ホールや廊下に囲まれ、奥まった場所にある学食。 メインの出入口のすぐ脇にある小さな売店が、入り口を半分塞いだため、さらに光が届かなくなっています。
秋口からは、寒さが生徒たちを悩ませます。
日当たりの悪さに加え、出入り口の扉から吹き込む風が、その原因。
扉が厨房の大型換気扇の給気口代わりになっているため、食堂内には年中問わず風が吹き込みます。
冬はまるで屋外のような寒さになり、膝掛けやマフラー、コートなどの防寒具が手放せません。
栄養とボリュームがたっぷりの安くておいしい料理は、食べ盛りの生徒たちに大好評にも関わらず、300席あるテーブルはガラガラ。
生徒たちは、暗くて寒い食堂を避け、わざわざ料理を教室まで運んで食べているのです。
幼稚園・小学校の給食のための配膳車はホールに並べられた状況のため、誰でも触れてしまう状況。
消毒も毎日し直しているため、調理師さんにも負担がかかっています。
リフォームが始まった夏休み中も、生徒が登校し、部活動に励んでいます。
校内放送の呼びかけに、運動部の生徒60人が練習を中断し、力を合わせ長テーブルおよそ50台と丸椅子およそ300脚を運び出します。
食堂の床を再利用するため、モップやブラシを手に学食に集まったのはソフトボール部、バレーボール部、バスケットボール部の総勢30人。
13年前に張り替えた木目調のビニールタイル。磨けば、まだまだ使えます。
80坪の広い学食の床が、生徒たちのお蔭で30分できれいになりました。
きれいに磨いた床がリフォーム工事中に傷ついたり、汚れたりしないよう養生するためのベニヤ板を床全体に隙間なく敷き詰め、固定していきます。
学食の床全面が、約150枚の養生の板で覆われました。
生徒たちの期待を受け、いよいよ学食リフォームが本格的にスタートします。
券売機が置かれていた東ホール側には、学食からはみ出す形で開放的なデッキスペースを設置。
光と動線を塞いでいた、扉の脇の売店を取り払うことで、外からの光も届く、明るい空間になりました。
売店は、これまで使われていなかった東ホールの一番奥のスペースへ移動。
もう、光も動線も塞ぐことはありません。
以前は、窮屈でごった返していた店内も、4畳分広くなり、買い物がスムーズに出来るようになりました。
暗くて寒くて殺風景だった学食は、天井を上げて開放的な雰囲気に。見違えるように明るくなり、緑を取り入れたカフェテラスのようです。
楽しく食事できるよう、テーブルの形や配置も一新しました。
日陰棚に見立てた照明ボックスにはLEDライトを仕込み消費電力を5分の1に。
天井の雲をかたどった反射板で、明るさを増幅します。
横5メートル・縦3メートルの太陽をデザインした大きなモザイクガラスがさらに学食を明るくしています。
まるでそこに太陽があるかのように空間を照らす新しい学食のシンボルです。
匠からの依頼を受け、美術部の生徒たちが一致団結。
この壁画制作に夏休みのほとんどを費やした大作です。
事務机のような長テーブルと簡素な丸イスは、新品同様に生まれ変わりました。
生徒たちの手を借り分解された丸椅子は、低反発クッションとカラフルで温かみのある布生地で見た目も座り心地もグレードアップ。
テーブルも脚を塗装し、天板を張り替えて、以前の半分を再利用。
さらに、それだけでは味気ないと構造用合板で作った、丸や楕円のテーブルも用意。
椅子は、倉庫に眠っていたものを塗装して再利用しました。
三次元の冒険家は、型にはまることなく学食を立体的にデザイン。
あえて段差を付けたデッキコーナーが空間に変化を生み並んで腰掛けられるベンチにもなります。
学食内を見渡せる小高い丘のようなスペースで、お昼休みに、ちょっとした演奏会も開けそうです。
別のコーナーには楕円形に区切られたスペースが作られました。
