スタッフブログ
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スタッフの雑記

2012、おしまい

■2012年ABCホール最後の公演、伊藤えん魔プロデュース『ロミオとジュリエット』、千秋楽終演しました。終幕間近には、客席ですすり泣く女子多数。あんだけアホらしいボケを積み重ねておいて結局ここまで持ってくるんですから、恐るべしW.シェイクスピア、そして恐るべしE.イトウ!未萠里ちゃん、可愛かったです。美津乃さん、かっこよかったです。というわけで、最後はスタンディング・オベーションの嵐!今回の公演ではここまで封印されていた、カーテンコールでの恒例、出演者全員による「キャバレー」熱唱も飛び出しました。お客様も大満足されたことでしょう。お帰りの際、入り口の隅っこに置かれた小さな門松に気づいていただけたでしょうか?(サトウ花店さん、ありがとうございます)■ただ今、今年最後のバラシ真っ最中です。どうしようかな?打ち上げ始まるの、何時くらいになるだろう?今年最後だし、忘年会代わりに一杯だけお相伴したいんだけどな。終電の時間とにらめっこだな。

■おととし・2010年の秋、大阪・梅田のHEP HALLで中村勘三郎さんの姿をお見かけしました。いつも本欄で僕が絶賛しているイキウメの大阪公演を観に来られていたのです。大阪城で「平成中村座」公演中のことです。ものすごいサービス精神で、獅子奮迅という言葉でも追いつかないくらいの熱演を続ける日々。そのわずかの合間を縫って、小劇場で若手の芝居をこっそり勉強するなんて。なんて人なんだろうと思いました■今日の昼間、告別式の模様を報じるテレビを見て暗澹たる気分になりました。そして夜にホールで芝居を観て、少し元気になりました。こんなに頑張っている人たちがいる。巨大な喪失ですが、後に続く者たちがそれを埋めなければなりません。そして新しい高みを築かねばなりません■さて、ここは最後、名台詞の宝庫・シェイクスピアの戯曲からカッコイイ文句を引用して締めたいところですが、浅学の身には思いつきません、、、残念です。

どうぞよいお年をお迎えください。

雑賀さんのこと

■前項で紀州・雑賀衆のことを書いたら、「そういえば昔、雑賀ヨウヘイという漫画家が好きだったな」と思い出しました。僕が中高時代愛読していた漫画専門誌「COM」でデビューしたナンセンス漫画家。独特のユルイ描線が魅力で、週刊朝日のかつての人気企画「デキゴトロジー」の挿絵を描いていた方と云えば思い出してもらえるのではないでしょうか?たしか関西ご出身で、ひょっとしたら雑賀衆の末裔?と思い、今ネットを調べてみたら、雑賀陽平さんは神戸のお生まれで本名は石井利信。そして何と...2005年のJR福知山線の事故で亡くなっておられます(享年55)。当時画廊に勤務されていて、その通勤途中のことだったとか。漫画家としては活動を休止されており、名前が違うこともあって、漫画家・雑賀陽平の死は余り話題にならなかったような気がします。画風はあくまでソフトだけれど、時代を撃ち抜く4コマを得意とされていました。つまり、雑賀陽平は、鉄砲術を得意としていた忍びの集団、雑賀傭兵なんだろうか?■気のせいかもしれませんが、急に空気が冷え込むこの季節には毎年訃報が多いような気がします。今朝は、思いがけず7年前の不幸な死にも思いを致してしまいました。生きてる、って大事なことです。ありがたいことです。本当に(艦長)

