「匠」が訪れたのは、市の有形文化財にも指定されている由緒ある神社。その母屋で「匠」を出迎えたのは、狩野英孝さん。扉を開けて「匠」を見るなり高いテンションで挨拶。深々と頭を下げながら握手をし終えると、すぐに家の中へと案内してくれました。
神主を務めるお父さんと、家事を担うお母さんの紹介も済むと、そのままご家族と一緒に母屋の中を検証してまわる「匠」。しかし家は、広い庭に囲まれた12部屋もある豪邸で、「匠」の目には問題点があるように見えませんでした。
そんな「匠」に、狩野さんは納戸の奥にある押入れが問題だと言います。言われるまま「匠」が押入れの上を覗くと…なんと、天井にぽっかり穴が空いていました。それは、物置になっている天井裏に続く穴。そこに仕舞われた食器や鍋を取り出す度に、お母さんは、椅子→押入れの中板→押入れの中の椅子→布団と、階段代わりにそれらを踏んでいきながら天井裏によじ登っていたのです。
「これはなんとかしなければいけない。」
そう思った「匠」は、すぐに作業に取り掛かれば、1日で終わりますと宣言。その言葉に驚きつつも、是非お願いしますと、家族はリフォームを決意。しかし、仕事でその場を一旦離れなければならない狩野英孝さんは、「匠」の手を握り、またも深々と頭を下げて全てを託していくのでした。
この日は日曜日だったのですが、馴染みの大工さんにすぐに来てもらえることになりました。突然呼び出されて驚く大工さん達ですが、「匠」の指示をもらうと、あっという間に押入れの古い木材を取り外し、床板から全て新しく作り直しました。
庭では、新しく天井裏への道になる階段が準備されていました。「匠」も手伝いながら、どんどん組み立てていきます。階段として形が出来上がる頃には日も暮れ始めていました。そして、仕事を終えた狩野英孝さんも帰ってきて…
帰宅した狩野さんは、たった1日で姿を変えた、押入れを見てびっくり。そんな驚きから覚めないうちに、「匠」と一緒に出来上がった階段の設置を手伝うことに。しかし、家に運び入れる階段は何故か2つ…
踏み板の位置がちょうど入れ違いになった2つの階段が、並べて設置されました。設計ミス?と思った狩野さんに「匠」が笑いながら説明してくれました。これは、階段の角度が急で、踏み板の間隔を適度な高さで作れない場合の技法。互い違いになった踏み板を交互に踏むことで、足を高く上げなくても、楽に上がれるのです。
出来上がった階段を見たご両親も、最初はびっくり。狩野英孝さんと同じように疑問に思ったようですが、実際に上ってみて、その楽な加減に大喜び。今度は、家族全員で深々と「匠」に頭を下げ、感謝の気持ちを伝えるのでした。