スタッフブログ

観劇記

■天皇ご夫妻が太平洋戦争最大の激戦地のひとつ、ペリリュー島を訪問されたことが、大きな、そして感銘深いニュースになっています■この報道から何故だか思い出してしまうのが、先日シアターBRAVA!で鑑賞したNODA・MAP第19回公演『エッグ』です■改装中の劇場で見つかった、故・寺山修司の未発表戯曲に描かれたエッグという架空のスポーツ。エッグの背後に隠された恐怖、戦いの後に民衆を襲う悲惨・・・■僕と同世代の天才・野田秀樹さんが抱き続けてきたであろう、戦争やナショナリズムへの思い、寺山修司を始めとした日本の小劇場運動の先駆者へのリスペクト、彼ら"アングラ"世代がしばしば作品の舞台としてきた『満州』の野田流の描き直し・・・。舞台から溢れ出る全てに圧倒されました■特に、最近の日本メディアのスポーツの取り扱いと、それが人々に与える影響・・・端的に云えば、『日本選手や日本チームの成績に対する過剰な拘り』・・・に違和感を抱いている僕としては、『スポーツと○○』、みたいなことについての野田さんの冷徹な描写が痛快極まりなかったのです。もう、演劇作品として欠点が見当たらない。強いて、強いて挙げるならば、キャストが豪華すぎて目移りがすることぐらい。妻夫木聡深津絵里仲村トオル秋山奈津子大倉孝二藤井隆野田秀樹橋爪功・・・全員が主役みたいで。まあ、明らかに言いがかりです■しかし観劇後、困った問題が生じました。次に何を観るか、です。野田さんの作品はいつも、エンターテインメントであり前衛、悲劇であり喜劇です。特に今作は全ての点で完成度が高い。余程何か特殊な方向に振り切った劇でないと、単に「『エッグ』に比べたら・・・」というだけの感想に終わりそうで・・・■というわけで、手持ちのチラシ束を幾度となくめくり、関係者の情報も参考に一人検討会議を開きました。その結果、次の観劇作品候補として選定されたのが、仏団観音びらき第9回公演『蓮池温泉 愛の秘宝館』■劇団名は何となく聞き覚えがありましたが、過去の接触経験なし。今回もチラシは目にしていたのですが、そのデザインが、≪透け透けパンツのお尻を突き出した女性の後ろ姿と、それを見上げる天狗の面をかぶった裸の男たち≫という強烈な写真で、「えっと...ま、これはいいか」と見切っていたのです■ところが、この劇が滅法面白い!との複数の情報が。しかも5年ぶりの公演というのに何と前売り券が早々に完売、当日立ち見券がわずかに出る程度とのことなんです。そうなると急にどうしても観たくなるのが人情で・・・劇団のHPや主宰者のブログを何十回もチェックするうち、好評につき急きょ客席を増席した、との情報をついにゲット!休日の朝から外国人観光客でごった返す大阪・なんばのTORIIホールまで、当日券目当てにいそいそと出かけたのです■結論を申しますと、『これ観てよかったーー!!』。チラシの印象に違わず「ド」のつく下ネタ演劇なのですが、ギャグのセンス、俳優陣のキレ、いずれも申し分ない。その上、劇団員の実体験に基づいて、社会や家族が抱える問題にも鋭く斬り込んでいます。中でも特筆すべきは、昨年世間を騒がせたSTAP細胞の件。あの騒動の中心であった女性研究者は、これまでテレビのお笑い番組などで幾度となくパロディの題材になってきましたが、僕の見てきた限り、その中でダントツ1位の設定と出来栄えでした。しかも全体のストーリーの重要なキーになっていて、「今さら感」が一切ない■いやはや期待以上の振り切りぶりで、中年女性を中心に大入りの客席は終始爆笑、しかも終幕には涙を誘うような切ない展開もあって、でも根本は『お下劣上等』で・・・■いやー、BRAVAからTORII、さすがアルファベット5文字同士だけあって、この劇場巡礼は個人的に大正解でした(艦長)

前の記事

あさって初日

2015年04月07日火曜日
前の記事 前の記事
次の記事

ご報告が遅くなりましたが

2015年04月16日木曜日
各ページに記載している内容は、掲載時点のものです。消費税率移行に伴う価格変更等についてご留意下さい。
バックナンバー
前の月 2015年04月 次の月
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30