今週は、イキウメ

■今週末は、イキウメ『The Library of Life  まとめ*図書館的人生(上)』です■今年はイキウメが結成されて10年という節目の年。そこで、これまでにVol.1から3まで3作上演された短編オムニバス公演『図書館的人生』シリーズから、選りすぐりの短編をまとめて、この長いタイトルで上演されることになったそうです。楽しみ!■といいますか、実は私先日上京の機会があり、こっそり東京公演を拝見して参りました。池袋西口公園(小説やドラマで有名になったI.W.G.Pですね)に隣接する、東京芸術劇場のリニューアル記念公演。いやー、おしゃれな劇場にぴったりな、もーほんとにかっこいい作品でした■いわゆるオムニバス劇のはずなんですが、普通のオムニバスとは全く違う。どう違うかは、ご自分の目で確かめていただきたいのですが・・・■舞台上の俳優は、ある時は物語の演じ手であり、ある時は読み手である。物語は読まれることによって初めてそこに現れる。どの物語が語られるか、それは膨大な書物の中からの偶然の選択に委ねられるのであって、誰かがその本を手に取るまで誰にも分からない。何故ならここは図書館なのだから・・・。何を書いているのかよくわかりませんが、観ていただければ判ります。実力の揃った演技陣に支えられた、前川知大さんの超絶の構成力、物語力に感動すること請け合いです。笑いも恐怖もSFもあります。つまり世界は、図書館■イキウメ、必見です(艦長)

イキウメ 『The Library of Life  まとめ*図書館的人生(上)』           

作・演出 前川知大

図書館的人生上.jpg12月  7日(金)  19:00

      8日(土)  13:00  18:00

      9日(日)  13:00

あさって初日!

虚構の劇団の皆さん、本日小屋入り。『イントレランスの祭』はあさって金曜日が初日です■虚構の劇団は劇作家・演出家の鴻上尚史さんが、2008年、当時平均年齢21歳ちょっとの若手俳優を集めて結成した劇団です。関西公演は今回が初めて!■鴻上さんといえば、1981年に劇団「第三舞台」を結成、80年代小劇場ブームを作り出した張本人です。DCブランドに身を包んだ俳優が早口でニューアカ(これも当時の流行り)っぽい台詞をまくしたて、YMOのテクノサウンドなどでダンスも披露する。もーめちゃくちゃかっこいい演劇でした。『ふつうの若者がデートで小劇場に行く』・・・そんな、演劇にとって幸せな時代の旗手だったのです。僕もかつては、第三舞台が大阪に来れば必ずヨメと近鉄小劇場に足を運びました。スタイリッシュで笑いの連続のお芝居でしたが、その底には時代に対する鋭い批評眼があったことも忘れてはなりません。お洒落なスーツも汗びっしょりだったしね。僕にとって第三舞台の一番のビジュアルイメージは、大高洋夫さんや小須田康人さんの全身から迸る汗と、背中一杯に広がった黒い染みだったりするのです■その第三舞台は昨年、10年の封印を解いて新作を上演し、同時にそれが解散公演となりました。鴻上さんは現在様々なメディアで活動を続ける一方、「なんでこんな苦労を続けるのかね」などとぼやきながら若手の育成に力を入れています iroiro 017.jpg■で。実はですね、今日水曜日、僕は鴻上さんに、初の大阪公演に向けての意気込みなどを、ABCラジオ『ドッキリ!ハッキリ!三代澤康司です』で話していただこうと、番組スタッフにお願いしていたのです。水曜はちょうど三代澤アナのパートナーが牧野エミさんなので、同世代の演劇人として楽しい話をしてもらえるかな、と。エミさんも、鴻上さんと会うのをとても楽しみにしていたそうです■・・・ところが、今日スタジオにエミさんはいませんでした。今日の『ドキハキ』は、『牧野エミスペシャル』として、3時間三代澤アナがエミさんの思い出を語り、秘蔵の音源が流れました。素晴らしい追悼番組でした■鴻上さんには生放送終了後スタジオにお越しいただき、三代澤アナとのトークを録音してもらいました。この模様は明日・木曜9時~12時の『ドキハキ』(1008kHz・ABCラジオ)の中で流れます。是非お聞きください!そして、芝居観に来てください!

虚構の劇団 第8回公演

イントレランスの祭 作・演出 鴻上尚史

 11月23日(祝)       19:00

    24日(土) 14:00  19:00

    25日(日) 14:00

※当日券は開演1時間前から発売

※公演前日正午から開演3時間前まで受付の当日券予約も便利です

あまりに...

