2011年8月14日放送
風呂場が冷蔵庫の家
■仙台にある築54年の木造平屋建て。断熱材が無い時代に建てられている上に、老朽化で隙間風が厳しく、一人暮らしのおばあちゃんは毛布2枚に電気毛布と掛け布団を被って寝ている
■脱衣所が無いため、居間で衣類を脱いだ後、玄関前の3畳間と台所を駆け抜け、風呂場に向かっている
■無用に広い浴室は、壁も床も一面モルタルで覆われており、木製サッシの窓からの隙間風で、まるで冷蔵庫の中にいるような凍えた空間に
■浴室の水道からは水しか出ず、シャワーも無いため、冬は仕方なく台所で髪を洗っている
■土間に置いたレンガの上に乗せただけの浴槽は、高さが75cmもあり、腐って今にも壊れそうな踏み台を使って入っている
■洗濯機置場で給排水が出来ず、ホースを繋ぎあわせて浴室の水道から水をとり、排水を浴室の土間に流している
■玄関の上がり框の位置が高く、足を上げるのがつらい高齢の人には家に入るのが一苦労
■玄関前の3畳間は、位置的に使い道が無く、通路代わりにしかならない
■トイレは十分な広さがあるのに、出入口近くの大きな洗面台のおかげで出入りしづらい
■台所には換気扇が無く、調理した臭いや煙を排気できない。また設置している給湯器が室内型で換気しないままだと危険なため、冬でも窓を開けて使用している
■家庭菜園を楽しんでいる庭に水道が無く、野菜を洗うなどで水が必要なときは、家を挟んで反対側にある裏庭の水道を使っている
杜の住まいの訪問医
安達揚一
78歳という年齢を考えると非常に元気なおばあちゃん。しかし、今後歳を重ねていくと、そうもいかなくなり、今の家だと不安が残る。
大事なのは、間取りの取り方。そこを見直すことで、居心地の良い家になると思う。
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段差を無くした家へのアプローチ
セットバックで道路が近づいたため、安全を考慮し、かつて縁側があった場所に移した玄関。
竹の手摺りと緩やかなスロープの玄関アプローチが導いてくれます。
大きな庇のある玄関ポーチは、雨の日でも安心。戸口も広く、楽に出入りできます。
段差がほとんど無い玄関にはベンチを置き、腰掛けて靴が脱ぎ履きできるようになりました。
家に上がると正面には広いクローゼットが。外出時の上着を掛けておくのに重宝します。
寝室からも出入りできるこのクローゼット、通気も良く、衣類の湿気対策にも有効。お婆ちゃん愛用のタンスも、その脇に収めました。
その天井には、屋根裏収納への梯子が。普段使わない物をここに収納すれば、スペースをより有効活用できます。
のびのびと過ごせる部屋
リフォーム中の仮住まいで洋間が気に入ったというおばあちゃん。
その希望を受けて、かつては部屋が小さく分けられ、使いにくく、窮屈さを感じていた和室を、フローリングの広々としたワンルームに変更。
高性能な断熱材やペアガラスのサッシを採用したこともあり、冬も暖かく、のびのびと暮らせます。
天井も、屋根の勾配に合わせて高く上げ、小屋裏に隠れていた梁を見せた吹き抜けに。
その一角、窓際に置かれていたのは、おばあちゃんが若い頃から長年愛用してきた、足踏みミシン。その昔、洋裁の内職をしていたおばあちゃん。以前の物置代わりの暗い部屋から場所を変え、今度は明るい窓の前で、ご主人との想い出のサザンカを眺めながら、洋裁が楽しめます。
こうして、おばあちゃんが1日の大半を過ごすのに適したリビングが生まれました。
そのリビングから続くキッチンは、娘さんが帰ってきた時には一緒に料理ができる、ゆとりのスペース。収納もたっぷり。もちろん、換気扇もついています。
おばあちゃんの憧れだった対面キッチン。L字型のカウンターの下を収納棚として活用、サイドには跳ね上げ式の折り畳みテーブルも設置しました。おばあちゃん1人の時はもちろん、娘さんが来た時でも作った料理をすぐに運んで食事がとれます。
買い物から帰ってすぐに荷物を置ける便利なキッチンの勝手口は、動線を道路と平行にすることで、出入りの際の安全を確保。プライバシーにも配慮し格子で囲いました。
安全で温かい浴室
動線をすっきりと整理し、キッチンと寝室を結ぶ廊下の片側に水回りを集約。これまで無かった洗面脱衣所もあり、洗濯も楽にできます。
脱衣スペースと引き戸でつながるトイレには、他の部屋からの出入りも楽なように、廊下側にも扉があります。
広めの3枚扉の先は、もう冬の冷蔵庫のような寒さとは無縁のお風呂場。バリアフリーで床から浴槽までの高さも低く、手摺りも付いて安全に、ゆったりと入浴できます。
室内には浴室暖房乾燥機も付いているので、冷え込みが厳しい時の暖房、雨の日の洗濯物干しに、とても便利。
回転するラジオ
大変だった毎日の布団の上げ下ろしから解放するため、おばあちゃん専用のベッドを設置。その枕元には、以前からおばあちゃんが愛用していたラジオ付き目覚まし時計。
この寝室と間仕切りを挟んであるのが畳敷きのスペース。そこから間仕切りの四角く切り取られた部分を押すと、くるりと回転して、ベッドの枕元のラジオ付き目覚まし時計が現れました!
「匠」はおばあちゃんの日課であるラジオ体操が、足に負担の少ない畳敷きの上で出来るようにと、1台のラジオを2箇所で使えるように考えたのでした。
畳敷きのスペースは、娘さんが泊まりに来た時には、寝室として使えるように考えられています。そのために布団などを仕舞える、収納力たっぷりの押し入れも備えました。
悩まされた浴槽を活かす
美しい花壇の景色が広がるバリアフリーのウッドデッキ。部屋と物干し場もバリアフリーでつながり、洗濯物を干すにも楽に。物干し場には屋根があるので、留守中でもちょっとした雨なら安心です。
ウッドデッキの前には、農家の生まれである「匠」が耕し、土壌を改善した、おばあちゃんの趣味の家庭菜園。その脇に設置されたのは、かつて、おばあちゃんが入るのに苦労していた深い浴槽を改造して作った水場。収穫した野菜などが洗えるシンクと雨水を溜めるタンクの2つの役割を持ちました。
雨水は、雨樋からこのタンクに流れこみ、溜まっていきます。溜まった雨水は、蛇口をひねれば、ホースを伝って畑へ。高低差を利用しているので電気も不要。おばあちゃんも水やりが楽になり、益々、野菜作りが楽しくなるはずです。
宮城県仙台市
株式会社 八興開発
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