峠の石像たち

 峠道を登り詰めると、石像たちが静かに出迎えてくれた。
 冷たい雨に濡れた石像は、皆無言なのに、それぞれ口の中で呟いているのか、今にも温かい言葉を掛けてくれるようで、旅人の張り詰めていた気持ちもついほころぶ。
 街の明かりが次第に少なくなり、人の声も聞こえなくなるにつれて、それまで聞こえなかったのか、聴こうとしなかったのか、かすかな気配にも驚き、そして喜びを感じるようになりつつあるようだった。

 
熊野街道
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Photo&Essay:Shuji Enmando