、仕掛けが施されていました。なんと、壁が引き戸になっていて、裏庭へ通じているではありませんか!「匠」は、町家特有の通り庭の機能を裏庭の物干し場への動線として残したのです。
京都市左京区
株式会社アムザ工務店
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