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  • 朝日放送テレビ 総合編成局東京編成部
  • 國友 千愛 (くにとも ちえ)
  • 「パパがある日女性に」を制作
    2023年ワールドメディアフェスティバル ドキュメンタリー部門 銀賞
朝日放送テレビ 総合編成局東京編成部 國友 千愛

京都市内で暮らすある家族の父・今西千尋さんは、人生の途中で“女性”になりました。物心ついたときから自分が男性であることに違和感をもっていた千尋さん。誰にも話せないまま結婚し、2児の父となりました。長男が7歳、長女が3歳のとき、初めて妻・博子さんに自分らしく生きたいとカミングアウト。髪を伸ばしメイクをするようになった父の姿に家族は困惑し、傷つき、一度は離れ離れに…。しかし長い年月をかけお互いを理解し合い、新しい家族の形で再スタートしました。家族は女性になった父をどう受け止めてきたのか。誰もが自分らしく生きるためにはどうすればいいのか。差別や偏見を乗り越えてきた父と、支え合う家族の姿を2年以上に渡って取材し、報道番組内でのニュースや、ドキュメンタリー番組で放送を重ねました。

4年前、新型コロナの流行で時短営業となった京都の木屋町の飲食店を取材しているとき、偶然、出会ったのが始まりでした。あっけらかんと「私、元男性なんです」と話す千尋さんと笑顔で聞いている家族、そんな状況に衝撃を受け、連絡先を交換しました。また、この出会いの少し前、仲の良い友人が「同性同士で付き合っている」と話をしてくれました。意を決して教えてくれたこの事実に、私はなんと声をかけたらいいのか分かりませんでした。性的マイノリティやLGBTQという言葉は知っていても、本質は何も理解できていない自分をもどかしく思っていたことも、取材の原動力となりました。

朝日放送テレビ 総合編成局東京編成部 國友 千愛

自身の“性”とは人間の尊厳に関わる大切なことです。だからこそ、表現ひとつで取材者を傷つけてしまったり、誹謗中傷の的になってしまうことがあってはなりません。制作する上で、たとえどんなに細かい表現であったとしても、家族全員に確認するなど、慎重に取り組みました。嬉しかったことは「newsおかえり」や「ABCドキュメンタリースペシャル」で放送後、千尋さん、博子さんに取材や講演会の依頼が相次いでいて、同じような悩みを抱えている当事者やその家族からの相談が届いていることです。家族の生き方が多くの人に知られることで、救われる人が増え、多様性への理解が進んでほしいと思います。

「普通」を重んじ、「違い」は受け入れられない。自身のセクシュアリティをカミングアウト出来ず悩む人、またカミングアウト出来た後も悩み続ける人はたくさんおられます。パパが女性になっても、パパは家族を大切に思い、そして子どもたちにとっても、たった一人のパパであることに変わりはありません。この家族がいかに幸せで“普通”の家族であるか、家族の日々を見つめながら、自分らしく生きることの大切さについて考えるきっかけになればと願っています。

※「パパがある日女性に」は以下リンクからご覧いただけます。

ABCテレビニュース 「パパがある日女性に」

「いつかLGBTQや性的マイノリティという言葉がなくなる社会になってほしい」。これまで出会った当事者の多くの方々はこう話します。ABCテレビでも、2022年に「同性パートナーシップ制度」を導入し、“誰もが自分らしく働ける会社”に向けて歩みを進めております。少しずつ変わっていく社会の中で、まず報道機関で働く私たちから変わっていかなければならないと感じます。誰もが自分らしく生きられる社会を目指して、これからも自分にできることを模索していきたいと思います。

朝日放送テレビ 総合編成局東京編成部 國友 千愛