■牧野エミさんが17日朝、お亡くなりになりました。何年もがんと闘い続けておられるのは知っていましたが、まさか突然こんな日が来るとは...■80年代小劇場ブームの頃から今まで、ずっと関西演劇界の看板として走り続けてこられた女優でした。きれいで、スタイルがよくて、芝居もダンスもお喋りも上手くて...。エミさんに憧れて舞台女優を目指した女性がきっと関西には数えきれないほどいるはずです。でも、生まれ持ったあの華には誰も太刀打ちができなかったのです。カッコよかったなあ!■朝からTwitterのラインは、演劇人の悲しみのコメントで溢れています。僕にも大切な思い出がいくつかあるし、ABCホールも愛してくださったし、いっぱい書きたいことはあるのですが、今夜はもう飲もうと思います■エミさん、本当にお疲れ様でした。ゆっくりおやすみください(艦長)

あす初日!

■いやー解散しましたね衆議院。これからの1か月、来年からの日本の舵取り役が誰かを決める重大な時間です。何といっても、3.11後最初の総選挙です。大きいなあ■さて、どんかぶり演劇祭が無事終わり、僕は予想通り3作品を観劇。HEP HALLの支配人は4つ全部制覇されたとのことで、反省です。歳はだいぶ僕が上なので、体力的な問題ということで・・・いいむろなおきさん申し訳ありませんでした。大入りおめでとうございます!

■ABCホールでは、すっかりお馴染みのカムカムミニキーナさんが今朝から仕込中。『ひーるべる』は、(土)(日)3ステージの公演です■前にも書きましたが、今年・2012年は、古事記が成立して1300年です。そしてカムカムの主宰•松村武さんは、稗田阿礼ゆかりの地・奈良県大和郡山市のご出身。その縁とおそらくは使命感から、ここ1、2年故郷の古事記関連事業にいくつも取り組んでこられました。この『ひーるべる』は、まさしくその掉尾を飾る渾身の力作。生と死、善と悪、秩序と混沌・・・いくつもの要素が絡み合うドラマが、古事記の世界をベースに壮大に、そして笑いを交えつつ描かれることでしょう■何てったって、最後にヒルコを持ってくるところがさすが松村さんじゃないですか。イザナギとイザナミの間に生まれた最初の子。しかし葦舟に載せられ流されてしまった不幸な子・ヒルコ■日本神話のダークサイドが、劇作家の魂をどう動かしたのか?是非劇場で確かめてください!(艦長)

カムカムミニキーナ 『ひーるべる』  作・演出 松村武

ひーるべる表.JPG11月 17日(土)    14:00    19:00

     18日(日)     14:00               

※各回、終演後おまけトークショーあり

※当日券は、開演1時間前から発売

映画「演劇」

■ただ今16時過ぎ。第一回どんかぶり演劇祭参加作品(?)、sunday『グルリル』、初日マチネを拝見しました。量子力学のような演劇です。何を云っているか判らなければ、観るべし!この後は伊丹のアイ・ホールで2作品目、kitt『梢をタコと読むなよ』を拝見しに行かなければならないので、急ぎます。

■『勝手に衝撃作品紹介』のコーナー、最後は、想田和弘監督作品・観察映画第3弾『演劇1』、第4弾『演劇2』(いずれも公開中)です。想田監督と観察映画については、3年前の夏のこのブログをご参照ください。

