2010年7月4日放送
90歳の母を玄関で介護する家
- ■90歳の母親の面倒を68歳と60歳の娘姉妹が見る老々介護の状態だが、家の造りが介護に不向き
- ■足を骨折して以来２階に上がれなくなった母親の介護用ベッドが玄関脇にしか置けない
- ■トイレや浴槽などの水回りや台所が、あまりにも小さすぎる
- ■浴槽のふちと床の段差が約40cm、浴槽の深さが約60cmと、お年寄りが出入りするには高低差がありすぎ危険
- ■週に２日、リハビリで介護施設に行くために母親が外に出るが、表通りまで20ｍ近くもある長い路地が舗装されていないため、抱えて歩くのも大変
- ■２階への階段が急な上、手すりの一部が壁から外れており、本来の役割を果たすどころか、危険を招く存在に
- ■ベランダの木の床板が腐って、いつ抜け落ちてもおかしくない状態
バリアフリーの熱血講談師 天野 彰
- 介護する娘２人も60歳を超えていて老々介護の典型的な例。
介護する側がいかに楽にできるか。ここが今回のリフォームの肝。
- 赤いカメラをクリックするとビフォーアフターの変化をご覧いただけます
- 老いた母親を常に見守る
- 玄関の傍という落ち着かない場所にあった おばあちゃんのベッドは、優しい光と風の入る吹き抜け下の明るい場所に移動しました。介護に適した広いスペースを持ったトイレも隣接しています。
このベッドは、キッチンからも、２階からも様子を伺うことができます。２階の各部屋にある障子が貼られた扉を開けると、そこには丁度ベッドの上にある吹き抜けが。そこから下を覗き込めば おばあちゃんの様子もわかります。
さらに おばあちゃんのベッドサイドには、呼び出し用のボタンを設置。これを押すと…
電気が消えているときでも、２階の部屋でブザーが鳴り、自動で明かりが灯ります。階段など動線も照らされて、安全に おばあちゃんの元に駆けつけることが出来るのです。
- 介護に特化した構造
- 足下を危うくするデコボコの敷石が続いていた路地は、平らで歩き易いアプローチに変わり、家族を新しい我が家へと安全に導きます。
勾配が緩やかになり上り下りが楽になった階段の下には、扇形の箱が隠されています。鉄の棒で作られた軸を中心に箱を回転させ引き出すと、なんと、おばあちゃんの帰りを出迎えるベンチとして利用できるのです！
水回りでは、介護する側とされる側、両方の使いやすさを考え、浴室から大きな洗面台を設けた脱衣所とトイレへの動線をつなぎました。
トイレは広いスペースを確保し、また介護時のことを考え便座の高さに合わせた台を併設しました。台の下のデッドスペースを収納として利用できるよう、扉も付けてあります。
- 余す所無く空間を活用する
- 建坪９坪の限られた空間で「匠」は多くの収納スペースを確保しました。
玄関を開けて、車椅子のまま楽に入れる長い土間をつきあたりまで進むと、背が低くても簡単に出し入れできるコートクローゼットが。
その下には車椅子を収納できるスペースが用意されていました。高さがあるので車いすをそのまま置くことも、畳んですっきりとしまうこともできます。
おばあちゃんのベッドと畳ベンチは、畳を跳ね上げるとその下には、布団などかさばる荷物も収まるスペースが隠されていました。
階段の下のデッドスペースも有効活用。階段の奥まで使える、出し入れがスムーズなキャスター付の収納を設置したのです。
- 住み心地の良い家に
- 介護する側の生活にも大きく配慮した「匠」。住み心地が良くなるようにと、アイデアをリフォームに盛り込みました。
キッチンに作られたのは、壁の厚みを利用した収納棚。省スペースのこの棚の背後の壁には小さなドアが取り付けられました。ドアを家の外から開けると、ちょうど棚の下に置いたゴミ箱に手が届き、楽にゴミ出しが出来ます。
周囲を隣家に囲まれ、日当たりが決して良くなかった１階は、ベランダを半分にして、トップライトを設置したことで問題を解消。玄関土間の奥まで差し込む太陽の日差しが、明るさとぬくもりをもたらしてくれます。
２階に作られた和室と洋室は、娘たちそれぞれの部屋。今までほとんど使っていなかった２階は、廊下を挟んだ２つの個室によって、２人のプライバシーを確保した快適な住空間として生まれ変わりました。
- 埼玉県さいたま市西区 有限会社 中河原建設