まず、『必殺仕事人2012』への意気込みからお聞かせください。
藤田まことさんがお亡くなりになってだいぶ経ちましたが、藤田さんはみんなの心の中に残っています。僕だけではなく、スタッフみんなが藤田さんに対する思いをしっかりと持って撮影に臨んでいます。藤田さんの重厚感や軽やかさ、人間としての素晴らしさは僕らの中にずっと残って消えることはないので、その世界観を受け継いでいきたいと思いますね。
前回の『必殺仕事人2010』から一年半ぶりの撮影になりますが、松岡さん、田中さんとの共演の感想はいかがですか?
年数を重ねてきたことで、それぞれの役が良い意味で染み付いてきていますね。ですから、今回の撮影にも違和感なく入れました。性格の良さは変わらないんですが、それぞれが成長していますね。役に対する思い入れの強さに、「さすがにプロだな」と感じました。これからが楽しみです。
小五郎は本町奉行所に転勤となりましたが、新しい職場で演じた感想は?
上司の増村倫太郎を演じる生瀬勝久さんが、本当に良いタイミングで突っ込みを入れてくれるんですよ。生瀬さんにしても、(結城新之助役の)田口浩正さんにしても、心地よく演じられる雰囲気を作ってくれますし、さすがだなと思いますね。これまでとは違った人間関係が表現できたと思います。
今回、小五郎は博打にも挑戦しますが、演じてみていかがですか?
知らないうちに、博打好きになっていましたね(笑)でも、小五郎の人物像には意外とマッチしていると思います。
普段、渡辺家で過保護にされている分だけ、別のところで発散しているのかもしれません。その意味では、今までよりも深くキャラクターが描かれています。そういう人間らしい表情も、ご覧になる方にとっては面白いと思いますよ。
『必殺仕事人2007』から数えて5年目に入りましたが、東山さんにとって『必殺』とはどんな存在ですか?
『必殺』では、本当に素敵な財産をたくさんいただいていると思います。やはり、人との出会いが一番の財産ですね。今回、出演してくださる高橋英樹さんも、時代劇の第一線で活躍し続けている先輩です。その意味では、先輩方に教わってきたものを返すというつもりで、藤田さんと同じように、胸を借りて思いきり演じていきたいと思います。
正義の味方の印象が強い高橋英樹さんを斬るということについてはいかがですか?
最初は「え!?高橋英樹さんを斬ってもいいの?」と思いましたね(笑)幼少の頃から『桃太郎侍』を見て育っていますし、僕の母もそれを見て「日本一!」なんて言ってましたから…。高橋さんを斬るなんて洒落にならないだろう、と思いました。でも、こういう出会いをいただいた以上は思いきりぶつかって、より良いものができるようがんばりたいと思います。
時代劇が少なくなりつつある中、『必殺』はどうなっていくのでしょうか?
時代性を表現するということももちろん大切ですが、僕らが一番大事にしなければいけないのは人間を表現することです。今回は、初めての悪役を演じる高橋英樹さんと共演させていただくということもありますし、巨大な悪にどうやって仕事人たちが立ち向かっていくか、どのように正義というものを表現するのか、が大事だと思うんです。その意味では、時代劇というかたちは少なくなっているかもしれませんが、その志を継いでいく人たちは必ずいるでしょうし、これからも新しいものができるんじゃないかと思っています。
最後に視聴者へのメッセージをお願いします。
急速に価値観が変わりつつある現代の中で、このドラマには「人間の思い」というものが込められていると思います。僕自身、この撮影所にやってくると、藤田さんとメザシを焼いているシーンを思い出しますが、そういう思い出も重ね合わせながら演じていきたいと思っています。ですから、ドラマをご覧になるみなさんにも、いろんな思いを持って見ていただけたらうれしいですね。新しいスタッフと昔ながらのスタッフとが一丸となって、エンターテインメントとして恥ずかしくないものをお届けしたいと思っていますので、ぜひご覧ください。(了)