阪神淡路大震災の取材映像アーカイブを
一般公開するにあたって

6000名を超える犠牲者を出した阪神淡路大震災から25年が経ちました。
神戸市に住むおよそ半数が、「震災を知らない人々」となり、記憶や教訓の風化が急速に進んでいます。

震災映像の公開にあたって、震災後に生まれた大学生のみなさんに、当時の映像を見ていただきました。
毎年のように起こる災害。こうした映像を見慣れているはずの彼らが、驚いた表情でこう語ってくれました。

「カメラに向かって、こんなに思いを語っている被災者を見たことがない」
「語り尽くせないほどの悲しみの中で、生きようとしているのがよくわかる」
「被災者のみなさんが語る言葉や表情に、今も活かせる教訓が詰まっている」

思いがけない大災害、街と暮らしが崩れた中で人は何をしたのか、何を考えたのか…
近年の災害映像からは感じ取れない何かを、大学生たちに伝えたのです。

阪神淡路大震災は、発生の瞬間と、その後の復興プロセスが映像でつぶさに記録された、世界で初めての大地震です。
そしてABCは、被災地を取材した、膨大な映像をライブラリーに保存しています。

映像が伝える「教訓」を広く共有し、
後世につなげたい。

そこで、私たちABCグループは当時取材した「阪神淡路大震災取材映像アーカイブ」の一部をWEBサイトで公開することにしました。
この貴重な映像を多くの人にご覧いただき、未来の「防災・減災」に活かしていただければ幸いです。

また、この取り組みをきっかけに、自然災害に関する映像記録が広く社会に還元され、持続的な利活用が図られる世の中になればと考えています。

公開映像について

今回の映像公開プロジェクトでは、弊社の阪神淡路大震災取材映像のうち、発生直後から8月23日までの約7ヶ月間のものから抜粋した、約38時間分を公開しています。
災害が発生した際の異常な状況がわかるように、できるだけそのまま公開しています。

映像クリップは、おおよその取材場所を、被災地の地図上に表示しています。
また、映像の取材日時・場面でも検索できるように以下の12のカテゴリ―に分類しています。

火災/建物倒壊/インフラ/救助/避難所/医療/くらし/教育/交通/復旧・復興/自衛隊・警察・消防/支援ボランティアなど/

この取材映像アーカイブは、社会の「防災・減災」のため、個人・家庭・学校での視聴に幅広くお役立てください。
ご覧になったご感想、ご意見などを、メールフォームでお聞かせいただければ幸いです。
本サイトの改善など、今後の活動の参考にさせていただきます。

上記以外、

  • ・企業・自治体等の団体でのご利用
  • ・営利を目的としたイベントなどでの上映
  • ・利用のための映像素材の貸し出し

などを希望される場合は、下記のフォームに必要事項をご記入の上、事前にお知らせください。
事前のご連絡なく映像を使用されますと、著作権侵害となる場合があります。

本映像公開に対する、皆さまのご理解とご協力をいただきますようお願いいたします。

ご感想、ご意見、
お問い合わせはこちら

公開までのプロセス

1. 見える化「災害映像アーカイブ」を25年たった今、2020年仕様にアップデート

映像の中で被災者が発している「言葉」の中には、今後の災害でも起こりうる「教訓」が多く含まれています。
震災を知らない世代の記者が、膨大な映像すべてを見直さなくてもその内容や現場の状況が理解できるよう、また映像内容を多様な方法で多くの方に届けられるように、記者リポートやインタビューなどの文字起こしを行い、アーカイブ映像の「見える化」を行いました。

ON:記者「午前6時半です。あたりが空、しらみかけてきましたが、芦屋市の大原町というところなんですが、手前にあります民家から火が出ました。漏電が原因ではないかとみられています。その火が隣の民家に燃え移っています。」

ON:男性「燃えなくて済むのをね。」
ON:記者「でも、全然水の勢いがね。」
ON:男性「足りないでしょ。素人が見たってわかる。」

2. 学生ワークショップ「震災を知らない世代が見た『阪神淡路大震災映像』」

※11月16日(土)に当社にて開催しました。

阪神淡路大震災を経験していない大学生達にABCテレビの震災アーカイブ映像を視聴して頂きました。さらに

  • 1. 彼らがどんな映像に驚いたのか……放送等で活用できていない映像はどんな映像か。
  • 2. 映像の中に「後世に伝えるべき教訓」はあるのか……映像で伝えられる教訓とは何か。
  • 3. 「伝える価値がある」と評価した映像はどのような形で視聴できると思うか。

などの点について、学生の「新鮮な目」で評価をしていただきました。

映像視聴のあと、学生の皆さんからは
「今では見ることのない、避難所の内部の惨状がよくわかる」
「被災者自身が『今何が足りないか』を語っている姿が新鮮」
「復興に向けて、被災者自身がたくましく立ち上がっている様子がよくわかる」
などのご意見をいただきました。

3. 研究会「アーカイブ活用の効果と、そのために克服すべき課題」

※12月6日(金)に当社にて開催しました。

災害や映像アーカイブ、肖像権等に詳しい研究機関・学術研究者(下記)をお招きして研究会を行いました。
被災者の肖像権を巡るデリケートな問題や東日本大震災の図書館アーカイブの課題、人と防災未来センター(神戸市)の資料室が保有する災害アーカイブの保存や公開に関する課題を共有するとともに、学生ワークショップで集めた意見・感想や、アンケートの結果などを踏まえ、より効果的な活用法を議論しました。

≪ご協力いただいた研究者の皆さま≫(敬称略、五十音順)

石原 凌河
(龍谷大学政策学部准教授 社会システム工学・安全システム)
佐藤 翔輔
(東北大学災害科学国際研究所准教授 情報社会トラスト)
曽我部 真裕
(京都大学大学院法学研究科教授 公法学 公共放送 / 報道の任務)
牧 紀男
(京都大学防災研究所教授 / 人と防災未来センター震災資料研究主幹 )
松山 秀明
(関西大学社会学部准教授 映像アーカイブ論)

朝日放送グループでは、今年度、近年の大規模自然災害の頻発を受け、グループCSR方針≪行動指針≫のひとつ◆明日の暮らしへ・・『地球環境と人の営みを大切にし、命と暮らしを守る情報を届けます』により注力し、自然災害や防災・減災情報につながる情報発信と取り組みを行っています。

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