2010年1月24日放送
転げ落ちる家
■脳梗塞の後遺症のリハビリ中であるお母さんを迎え入れるには過酷な家の立地
■道路からの高さ5m・傾斜角45度の長くて急な鉄製の外階段を下りなければ、玄関に辿り着けない
■外階段は、新聞配達員が足を滑らせて転げ落ちたことがあるほどで、踏み板の幅が20cmと狭い
■介護が必要なお母さんにとって、窮屈なトイレや風呂場も問題
■1階のリビングの窓からは、崖の斜面を固めたコンクリートの擁壁(ようへき)しか見えず、光も差し込まない
■家の中の階段には手摺りが無く、寝室である2階は、お母さんが自力で辿り着くことは出来ない
自然素材の伝道師
瀬野和広
リハビリ中のお母さんの事情を鑑みるまでもなく、スムーズに家の中へアプローチできる動線の確保と、間取りの仕方が大きなテーマ。
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2階の玄関への新しいアプローチ
危険な外階段を下りて玄関に向かっていた動線を完全に排除するため、玄関を2階に移動した「匠」。道路に面した駐車場から玄関まで、車椅子に乗って辿り着けるように、外階段に覆い被せるような形で折り返しのスロープを設置しました。
180cmあった道路から2階の床までの高低差を、床高を30cm上げて縮め、残りの150cmをスロープで解消。スロープに必要な長さは、勾配に緩急をつけることで短くし、敷地内に収めました。
元の階段も残して、入り口に近い動線も確保。
引き戸を開けると、優しいバリアフリーの空間が広がります。玄関には、お母さんが使いやすい高さに合わせた手すりを取り付けました。
横には、車椅子を畳んで入れておける専用スペースが。その上には、屈まなくても取り出せる靴箱も。お母さんも楽に取り出せます。
お母さんに楽しんでもらえるように
バリアフリーと動きやすさを計算した2階。
壁の中に仕舞える手摺りを伝っていくと、そこは4畳分の広さを持つウッドデッキ。お母さんも無理せず外に出ることができ、日向ぼっこや花いじりが楽しめます。また、中央にはテーブルが備え付けられており、テーブル自体が手すりの機能も兼ねています。
お母さんのベッドの足もとに備え付けたクローゼット。取り出しやすいようにハンガーラックを低い位置に設置。ここでは、床高を30cm上げたことで生まれた空間を利用し、床を掘り込んで、丈の長い上着もかけることができるようにしています。
その横には、テレビとビデオデッキが。リフォーム前、押し入れに眠っていた、お母さんお気に入りの韓流ドラマのビデオも、すぐに手が届く所に。
浴室やトイレも、手摺りを付け、広々とした空間を確保したことで、お母さんが不自由なく利用できるようになりました。
スペースも活かせる多目的テーブル
取っ手の付いたダイニングテーブルは、足にキャスターが付いているため、好きな場所に移動させ、違った役割を持たせることができます。
例えば、キッチンの横に持っていって作業台に。
また、ベッドサイドに移動させて、天板を開けば、お母さんがベッドに座ったままで使えるドレッサーにもなります。
ダイニングテーブルとして使っているときに、目に飛び込んでくるのが壁の大きな世界地図。これは、海外旅行が大好きなお母さんへの「匠」からの心配り。思い出の写真も添えてあります。
実は、この壁にも機能的な秘密が。扉で隠された留め具を外して壁を倒すと…なんということでしょう!ダイニングテーブルとつないで、4人がけの広い食卓に早変わり!これで娘夫婦が遊びに来ても、同じ食卓を囲めます。
家族にとっても使いやすい家に
介護をするお父さんや、遊びに来る娘さんやお孫さんにとっても快適な家になりました。
これからは、お父さんが主役となる台所。落ち着いた木目調のシステムキッチンは、身長が180cm近くある背の高いお父さんでも腰を屈める必要が無い高さに。
以前は陽の光が入らず暗かった1階は、階段の吹き抜けを通して、2階から光がこぼれ落ちてくる、明るい空間になりました。実はこの吹き抜け、明かり取りの役目だけでなく、1階にいても2階のお母さんの声が届くようにするためのものでもあります。
同じ1階にあった台所は、建具で間仕切られた、落ち着いた風情の客間に。お風呂や洗面所だった所は、布団が何組も入る大きな押し入れとなり、娘家族が泊りがけで遊びに来ても平気です。
神奈川県川崎市
光正工務店
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