1995年、高校入学を控えた雪降る夜のこと。 黒桐幹也は傘も差さずに佇む着物姿の少女を 見かけた。

やがて春。入学式で少女……両儀式と再会することに。 ともすれば常に独りでいることを好む彼女になにくれと話しかけ、 いつしか彼は屋上で昼休みをともに過ごし「式」と名前を呼ぶまでになる。 一方、夏休みも終わるころ、街では人知れずおぞましい殺戮事件が起きていた。

式と黒桐がゆるやかに関係を紡いでいた、ある日。黒桐は人知れず机の中に届けられた、一通の手紙を見つける。 差出人は両儀式――それは、もうひとりの人格の織からだった。 曰く、彼女の中には生まれつき「式」と「織」が存在していたのだとか。
……意外な事実を知ってなお、その自覚もないままに黒桐は式に心惹かれていく。一方、事件の捜査にあたる幹也の従兄で刑事の秋巳大輔は、連続殺人事件のあらましを口にする。

そして冬。夕暮れ迫る放課後で、黒桐は式からひとつの告白を聞く。 彼女は常に身の内に破壊衝動を抱えていた、と。 このままでは式は黒桐をも殺してしまうだろう、と。
その告白を聞いてなお一層心を惹かれる彼は、ようやく自身の気持ちに気付く。 やがて6番目の殺人が起き、両儀家を尋ねた黒桐は血濡れたまま死体の側で 微笑む式を見つけてしまう。 かくして黒桐は決意する、式を見守り続けることを。