深い森でひときわ目についたのが、この朝露に濡れた葉だった。 確かにどこででも目にする光景かもしれない。 自分の家の庭先でも少し寒い朝なら、きっともっと鮮やかな光景があると思う。 しかし、大切なことは、この深い熊野の森を旅してきて、気づくこのささやかな輝きの美しさだった。 恐らくその懐の深い森のある一筋の道を歩んできたのだろうが、その深さゆえに自然の美しさというものに、あまり気づかなかったのか、気づけなかったのかもしれない。 だから深い山のちょっとした空間で、この光景を目にしたとき、心がキュンとしてしまったのだ。