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2011年12月25日放送

泥まみれの庭

この物件が抱える問題

  • ■0歳から5歳までの園児が集う保育園でおこなわれる泥遊び。撒いた水がいつまでも引くこと無く、あちこちに水溜まりが残ってしまう
  • ■保護者が迎えに来る際には、水びたしの園庭にすのこを敷いて渡ってもらっている。しかし、そのすのこも濡れてしまい、いつ転倒する人がでるかとヒヤヒヤ
  • ■洗い場で子ども達の体の泥を流すと、排水口がすぐに詰まってしまう。また排水口から水が集まる排水枡にも大量の砂が堆積し、排水の機能が働かない
  • ■砂場の砂が風で舞い上がり、夏場に窓を開けていると園舎の中にまで舞い込んでくる
  • ■庭の敷地が駐車場を囲むようにコの字型になっているため、空間が遮断された格好となっており、園児が遊ぶ箇所が偏っている
  • ■シートを使って日陰を作るために、園庭全体に工事で使うパイプを張り巡らせて骨組みとしているが、ボルトがむき出しになっているなど危険な部分も多い
  • ■園舎の裏の土地を買いたしたが、自転車の練習用にと敷いた畳が半年で腐って放置され、今では上手く活用できていないままとなっている
  • 写真:サムネイル
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この問題を抱えた物件に、立ち上がった「匠」とその技

写真:「匠」の顔写真

廃材のスタイリスト 金井良一

園の教育方針として子ども達を自由にさせてあげたいが、危険が潜むなど自分達では管理しにくい園庭になっている。それを管理しやすい危険の無い空間にしてあげれば楽になるかと。

現場検証 問題解決のために必要なリフォームは…?

アスファルトを剥がす

画像:泥まみれの保育園

依頼者である園長先生たっての希望で集まった「匠」とユージさん、そしてその仲間達。まずはリフォームの下準備に、おもちゃ道具などを一箇所に固めておきます。最初は怖がっていた子ども達も、すっかり慣れて運搬を手伝います。

画像:泥まみれの保育園

日陰を作るために設置していた園庭の鉄パイプを全て取り除いた「匠」達。続いて、駐車場のフェンスの撤去作業にはいりました。フェンスが無くなると、園庭も随分広く見えます。

画像:泥まみれの保育園

続いて「匠」は駐車場のアスファルトに等間隔に線を引くように指示。そして、格子状に引かれた線に沿って、コンクリートカッターで切り出していきます。バールを使って軽々と地面から剥がしたアスファルト140枚をトラックに積み込むと、そこには園庭とつながった広々とした空間が出来上がりました。

水はけの悪さを改善する秘密兵器

画像:泥まみれの保育園

次に、園舎の玄関前にある、水溜まりがすぐに出来てしまう通路。そのレンガを剥がすと土があらわに。そこに「匠」が鍬で線を引き、その指示通りにユンボで溝を作っていきます。しかし、途中で掘り進めることができない層が。地山の粘土質の土でコチコチに固まっているのです。これが水はけの悪さの原因のひとつ。

画像:泥まみれの保育園

続いて「匠」達がパイプを用意。このパイプには無数の穴が開いています。それを掘り進めた溝に置いていき全てをつなぎあわせました。総全長32mのパイプが園舎に沿って設置されました。

画像:泥まみれの保育園

このパイプは透水管といって、土の中に溜まった逃げ場の無い水を誘導するもの。これを使って園庭の外側へと排水し、地面の乾燥を促進するのです。園庭に埋め込まれた透水管に塩ビパイプを接続。その水の出口は駐車場との間にある溝へと向けられました。

空き地の有効利用

画像:泥まみれの保育園

次にとりかかったのは、空き地になっていた裏の土地。水を吸い重さを増した腐った畳を皆で取り除き、雑草が生い茂った部分を掘り起こし、砕石とコンクリートで整地。ここに作るのは、新しい駐車場。使い勝手の悪かった以前の駐車場を無くし、こちらを利用することにしたのです。

