2010年10月3日放送
孫が泊まれない家
■文久2年(1862年)に建てられた、およそ築150年の物件で、中庭に面した建具が今も障子やガラス戸が1枚といったような、時代劇さながらの生活環境の為、目に入れても痛くないお孫さんが遊びに来ても泊まってくれない
■洗面所は濡縁の途中に増築、トイレも濡縁の一番奥にあり、夜には濡縁に面する真っ暗な中庭を嫌がって、お孫さんが一人でトイレに行くのを怖がる
■お風呂は離れにあり、雑草が生い茂る中庭をかき分けて行かねばならず、雨の日には傘をさして行き来している
■骨組みが老朽化しており、1階の台所の梁は、2階の重みに耐え切れず歪んでいる。いつ崩れ落ちるか不安になるほど危険な状態
■2階の床が、立っていると気持ち悪くなるほど傾いており、壁にはいくつもクラック(亀裂)が走っている
■濡縁に雨が当たらないよう軒が深く、また中庭を挟んで建物が接近している為、部屋の中に陽が差し込まず日中も暗い
時空間のコンダクター
平川 徹
昔の建物だから増築を繰り返していて全体的には広いのだけど、水回りが離れていたり、室内の廊下でつながっていなかったりするので、使いにくくなっている。
それよりも、構造的にかなり危ない状態なので、まずそれを何とかしないといけない。
プランとしては、普段はご夫婦2人の生活なのでコンパクトなスペースで。お孫さんたちが遊びに来たときは、かなりの大人数になるので、スタイルをチェンジして使えるような空間を作りたい。
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赤いカメラをクリックするとビフォーアフターの変化をご覧いただけます
風情を活かした再利用
格子扉の裏口の前に広がるのは、おじいちゃん待望の駐車場。要らなくなった庭石や屋根瓦を埋め込んだ、滑り止めも兼ねたデザインです。
格子で覆われた品格ある外壁に、目を惹く堂々たる表札が。これは、かつて屋根の上にあった鬼瓦を利用したものです。
モダンに生まれ変わった玄関には、桐のタンスを再利用したベンチが。引き出しもそのままに、靴やスリッパを収納できます。以前の下駄箱を半分のサイズにリメイクしたコンパクトな下駄箱も。ベンチの収納があるので、夫婦2人には十分な大きさです。
玄関周りだけではありません。納戸にあったタンスをリメイクして作られたのは、食器棚。戸棚の戸の背板を外し、建具のガラスを入れて再利用しました。
食器棚の向こうの扉から続く水回りには、物置に埋もれていた桐ダンスを加工した洗面台が。天板には2階の梁を使いました。壁の収納は、要らないタンスを加工して再利用。
「匠」は、風合いを持った家具を再利用することで、リフォーム後もこの家の歴史を感じさせてくれたのでした。
明るく開放的になったリビング
天井を高くし、壁を取り払ったことで、開放的に生まれ変わったリビング。もう昼間から電器を点ける必要もありません。
中庭に面した大きな窓も、家の中にいながらにして、のびのびした気分を感じさせてくれます。中庭を挟んで向こうには、2階の梁を解体して作った「匠」オリジナルの「浮き床」が仏間で輝いています。
掘り座卓で寛ぎながら眺めることのできる、丸窓の中にある三角形のアクリルの筒を5つ組み合わせた水槽。丸窓の建具は格子と障子が用意され、その時の気分で簡単に切り替え出来ます。
建具を天板に再利用したテーブルは、普段は床下に収納でき、お孫さん達が遊びに来た時には、2つ並べて大勢で食卓を囲むことが出来ます。床下には暖房も備え、冬も足元はポカポカ。
その便利なテーブルの上にあるのは、お孫さんたちが描いた、おじいちゃん、おばあちゃんの似顔絵の入った、世界にひとつだけのオリジナルのガラス照明。毎日、明かりを灯す度に、東京で暮らす孫の存在を身近に感じることでしょう。
庭園として生まれ変わった中庭
長年、手入れすること無く荒れ放題だった中庭も、「匠」の手によって美しい庭園へと生まれ変わりました。 何年も枯れていた池も蘇り、優雅に泳ぐ金魚の姿は、遊びに来るお孫さんを喜ばせてくれることでしょう。
夜のライトアップは、幻想的な雰囲気を漂わせるだけでなく、真っ暗な中庭を怖がっていたお孫さんを安心させる効果も。
そんな風情ある中庭を、部屋からだけでなく湯船に浸かりながらも楽しむことが出来るよう、浴室には湿気対策も兼ねた小窓が。ブラインドを上げて中庭を臨めば、ちょっとした露天風呂気分が味わえます。
仏間の奥の4畳の納戸には、中庭に直接出入りできる扉が用意されました。これで大きな荷物も簡単に運び入れることができ、重宝することでしょう。
中庭をぐるりと囲んでいた濡縁は、サッシが取り付けられて、完全な屋内に。壁には、お孫さんたちが描いた絵や手紙を飾るギャラリースペースも。おじいちゃん、おばあちゃんがここを歩く度に幸せな気分になれる、そんな廊下になりそうです。
広島市西区
株式会社BST
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