芦生の森で
Photo Gallery フォト&エッセイ:円満堂修治
ブナの森を抜け、帰路を急ぐ。
「この峠まで来れば、帰ってきたのも同然だ」
すでに機材に終了宣言をし、ザックにパックされている。
私は、峠でそんな重いザックを下ろして、一息入れることにした。
(せっかくなら、琵琶湖へと続く深い山並みが見渡せるところがいいな)
木立の切れたところを捜していると、
「ああ!」
闇に包まれかけた山並みを、黄色いスポットライトが駆けまわっている。
私は急いで眠りかけていた機材を叩き起こして、セッティングを開始。
無我夢中でシャッターを切っているうちに、そのスポットライトは、力を失いながらどこかへ去っていってしまった。
もう二度と帰ってくることはなかった。
気がつくと、私は闇の中に取り残されていた。
急いでザックに機材を放り込むと、あのスポットライトのように、私も駆けるようにしてその場をあとにした。
[円満堂修治]
1967年生まれ。神戸市在住。
自然を愛し、物語でつなぐ撮影活動を続けるカメラマン。
居住する地域の六甲山は主たる撮影エリアで、六甲山ホテルでは、現在各部屋に彼の写真が飾られている。
また、環境教育プログラムなどのスライドショー制作、フォト・ワークショップの企画や、山と渓谷関西版「六甲山」特集号ではカメラマンとして活躍するなど、積極的な活動を展開している。著書に「大きな木に伝わるお話」(近代文藝社刊)がある。
「ガラスの地球を救え!倶楽部」会報「EARTH breeze」には六甲山特集以来、取材撮影にスタッフとして参加。
(円満堂修治さんのHP http://www10.ocn.ne.jp/~enmando/)
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