峠道を登り詰めると、石像たちが静かに出迎えてくれた。 冷たい雨に濡れた石像は、皆無言なのに、それぞれ口の中で呟いているのか、今にも温かい言葉を掛けてくれるようで、旅人の張り詰めていた気持ちもついほころぶ。 街の明かりが次第に少なくなり、人の声も聞こえなくなるにつれて、それまで聞こえなかったのか、聴こうとしなかったのか、かすかな気配にも驚き、そして喜びを感じるようになりつつあるようだった。