■いやーなかなか上手くまとまっておりますが(笑)、つまり、『観察映画』とは、予断と予定調和を最大限に廃し、対象のあるがままの姿を観察するように作られたドキュメンタリー。分かりやすい特徴としては、「字幕なし」「ナレーションなし」「音楽なし」の三無主義です。第1作『選挙』の観察対象が日本のドブ板選挙、第2作『精神』が精神科の医院に通う人々■そして3年前、私が期待を込めて記していた第3作、平田オリザさんと青年団の観察記録が、ついに先日劇場公開されたのです。『演劇1』、『演劇2』と二部作となって、合計なんと5時間42分!■短い休憩を挟んで一気見しました。あちこちで感想を目にしますが、これが全く長く感じません。あっという間なんです、ほんと■ざっくり云うと、『1』が、青年団と、その主宰であり座付作家・演出家である平田さんの活動。『2』が、劇団と劇場の経営者として、また、著書『芸術立国論』に象徴される、文化活動家としての平田さんの奮戦記です。どちらも驚愕の面白さです■これは別に私が演劇ファンだからでは面白いのではありません。こんな頭脳明晰でヘンテコでしかも強い人はいない(この『強い』が重要で、芸術家としては稀有なところです)。そのキャラクターの強烈さが感動的なのです■無論、6時間近くにわたって描写される個々のディテールも無類に面白い。青年団の独特の稽古風景、おそらく日本映画・テレビ史上最も長い時間にわたって描かれる地方公演の仕込作業、仕事をダブルブッキングしてしまった劇団員への叱責、政権奪取直前でイケイケの民主党幹部議員たちとの会食、地方自治体の首長との噛み合わない会話、フランス人とのギャラ交渉・・・。結局作品のキモは平田さんの底知れぬエネルギーに帰結するわけですが、国を動かすような戦略から、自分の小さな劇団の雑用まで、すべてに同じ情熱を注ぐ姿に圧倒されるのです■平田オリザを好きな人も嫌いな人も、すべての演劇関係者が、いや、何らかの芸術について少しでも興味のあるすべての人が観るべき映画だと思いました。いずれDVDになるのだとは思いますが、是非とも劇場で■何といっても、映画『演劇1』そして『演劇2』なのですから(艦長)

 

公開稽古、そして

■明日初日を迎えるsunday『グルリル』、まもなく公開リハーサルの開始です。twitter、facebook、blogなどのアカウントを持っている人限定50人に向けての公開で、終了後、その皆さんによって、あちこちのSNSに感想が書き込まれるはず。行こうかどうしようか迷い中の人は、特に注目です!

さて、『勝手に衝撃作品紹介』のコーナー、昨日の『もしイタ』に続いては・・・

■先日閉幕した『KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭2012』の参加作品、東京の演劇集団・ポツドールの『夢の城』という作品です■三浦大輔さんが主宰するポツドールは、あるコミュニティに生活する若者たちのリアルな姿をドキュメンタリー風に描くのが特徴。性や差別など、普段私たちが隠蔽しがちな行為や情念も否応なく前景として登場します。つまり、生々しい。エグい。実は僕、ポツドールの作品はこれまで映像でしか観たことがなく、生の舞台を拝見するのは今回が初めて。覚悟はしていたのですが、『夢の城』(R18)の前に、そんな生やさしい覚悟は簡単に打ち砕かれました■舞台はおそらく東京のアパートの1室。見るからにサイテーな感じの若い男女8人が、共同生活を営んでいます。この部屋の24時間を定点観測するというスタイルの劇なのですが、舞台上では8人の俳優が、ここに記すのも憚られるような行為(主に『AVかよ!?』といいたくなるような)を延々と続けるのです。無論演技ではあるのですが、ギリギリです。いや、一線を踏み越えているような気もします。第1場(深夜2時)は、舞台前面にガラスがあり、観客はバルコニー側からガラス越しに彼らの生態を覗き見するようになっていて、つまり「夜の動物園」なのだと思います。登場人物が、全編80分を通じて、喘ぎ声以外言葉と云えるものを一切発しないことからもそう思います■もうどうしようもなく露悪的な劇で、人によっては耐えられない不快感を催すはずです。なのに・・・我慢してじっと観ていると、不思議に彼らの姿が美しく見える瞬間がある。切なく、神々しいというか・・・。『あーやっぱりみんな人間なんだ。喜びも、悲しみも、抱えながら生きているんだ』・・・そう思わせるディテールの描写が実に巧みなのです■でも役者さんはすごくすごく大変。「東京で演劇やる!」と家を飛び出した子供の姿をこっそり確かめに来た田舎の親御さんがこれを観たら、間違いなく卒倒すると思います。この作品が、廃校とはいえ小学校の講堂(京都・木屋町の元・立誠小)で上演されたというのもすごいです。先生も卒倒だなあ・・・■ポツドール『夢の城』、まもなく場所を東京芸術劇場に移し、『FESTIVAL/TOKYO12』に参加です。『非常に高度な問題作』ですね、間違いなく。

