思い出の湖岸にて

もう20年以上も前の話になる。
小学校の3年生くらいだったように覚えている。
その頃、母の友人が近江八幡の市街地に住んでいて、夏のある日、一緒に琵琶湖へ海水浴へ行くことになった。
大阪から国鉄に乗り、近江八幡の駅からかなり長い距離をバスに揺られた記憶がある。
当時、海水浴と言えば、海でしか泳いだことのなかった私は、ほとんど波のない海岸と、しょっぱくない水に、正直なじめなかったような気がする。
行く前に、誰から聞いたのか、真水は浮かびにくいということと、少し沖に行くだけで、急に水が冷たくなるからと言われ、なんとなく気持ちが引き締まっていたことも影響していたのかもしれない。

今日、記憶の中では、ほとんどかすれてしまったこの湖岸に立ち、日の暮れるのを眺めていた。
きっとあの頃と何も変わっていないだろうこの目の前の光景を見ながら、なんとかしてあの日の思い出を頭の中から引っ張り出そうとしていた。
でも、まるでこのかすかな光のように、それは見えそうで見えないまま、私の中のどこかに沈んで行ってしまったのだった。。

 
琵琶湖
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Photo&Essay:Shuji Enmando