画像:泥まみれの保育園

「匠」が続いて用意したのは、元の駐車場から剥がしたアスファルトの板と、園舎の前の通路に使われていたレンガブロックの山。それを交互に組み合わせる形で新たな駐車場に並べていきます。そうして出来上がった5台分の駐車スペース。廃材を使ったとは思えない見事な仕上がり。植栽によるアクセントにも皆が感動です。

「匠」オリジナルのアスレチック

画像:泥まみれの保育園

再び園庭に戻って、次の作業。今度は、ジャングルジムの移動。土に埋まった部分を掘り起こし、持ち上げることに。力が自慢のチームですが、さすがにこの重さには一苦労。
やっとの思いで移動させると、「匠」の指示でジャングルジムを2つに分解。果たして、この利用方法とは…?

画像:泥まみれの保育園

分解した理由を告げぬまま「匠」は皆を連れてとある場所へ。そこにあった「匠」のお目当てとは、園長の知人からの提供で頂けることになった背丈8mのケヤキの木。これを保育園に移植するため、ユンボと人力で根元を掘り起こします。その間に「匠」は木の上に軽々と登って剪定作業。還暦を迎えた「匠」の行動力に、皆もビックリです。

画像:泥まみれの保育園

掘り出されたケヤキの木は、かつて駐車場だったスペースへと運び込まれました。実は、このケヤキがやがて枝を広げて出来る木陰が「匠」の目的。
そして、あの分割したジャングルジムを、保育園のシンボルにもなるこの木を囲むように設置したのです。これでジャングルジムに登りながら、木のぼりも楽しめるようになりました。

画像:泥まみれの保育園

続いて運ばれてきた防腐処理が施された大きな丸太。これをジャングルジムに沿わすように立てていきます。そしてジャングルジムの上部を塞ぐように木の板を張り巡らせると…ツリーハウスが完成!
子ども達に人気の無かった雲梯(うんてい)もそばに移動し、丸太を使った階段や平均台を通じてジャングルジムへと動線をつなげます。

画像:泥まみれの保育園

次々とジャングルジムを拡張していく「匠」。丸太を組み合わせた梯子を作ります。もちろん留め具の余分なところはカットして柔らかい素材でカバー。丸太の角も面取りをして、危険が無いよう子ども達に配慮。
更に、ジャングルジムから横へ突き出すように3m以上ある丸太を設置。そこにぶら下げられたものは…そう、子ども達待望のブランコ!

画像:泥まみれの保育園

さらに、トラックの荷台カバーやテントに使う頑丈なシートを台形に切り取り、縁取りを車のシートベルトとロープで補強したものを、「匠」とユージさんが現場に持ち帰ってきました。そしてジャングルジムに立てかける形で2本の丸太を設置。その間を渡すように先ほどのシートが取り付けられました。出来上がったのは、滑り心地が柔らかい「匠」特製滑り台!ユージさん達だけでなく「匠」まで試しに滑って大はしゃぎです。

廃タイヤを活かす

画像:泥まみれの保育園

「匠」がユージさん達と共に向かったのは、タイヤ専門の再生工場。そこには1日に約1万本の廃タイヤが集まってきます。大型トラックから降ろされる廃タイヤを見て驚くユージさん達。トラック1台でも驚きの量なのに、これが1日に20台分運ばれてくると聞いて、更に驚くことに。

画像:泥まみれの保育園

集まった廃タイヤが次々に粉砕機で粉々になっていく様を見て、怖がるユージさん達。破砕されたタイヤがベルトコンベアで運ばれる先の集積場所で、そのタイヤの破片を見てみると…中の針金などが入ったままで非常に危険です。子ども達の触る物には使えそうにありませんが…

画像:泥まみれの保育園

一方、保育園では作業の続き。園庭にある六角登り棒の周囲を囲うように、土をひょうたん型に盛ります。その一部は15cmほどの深さの窪みを作り、ビニールシートが敷かれました。そして全体をモルタルで覆っていきます。

画像:泥まみれの保育園

ここで運ばれてきたのが、あの工場で見た廃タイヤの粉。しかし、工場で見た時より更に細かくなっていました。針金などの金属を含んでいるタイヤ片を更に細かく砕き、強力な磁石で金属を取り除いて、1mm〜3mmの極上のゴムチップとして再生されたのでした。

