雨の今日、茶屋の軒先に置かれた玉ねぎたち。 掘ってきたばかりなのだろうか、その表面には畑の土が少し残り、瑞々しさも感じられる。 冷たい雨のこんな日、旅人の姿はなく、この谷間の山麓は静寂に包まれていた。 その昔、この軒先を日々多くの旅人たちが行き来し、中には駕篭屋や牛馬も通ったことだろう。今でいう国道であったこの狭い道は、さぞかし騒がしかったに違いない。 静かな時を刻むこの風景を前に、もうそれは想像することが出来ない。