2013年7月7日放送
隣家で食事する家
■生活に必要な水回りがすべて離れに集約されていて、水回りを使う際は母屋と離れを行き来しなければならない
■居間と土間の差が40cmあり、食器棚を手すり代わりに上り下りするため危険
■寝室にしている和室は、道に面しているうえに線路が近くにあるため騒音が響く
■間仕切りが建具のため、気密性が低い
■老朽化した建具に隙間ができており、冬場は冷気が吹き込む
■離れから母屋の玄関まで20メートルあるため、急な来客の際、移動が大変
■夜に母屋と離れを行き来する際、暗くて危険
■母屋の2階につながる階段へは、居間から幅1メートルの土間をまたいで移動している
動線の旅人
関谷昌人
広い敷地なので、一人で住む場所を活かしつつお客さんが来て楽しめる作りにしたい。
段差は、高齢化社会で民家が住みつがれていくハードルの一つだが、魅力でもあるので、折り合いをどうつけるかが問題。
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昔の雰囲気を残した玄関
黒漆喰の壁に合わせ、黒く塗り直して再利用した玄関の引き戸を開けるとその先には、以前と変わらぬ風情ある通り庭が裏庭へまっすぐに続きます。
亡きお父さんが、こまめに手入れをしていたお蔭で伝統的な日本建築の趣ある内装を残していた母屋。
お母さんも娘も孫も、大好きなこの家の通り庭の雰囲気を一切変えることなく、お母さんが、土間から楽に上り下りできるよう専用の手摺りだけ、新たに取り付けました。
玄関脇には、来客がちょっと腰掛けるのに丁度いいスペースを作り、その脇には、遊びに来た娘や孫たちの分まで入る下駄箱を用意しました。
吹き抜けにしたことで、格段に明るくなった玄関のすぐ脇にあるお客さんがすぐに上がれる4畳半の和室を、新たに客間にしました。
長時間過ごせる母屋
庭に面した掃き出し窓を開けると、段差なく繋がる濡れ縁が出来ました。
天気のいい日は、ここで日向ぼっこもでき、お友達との会話も弾みそうです。
母屋に初めて出来たキッチンは、庭を眺めながら作業できる対面式。
娘や孫達と食事が作れるよう、調理スペースも広く、収納もたっぷり用意してあります。
以前はわざわざ離れまで行かなければ食事ができませんでしたが、お母さんが「過ごすのが一番気持ちいい」と言う母屋で食事ができるようになりました。
カウンターの横に置かれた茶箪笥は、引越しの時に納屋の中を片付けていたら出て来たもの。
長年まとっていた埃や汚れをきれいに落としてから漆を塗り直し、匠が、正方形の戸に時計を取り付ける一工夫を施しました。
ダイニングのテレビ台には、亡き姑の嫁入り箪笥をリメイクしたものを再利用しました。
キッチン裏には、調理以外にも多目的に使え、十分な収納を備えたユーティリティコーナーを設けました。
アイロンがけをしたり、化粧台にしたり、ちょっとした書き物や読書など炊事の合間にもいろいろと使えて重宝しそうなスペースです。
吹き抜けにしたキッチンの天井には、丸太梁を利用した仕掛けが。
光を通す樹脂素材のスライド建具が取り付けられ冷暖房の効率を高めることが出来ます。
過ごしやすくなった離れ
縁側があった場所に、遠かった離れと母屋を最短距離でつなぐ廊下が完成しました。
お母さんの寝室のベランダから、その向こうにあるガレージまで一直線につながりました。
母屋と離れをつなぐ待望の廊下の脇にはトイレが作られました。
母屋と離れのどちらにいても使いやすい場所です。
寝室にあるテレビ台も、ダイニングの食器棚同様、納屋にあった箪笥を再利用しました。
もちろん、布団や衣類がたっぷり仕舞える大型収納も用意しました。
離れの玄関だった場所が土壌蓄熱式床暖房で、冬も暖かな洗面脱衣所になりました。
以前は、仕方なく離れの外に置いていた洗濯機も洗面脱衣所の隅に収まり、物干し場のあるデッキへ段差なく、すぐに出られます。
段差なく繋がる風呂場は、以前と同じ場所ですが、トイレを移動した分だけ、1畳分、ゆとりが出来ました。
浴槽も広くて浅い、お母さんが安心して入れるものに変えられました。
お母さんの寝室から、段差なく出られるデッキは、ガレージまでスロープ状につながり、車イスが必要になることがあっても楽に移動できます。
家族の憩いの場にリメイク
離れと納屋をつなぐ屋根のあった場所は家族の希望を叶え、車2台が停められるガレージになりました。
敷地の端、母屋から最も離れた場所にあった殆ど使われていない納屋の一部を、コストをかけずに東屋に改造しました。
アーチをくぐって入ると、友達と車座になっておしゃべりするには、打ってつけの空間。
庭にこんな場所があると、お母さんも自然と外に出ていい運動や気分転換になりそうです。
入口の周りには、以前の庭にあった敷石を集めて敷き詰めました。
庭の景色を楽しみながらバーベキューをするなど家族みんなの憩いの場所に。
娘・孫たちを迎えやすい2階
2家族が一度に遊びに来ても泊まっていけるように、明るい6畳の和室を2間作りました。
丸太張りを露わにし、天井の高い圧迫感のない空間に生まれ変わりました。
遊びに来る娘や孫たちが快適に過ごせるよう、離れで使っていたまだ新しいトイレを再利用しました。
奈良県桜井市
吉野材建築株式会社
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