これからは、生徒たちが思い思いの場所で食事やおしゃべりを楽しみ、寛ぎの時間を過ごせます。
円形の一部は、西ホールにはみ出すようにデザインされ匠の柔軟な遊び心が感じられる空間に。
その楕円形は、交差する中央ホール側にもはみ出し段差に腰掛けることもできます。
生徒たちが楽しく、気持ちよく過ごせる学食をめざす匠。
学内にオープンカフェが開店したかのような屋外のデッキスペースも新たに設置。隣の杉の木を囲むベンチも作られました。
デッキスペースは、屋内の西ホールの一角まで広がり天気や気分によって、内と外を使い分けられます。
日差しの強い日や雨の日はカフェさながら、テントを引き出します。
日焼けを気にする女性たちへの、匠の心遣い。
以前は、売店も学食の券売機も東ホールにあり混雑していましたが、売店へ向かう生徒と分散するため券売機を西ホールへ移動。
券売機の横に設置されたメニューのスライドを映し出すモニターで、並んでいる間にメニューを選ぶことができます。
食券を買い、学食へ。
出入口付近には、開放感を損なわない程度にパーテーションを立てました。
パーテーションは、素材を合板で統一することでコストを抑えました。
かつては、出入口、給湯器前、食器返却口など動線と行列が交錯してスムーズに動けませんでしたが、動線の床の色を変えるなど、混雑解消のための工夫が凝らされています。
食器返却口、給湯器、手洗い場、出入口が並んでいて、混雑がひどかった場所は、その一角が格子で仕切られました。
短大生や幼稚園児の迎えに来た保護者がメイク直しに使える、化粧コーナーができました。
もちろん、中高生たちが手洗いや歯磨きに使う事も出来ます。
配膳カウンターは、間口はそのままに壁をオレンジ色、天板を木目調に一新し温かみのある印象に。
カウンターの上には、メニューごとに並ぶ場所を示す案内板が。
木の温もりが伝わる、可愛らしくて分かり易いデザインのメニューアイコンになりました。
学食への動線を塞がない一角に新たに専用のカート置き場が誕生。
20台の給食カートをすべて収納できます。
扉には鍵も掛けられ、この中にカートを入れておけば衛生面も安心。
ホールを通らず、直接、学食内に出入りできるようになります。
カート置き場を囲んでいるのは、大量の小さな丸太。
ログハウスのような佇まいですがよく見ると、そのひとつひとつに似顔絵が描かれています。
実は、カート置き場に並んでいたのは合板を作る過程で出来る直径4センチの芯材。
中学生と高校生が放課後の時間などを利用してその芯材を2センチの厚みに切断しました。
その数、およそ2000個。
それを、幼稚園から短大まで、大阪信愛女学院に通う生徒全員に配り切断面に自分の顔を描いてもらったのです。
教職員の皆さんも全員参加し、みんなで作る、学食のリフォーム記念です。
床がデコボコで歩きにくく、掃除も大変だった厨房は、モルタルで平らに補修。
あえて表面をザラザラにし、滑りにくい仕上げにしました。
もともと空調が無かった厨房。
夏場は調理の熱もあって調理師さんは猛烈な暑さと闘っていました。
そこで、風の向きを自在に変えられるダクトエアコンを設置。涼しい風をピンポイントで届けられるので暑い日の調理も快適です。
学食の寒さの原因だった閉じない扉も、厨房の給気を整えたことでしっかり閉まるようになりました。
学食の中央出入口の前、階段の脇にあるかつて掃除道具を仕舞う倉庫だった場所が、厨房で作る焼きたてパンを販売する明るい雰囲気のパンコーナーに生まれ変わりました。
ホールに漂う甘い香りが食欲をそそります。
ベーグルは、食物部が夏休み中にリフォーム中の匠や職人さんの差し入れを作った際にうまれた新メニュー。
職人さんにも大好評でした。