表家業の瓦屋もそっちのけで博打と女遊びに熱心な陣八郎ですが、時折見せる鋭い眼光は、ただの遊び人ではない迫力を感じさせます。
「三行半を突きつける」という言葉がありますが、江戸時代、離婚とはあくまで夫が妻に離縁状をわたすことで成立するものであり、妻の側から離縁状を渡すことは許されていませんでした。 そこで女性のための救済措置として存在していたのが、縁切り寺です。離婚を望む妻たちは、縁切り寺に駆け込み、寺の雑用などをしながら2~3年を過ごすことで、晴れて自由の身となることができたのです。 実在する縁切り寺としては、鎌倉の東慶寺、上州新田郡(上野国)の満徳寺が挙げられ、東慶寺には、江戸末期の150年間で2千人が駆け込んだと言われています。 寺への駆け込みは、文字通り寺の中に足を踏み入れるだけでなく、髪につけたかんざしや履いている下駄を寺内に投げ入れることでも認められたと言われています。
僧侶というには派手な衣装をまとい不気味な笑みを浮かべる住職・燕天を筆頭に、視察と称して寺に足しげく通う寺社奉行の江田島兼良、小僧の末松や女衒の梅助など、怪しげな面々がずらり。
さらに、彼らの背後に影のごとく控える凄腕の浪人・雉沢清十郎も謎めいた殺気を漂わせます。
男性が妻と離縁して一か月以内に後妻を迎えた場合、前妻が後妻の家を襲ってもよいとされていました。 その際、前妻はあらかじめ予告をした上で、親しい女子仲間を集めて、ほうきやすりこ木、竹刀などの武器を片手に後妻の家を訪れます。
一方、後妻の側も仲間を集めて防戦。そして、両軍入り乱れての乱戦となるのですが、タイミングを見計らって仲立人と呼ばれる仲裁役が現われ、その場を収めるという仕組みになっていました。
昼には三味線を手に常磐津の師匠としての顔も見せ、情報屋として活動する際には芸妓に扮して料亭にあがることもあります。
そんなお菊が、今回、縁天寺の住職にして「女の敵」である燕天と対峙することに。しかも、身にまとうのは、いつもの華やかな衣装とは打って変わって粗末な着物。
過去のとある出来事が原因で口をきくことができないお宮は、ふだんは黙々と表家業の髪結いをこなし、健気に陣八郎につくします。 さらに裏稼業では、鬼気迫る表情を見せることも。
「いろんな分野で活躍してて、画面の中で見てかわいいなって思ってたのに、いきなり自分と夫婦役ってウソだろ」とは、陣八郎を演じた遠藤憲一さんのコメント。
これまでも、2010に登場したカルタのリキや、2013に登場した胡桃割りの坐坊など、さまざまな仕事人たちがバラエティ豊かな技を披露してきました。
そして今回は、遠藤憲一さん扮する瓦屋の陣八郎と、山本美月さん扮する泣きぼくろのお宮が、夫婦仕事人として悪人たちを的にかけます。
「いくら姉妹とはいえ、そっくりすぎる」と思ったアナタは正解。実は、この2人、本物の姉妹なのです。演じているのは、宮武美桜さんと宮武 祭さん。