コメンテーターのつぶやき

巧妙な語り口でニュースに切り込む、おはようコールのコメンテーター陣。 そんな海千山千の識者が、意外な趣味・趣向で文章をつづる『コメンテーターのつぶやき』。 これを読めば、新たな世界が見えてくるかも!?

コメンテーター comenter中川謙

2012年1月30日(月)

「別世界」に手を出すな

 海はぶどう酒色、家並みは真っ白、亜麻色の髪をなびかせる女性の肌は淡い褐色・・・だったなあ、あのエーゲ海。
 劇団四季の京都公演「マンマミーア」を観て、思い出したのだ。海の上に広がる漆黒の夜空に、銀河の帯が水平線のかなたにまで伸びていくあの絶景を。
 もし地上に楽園があるなら、ギリシャの海はその第1候補に挙げてもいい。もう何十年も昔、小さな島の岬にあるテラスで赤ぶどう酒をすすり、オリーブの実をかじっていて「時計は止まる」(もちろん『夜明けのスキャット』から引用)瞬間をたしかに感じた。楽園が言いすぎなら、別世界であるのは間違いない。
 ギリシャの別世界ぶりは、こんどの財政危機ですっかり「こちらの世界」にも知れ渡った。やれ国民の4人にひとりが公務員だ、やれ年金が53歳からもらえるだ。そのうえ、朝からワインをあおりオリーブをかじって、挙句はデフォルト騒動。全世界に不況をひろげておいて、まわりに「SOS、助けてくれ」とは何事だ。
 と、「こちらの世界」のとりわけドイツ人が憤っている。自分たちがせっせと働き、輸出を増やし、黒字を貯めて欧州通貨ユーロを支えてきた。それをあのギリシャ人に台無しにされるとは、と。
 ちょっと待ってくれよ、と口を挟みたくなるのだ。この私だって「こちらの世界」のれっきとした一員。けれどもギリシャが「別世界」であることを止め、頭を下げてこちらにやってくることが正しいとも、好ましいとも思わない。
 ユーロがギリシャを含む南欧に普及し、欧州統合が深化・拡大したことで、いちばん得をしたのはほかならぬドイツだ。南の安い労働力で製品をつくり、中国などアジアに売り込んだ。ドイツ資本で少し金のできた南欧諸国には自国の産品を売りつけた。稼ぐだけ稼ぎ、後に広がる混乱と廃墟には顔をしかめるだけで済むのかね、ドイツ人さんよ。
 さて、「マンマミーア」に戻る。エーゲ海の小島に暮らす美しいソフィアは間もなく挙式を迎える。ところが父がだれなのかが知れない。母ドナがその昔、旅の3人とほとんど時を同じく愛を交わし、そのだれの種を受胎したのかが判然としないのだ。
 その3人がソフィアの式にやってくる。みな明らかに欧州の北方から。札束をどっさり抱えたビジネスマンもいる。ギリシャから見れば「向こう側」から押しかけ、「北」の手法でカネをもうけ、「別世界」の奔放な愛の風土にはちゃっかり浸りきった。
 おいおい、責任とれよ! こう言いたくならないかな。それって、ソフィアの父親問題のこと? それともギリシャの財政危機のこと?
 もう一度、あの小島の岬のテラスで「ぶどう酒色なせる」(これはホメロスから)エーゲ海をながめ、オリーブの実をかじりたい。あの時の流れが地上から消えてほしくない。言いたいのは、ただそれだけ。



コメンテーター comenter井上章一

2012年1月27日(金)

ソロライブに続き、新たな挑戦です

 これまで私は、ピアノソロのライブ活動を時折催してきました。といっても、ピアノ自体はそれほどうまくありません。41歳から挑み始めた遅咲きの、いやまだ咲いてもいない、つたないものです。お客様には、演奏の合間に挟まれる“小咄(こばなし)”で、お付き合いをいただいてきた。まあ、“ピアノ漫談”の集いだったというのが、ほんとうのところでしょう。
 舌先三寸の技には、少しうぬぼれも抱きだしていた、と思います。そんな私に、本職の落語家さんが、お付き合いをしていただけることとなりました。月亭遊方さん、古典ではなく、今を映し出す創作に力を入れておられる噺家です。ライブハウスのほうからは、試練の場を与えられたのかもしれません。私のしゃべくりなど、結局は素人芸でしかありえない。そのことを、噛み締めさせる場になるかなと、覚悟はしています。
 一応、ピアノの技も磨いてはおきます。よろしく、お付き合いくださいませ。


『元気がでるトークとライブ〜おっさん二人のエロ話〜』

日程:2012年2月27日(月)開場18時、開演19時半
場所:ライブスポットラグ(京都エンパイヤビル5F) 075-241-0446
出演:井上章一&月亭遊方
チケット:ラグチケットカウンター(スタジオラグ河原町店1F) 075-255-7273
     前売1500円/当日1800円(税込)