鹿ケ瀬峠近く

 その昔、この先の辻にも人家があり、そこに生活があった。
 街道の両側に石垣が組まれ、猫の額ほどの平地が突如として現れた。
 今、そこは竹に覆われ、初夏の日差しが眩しく降り注いでいる。
道はいよいよ下りとなろういうのに、何かそこから立ち去りにくくて、ついつい振りかえってしまうのはどうしてだろうか。

 
熊野街道
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Photo:Shuji Enmando