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  • 朝日放送テレビ 報道局(エー・ビー・シーリブラ出向) ディレクター
  • 木戸 崇之 (きど たかゆき)
  • アーカイブプロジェクト
    「阪神淡路大震災 激震の記録1995 取材映像アーカイブ」制作
    第48回放送文化基金賞 個人・グループ部門(放送文化) 受賞
朝日放送テレビ 報道局(エー・ビー・シーリブラ出向)ディレクター 木戸 崇之

阪神・淡路大震災の時にABCが取材した映像を、未来の防災・減災に活かしてもらうために、WEBサイト「阪神淡路大震災 激震の記録1995 取材映像アーカイブ」にて、当時の取材映像を公開しています。最近の災害では、被災した方々に配慮して踏み込んだ取材がしにくくなっています。しかし当時はまだ被災者も取材に寛容で、カメラに向かって積極的に話してくださる方も多かったようです。私たちの先輩が懸命に取材した映像ですが、会社のものとするのではなく社会の財産にすべきではないかと考えて、CSR(企業の社会的責任)の一貫として、2020年1月に公開することになりました。ABCグループ各社の力を結集して出来上がったサイトは、内外からもご評価いただき、様々な賞を頂戴したり、他社が同じような活動をはじめたりと、世の中を動かすきっかけをつくれたと手応えを感じています。

※アーカイブプロジェクト「阪神淡路大震災 激震の記録1995 取材映像アーカイブ」は
以下リンクからご覧いただけます。

激震の記録

このサイトを制作するに至ったきっかけは、2014年に神戸の「人と防災未来センター」(通称:ひとぼう)で、研究調査員として社外研修させて頂いたことです。若手研究者や自治体職員のみなさんと一緒に、災害情報の伝え方を議論する有意義な時間だったのですが、神戸ではちょうど震災記憶の風化が問題になっていました。時が経つにつれ、ニュースで使われる当時の映像はわずかで、ひとぼうの展示も「証言」「再現」が多く、震災後に生まれた世代にとっては、なかなかリアリティを感じにくいだろうと感じていました。
阪神・淡路大震災発災の年である1995年にABCに入社した私は、入社式の前に呼びだされて出社し、現場から帰ってくるテープのキャプションづくりを手伝いました。ふと、「あれだけたくさんの映像が残っているのに、公開しないのはどうしてなんだろう」と思い至りました。

朝日放送テレビ 報道局(エー・ビー・シーリブラ出向)ディレクター 木戸 崇之

が、2015年段階では、「公開した方がいいと思うんですけど…」と提案してみても、「誰がやるの?」「肖像権はどうするの?」「まずは研究材料として提供するとかじゃない?」と、ネガティブな反応が返ってきました。しかし、それから5年の間、企画書を温めて、改めて出したときに「ええやん、やろう!」と言ってもらえたのは本当に嬉しかったです。
公開に向けては、ABCリブラのライブラリーチームのみなさんが、すごく前向きに準備をしてくれたことが印象的でした。縁の下と力持ちとして黙々と管理してきた「素材」に光が当たる…その喜びをモチベーションにしてくださっていることがよくわかりました。映像ライブラリーはABCグループの大きな財産です。活用にはハードルもたくさんありますが、まだまだやるべきことがあると感じられたことが嬉しかったです。
苦労…といえば、2000本の映像に緯度・経度の情報をつけるために、お正月休みを全部費やしたことでしょうか…。

朝日放送テレビ 報道局(エー・ビー・シーリブラ出向)ディレクター 木戸 崇之

マスメディアの災害報道は、被災者のプライバシーを踏みにじる印象が強く、テレビ離れした若者たちにはあまり評判が良くありません。しかし震災を知らない若者達に、このアーカイブを使って講義すると、マスメディアに対する評価が激変します。25年のタイミングで社会のために公開したこと、肖像権を乗り越えたことや、公開にあたって検討したいろいろな配慮、そしてこの映像から学べる教訓の数々…。丁寧に説明していくと、「テレビなんて…」と言っていた学生が、わずか90分で「テレビってすごい」に変わるんです。映像のチカラを再認識させてくれる貴重なアーカイブを広く使っていただきたいなぁと思いますし、「歴史を記録するジャーナリズムの大切さ」を若い世代に伝えていく材料になると確信しています。

朝日放送テレビ 報道局(エー・ビー・シーリブラ出向)ディレクター 木戸 崇之

この震災アーカイブは、私はもとより、公開に取り組んだチームメンバーだけのものでも、ABCグループだけのものでもありません。これを将来まで受け継いでいくために、バトンを受け継いでくれる新しいメンバーを常に社内に生み出し続けることが必要だと思いますし、社外にも、このアーカイブを一緒に支えてくれるサポーター・スポンサーを増やすことが大事だと思っています。ぜひ、部署や会社の垣根を越えて、このアーカイブを活用する輪が拡がっていくよう協力をいただけたら嬉しいです。私も微力ながら、支え続けたいと思います。