リフォームする物件は、マンションではなく1年半前に購入した一戸建て。
丘の上の閑静な住宅地に建つその家は、家探しを始めて7年、ようやく巡り会えたという夢のマイホームです。
敷地の高低差はおよそ20メートルもあり、傾斜地を利用した母屋の建物は、庭側から見ると、地下室と1階の2階建てになっていました。
お父さんは、家を購入してすぐにプロ仕様の大工道具を揃え、仕事の合間を縫って日曜大工に励んでいます。子供たちが遊べるようにと、3週間かけてこんな立派なツリーハウスまで庭に作っていました。
立派な外観の印象とはあまりにかけ離れた、ほとんど廃墟同然の室内。
天井は剥がされて下地が丸見え、壁は一部分が荒々しく剥ぎ取られていました。
クリーニングすれば暮らせる状態だったこの家。それを解体したのは、お父さん自身でした。家族が暮らしやすい家にするため、自分でリフォームを始めたお父さん。床もフローリングに変えようとタイルまで剥がしたというのです。
リフォームを途中で断念せざるを得なくなったのは、家の東側部分2階が浮き出した増築部分の構造が原因でした。
2階を支えていた構造は、見るからに頼りなく、材料も不揃い。
雨よけのカバーもない柱は水気を含み、腐食が進んでいました。しかもその柱は、いつ外れてもおかしくない危険な状態。
前のオーナーが素人工事で増築した地下室部分には、工事途中で放置されたままの洗面所とトイレ。そして一番奥には小さなシャワーブースがあります。
傾斜地に建てられている家。その建物を支える重要な束石が置かれていたのは、なんと今にも崩れそうな崖っぷちだったのです。
急勾配の傾斜地の家で繰り返された無謀な増築。そのせいで、地盤にも影響が。
なんと土留めの擁壁に大きな裂け目が走り、左右にぱっくりと分断しているではありませんか。
もはや構造の解決なしには先へ進めない状態。「匠」も頭を抱えていると…、登場したのはアンジェラ・リヴェレットさん。
アメリカで様々な物件を手がけてきた人気の建築家で、お父さんは以前から家の相談をしていました。こうして、日米の「匠」がタッグを組むという、番組初の試みが始動しました。
日米の「匠」が互いの意思の疎通を図ろうと、日本風にリフォームされているお宅に向かいました。
やってきたのは、最近人気だというロス郊外の高級住宅地。
このお宅は、典型的なアメリカンハウスを少しずつ日本風の家にリフォーム。
天井を抜き、梁を見せているのも和風スタイル。日本の古民家をイメージして作られています。
日本のアンティークを置くだけでは飽き足らず、6年前、自らアイデアを出し、和を徹底してこだわり抜いたキッチンに大改造。
そこには、日本人でも驚く、細かい工夫が随所に施されていました。
キッチンには、これまたひと際大きな箪笥が。実はこれ布団箪笥に見せかけた冷蔵庫でした。
アメリカでは冷蔵庫を収納に見せかけて隠すのは一般的だそうですが、このデザインは革新的。「匠」も初めて見るアイデアです。
寝室の中で、一同が思わずため息をもらしたのは、和風にしつらえられたヘッドボード。
これらは、アンティーク家具の雰囲気に合うよう、新しく作ったオリジナル。
トイレもキッチン同様、フルリフォームしたご主人自慢の空間。
古い箪笥を使い、水洗金具は刀をイメージされているようです。
そしてご主人自ら作ったというバスルームは、温泉宿の岩風呂をイメージ。窓の向こうには坪庭があって、露天風呂の雰囲気が感じられます。
こだわりは裏庭にも。かつては、いかにもアメリカらしいプール付きの庭でしたが、そこを和風庭園にリフォーム。
自然石で滝を作り、プールを池に見立てました。
ロサンゼルスの地で始まった、日米の「匠」の挑戦。果たして、どんな和風の家が出来上がるのでしょうか?
完成を楽しみにお待ちください!