2011年7月3日放送
雨に濡れながら冷蔵庫を開ける家
■33年前、当初7坪だった家に増築をしたが、それでも合わせて10坪少々しかなく狭い
■4年前に亡くなったおばあちゃんが、後年認知症を患っていたときに、冷蔵庫を家の中に置いておくことができなくなり、それ以来10年も外に出したままで、今となっては家財道具が増えて中に戻せない
■冷蔵庫を屋外の裏庭部分に置いているので、食事の支度などで使い勝手が悪く非常に不便。雨の日は濡れながら食材の出し入れをしなければならない
■その裏庭にある、洗濯機の傍から2階のベランダへと繋がる鉄階段は錆びて腐食が進んでおり危険なため、屋内の階段を使って遠回りして洗濯物を干している
■トイレが裏庭に面した場所にあり、雨の日や冬場など行きづらい
■浴室の扉が洗面台に当たって半分ほどしか開かない
■脱衣所の床やお風呂の窓枠が、老朽化が進んで腐っている
■2階へと続く階段は55度の急傾斜で、常に転落する危険がつきまとう
■立っていればすぐわかるほど2階の床が大きく傾いており、躯体そのものが歪んでいる可能性もある
ひだまりのシンフォニスト
福田浩明
2階の床の傾きやお風呂場の柱の腐食具合から見て構造的な補強は必要。キッチンと冷蔵庫などの家事動線を短く使いやすくして、問題点を解消していかなければならないと感じた。
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赤いカメラをクリックするとビフォーアフターの変化をご覧いただけます
小さな長屋の可能性を最大限に
かつて小さな部屋が3つ繋がっていた1階は、お琴教室と住居を兼用したワンルームへ変貌しました。裏庭のあった東側の大きな窓から光が降りそそぐ、開放的で気持ちの良い空間です。
その問題だらけだった裏庭は、四季の移ろいや風情が楽しめる美しい箱庭にその装いを変えました、山のもみじや川砂利を配して京都・嵐山をイメージした風景をそこに再現。さらに、雪見障子の位置を代えることで、家の中からは、目線の高さを変えて違った景色を楽しむこともできます。
箱庭を臨む部屋の奥には、お琴教室の生徒さんなど、大勢の人が集るときのために、中央の畳の下には大人8人が余裕で座れる掘座卓が収納されています。
壁に造りつけられた、お琴置き場と食器棚。その隣には、待望の冷蔵庫が置かれ、さらに新たなシステムキッチンも。
大人4人がゆったりと座れるサイズの「匠」オリジナルのダイニングテーブルは、近所に住む娘さんやお孫さんが来たときには、壁際におかれたベンチを広げ、机を引き出すことで、6人で囲めるサイズに広げることができます。
お琴教室のための家づくり
親戚の家を間借りしてお琴の教室を開いていたお母さんの願いは、リフォームをきっかけに自宅で教室を開くこと。その願いを叶えるために「匠」は、琴の音に配慮しました。
隣家へ音が伝わるのを防ぐために、壁の中に発泡ウレタンを吹き付けました。また、お琴教室となる1階のリビングは、天井・壁・床を遮音シートで完全に包み、遮音性を高めています。
そのリビングには、音響効果まで考えデザインされた吊り戸棚が設置され、教室を開くために必要な道具が全て中に収まりました。
この吊戸棚を床から25センチ浮かせて設置することにより、狭い空間でもたくさんのお琴が置けるスペースを確保。これによりたくさんの生徒さんに教えることを可能としています。
お琴教室を開くときには、簾のロールスクリーンを下ろしてキッチンを隠すことができます。
入口には、普段は横の壁に隠しておくことができる、厚さ4センチもある防音扉が設置されました。
安全性と機能性にとんだ間仕切り
かつて仕切りがなく、全くプライバシーが保てていなかった2階は、部屋が分けられ、奥に新たに夫婦の寝室が設けられました。
その寝室の中央には、ご夫婦の就寝時間の違いによる気遣いを解消するために、紅葉と若竹の柄が美しい3枚のパネルで構成された間仕切りが用意されました。
ご夫婦の、「襖のような完全に遮断してしまう間仕切りではないものを」との希望を叶えるため、「匠」は、独創的なアイデアで簡単に取り外しができる間仕切りを考案しました。
それは、鴨居とパネルを接合するパーツに秘密がありました。強いマグネットで鴨居に張り付き、弱いマグネットがぶら下がるパネルを支えることで、万が一ぶつかっても、簡単にパネルだけが外れて、間仕切りが割れたりすることがありません。
さらに鴨居側に残った接合パーツが紐でパネルを支えるので、倒れかかってきて怪我をすることもないのです。
また、間仕切りを使いたくないときは、簡単に取り外せ、そのまま部屋の引き戸の内側や壁に収納することができるのです。
十分な収納の確保
ご夫婦の寝室の畳ベッドは、下が全て収納スペースとなっています。家具を設置しなくても済むように、壁には吊戸棚も設置されました。
更に、奥に掛けてあるハシゴを移動させて登ると…そこには屋根裏のデッドスペースを利用した大容量ロフトが!
そんなご夫婦の寝室の横には、雅な演出が施された空間が広がります。その壁の扉を開けると、お母さんがお琴の先生という仕事柄、とても大切にしている着物や小物がたくさん収納できる和ダンスが設けられていました。
向かいにある収納の扉を利用すれば、その一角には着物の着付けができるスペースが生まれます。これで一層着物を着る機会が増えることでしょう。
さらにその奥には、洋服のハンガーラックと鞄などの小物類が整理できる棚が収まったクローゼットを完備。「匠」は狭小住宅が抱える収納の悩みをすっきり解決しました。
暮らしやすく使いやすく
1階のリビングの入り口手前の扉を開けると、そこには新たに設置された水回りが。裏庭で雨ざらしだった洗濯機も脱衣スペースに置かれたことで、より便利になりました。
窓枠が外れかかってボロボロだったお風呂も、清潔なユニットバスに一新。
かつては裏庭の隣にあったトイレは、廊下を挟んで水回りの向かい側に移動。トイレに行く苦労がかなり軽減されることでしょう。
急傾斜で転落の危険があった階段は、勾配を緩やかにし、踏み板を広くすることで、上り下りしやすくなりました。
階段の壁にはお母さんが大切にしてきた帯が掛け軸として飾られました。
全く使われる事のなかったベランダは、高い格子で覆われた新しいウッドデッキに生まれ変わったことで、長男の寝室を明るく開放感溢れる空間にしています。その格子の内側には、もちろん物干しも完備しています。
奈良県生駒郡
(株)山本建築
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