画像:泥まみれの保育園

ゴムチップに特殊な接着剤を混ぜ、モルタルの丘に直接塗りつけていきます。そしてカラフルに着色して出来上がったのは、弾力性を持つゴムチップで覆われた、安全なプール。秋には落ち葉拾いの遊び場など、季節に合わせた使い方も。
更に、六角登り棒の支柱の一部を塩ビ管に交換。水道を引きこんで、シャワーとしての役割を持たせました。

園児たちの幸せを願った「匠」からのアイデア

アイデア盛り沢山のジャングルジム
ジャングルジムの上まで伸びたカラフルに彩られた塩ビ管。それは、ツリーデッキと下にいる子どもの間で会話ができるオモチャの電話。

ツリーハウスの下側も、もちろん遊びのスペース。ゴムの格子をくぐり、中に入れば、いざ!迷路の探検へ!!

木の板がくるくると回る回転扉。そこにはユージさんが描いた葉っぱの絵と、リフォーム前に「アイスクリーム屋さんがほしい」と言っていた子どものリクエストに応えたアイスクリームの絵が。
画像: 匠のアイデア
問題点を消した工夫の数々
雨の日や泥遊びの後には、必ず水溜まりに悩まされ、都度すのこを敷いていた園舎の玄関への通路。そこは、水はけの良い、廃タイヤを再生したゴムチップで舗装されました。滑りにくく、万が一転んでも弾力性があるので安心です。

あの、使う度に砂で排水口が詰まり、使い勝手がとても悪かった足洗い場。形は変えず、周囲に芝生とゴムチップ舗装を施すことで、砂を入りにくくしています。

重い蓋を開け、溜まった砂を掻き出していた排水枡。蓋を木の板に変え、開け閉めが楽になりました。中には砂が溜まっても掃除しやすいように、持ち手付きのザルがセットされています。

園庭から裏の土地へと抜ける通り道は、エアコンの室外機やプロパンガスなど危険な物を排除し、ゴムチップ舗装で安全性を高めました。そこには数字が描かれ、数を覚えながら歩くことができる工夫が。
画像: 匠のアイデア
無駄なく再利用を
敷地の周囲を囲むフェンスは、以前の物を再利用しています。そこに貼られた、余った丸太を輪切りにして作った飾りには、子ども達の色とりどりの絵が描かれています。ここで育った子ども達の思い出が毎年増えていくことでしょう。

以前、園舎の玄関前で使っていたすのこも、新たに作った倉庫の扉として再利用されました。

かつて園舎の壁ぎわに置かれていた倉庫は、場所もそのままに再利用。子ども達に喜んでもらおうと、ユージさんがカラフルな動物達の絵を描き、無機質だった見た目が賑やかに。
画像: 匠のアイデア
新たな環境で子ども達の教育を手助け
倉庫の横にあった雑然としたスペースには、園舎の裏に流れる川をモチーフに、小さな水辺の景色が作られました。金魚や亀を眺めながら、自然を身近に感じてほしいという「匠」の願いが込められています。

砂場で遊んだ後に子ども達が自分で手を洗えるように新たに作られた手洗い場。水道の水が、穴を開けた雨樋から流れだし、太い塩ビ管を縦割りにした受けを伝って排水されていきます。排水は、もちろん排水口へと流し込まれるので、辺りが水浸しになる心配はありません。

幼児クラスの赤ちゃん達の部屋の前には、ハイハイしながらでも楽しめる、クッション性の高い芝を貼った広々としたスペースを用意。そこに作られた穴の開いた2つの小さな丘は、中で遊ぶこともできる芝生のかまくら。雪が積もれば、雪のかまくらになります。

駐車スペースを新たにとった裏の土地には、子ども達が自転車の運転の練習ができるサイクリングロードも作られました。一周36m、道幅も十分にとられたこの場所では、ユージさん手書きのセンターラインや「止まれ」のサインで、交通ルールも学べます。
画像: 匠のアイデア
今回お手伝いいただいたユージさんのお友達の皆さん
写真:ユージさんのお友達の皆さん
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