■さて、もうひとつ、ベン・アフレック監督・主演の映画『アルゴ』■これは、誰でも間違いなく楽しめる娯楽作品です。1979年に起きたイランのアメリカ大使館人質事件。このとき、密かに脱出してカナダ大使館にかくまわれていた6人の職員をCIAが救出するという実話を基にしているのですが・・・■人質救出のプロが考えたのが、架空のハリウッド大作SF映画の企画をでっち上げ、6人をそのロケハンにやってきたスタッフに偽装させ、出国させようという作戦。もう2時間ハラハラドキドキしっぱなしの快作です。この作戦には、ハリウッドのベテラン映画プロデューサーと、オスカー受賞の特殊メイクアーティストが実際に重要な後方支援を果たしていて、作品内でも、この大御所2人の活躍振りがとてもかっこいい。つまり、この作品、映画讃歌、ハリウッド讃歌でもあるのです■とある映画評論家さんの受け売りですが、毎年この時期になるとアカデミー賞狙いの作品が多数公開される。賞の投票権を持っているのはハリウッドの業界関係者ですが、自分たちの世界を上手に描いた作品に対してはどうしても評価が高くなる。前回のアカデミー賞で共に5部門を獲得した『アーティスト』と『ヒューゴの不思議な発明』、確かにどちらも"映画についての映画"でした。とすれば、映画界の職人たちの活躍が痛快に描かれた『ラルゴ』、今年の有力候補かもしれません。いやまあそんなことは関係なく、実に面白い作品です■また長くなりました。『演劇1』、『演劇2』については次回に(艦長)

というわけで今週はsunday

グルリル.jpg■一体誰が元締めなのか?果たして2回目はあるのか?謎は深まるばかりですが、いよいよ『どんかぶり演劇祭』、スタートです!昨日のブログに丁寧なハシゴ観劇ガイドがありますので、是非参考になさってください。大阪ではライオンキングもやってますけど、小さな芝居もいいもんです。僕は・・・3つ、かな?■ABCホールではsundayさんの仕込みが先ほどから始まっております。初日は金曜!

 

 sunday 『グルリル』 作/演出・ウォーリー木下

11月 9日(金) 14:00  19:00

    10日(土) 13:00  18:00

    11日(日) 16:00  

 

さて、さすが芸術の秋と云うべきか、ここ半月ほどの間にすごいものをいくつか観たので勝手にご紹介します(関西のカンパニーの舞台作品は除きますね)。

■青森中央高校演劇部 『もしイタ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら』

■ポツドール 『夢の城』(KYOTO EXPERIMENT参加作品。木屋町の元・立誠小学校講堂にて)

■ベン・アフレック監督・主演 『アルゴ』(MOVIX京都にて)

■想田和弘監督 『演劇1』、『演劇2』(十三・第七藝術劇場にて)

 

『もしイタ』は、平成24年度全国高等学校総合文化祭演劇部門で最優秀賞を受賞した作品で、9月にNHK-BSプレミアムで放送され、家で録画していたのをやっと鑑賞したものです。高校演劇というと、あの独特の(?)「演劇部口調」が鼻について敬遠する、なんていう人が多いような気がしますが、優秀なところはやはりすごいです■弱小野球部のマネージャーがコーチとして呼んできたのが何とイタコのオバサン。彼女が、悲運の名投手・沢村栄治の魂を呼び寄せる、とうのがお話の発端。沢村が憑依することによって剛速球を手にした転校生のエースが大活躍し、チームの甲子園出場が目前に!しかし・・・という、題名からわかるとおり、パロディたっぷりの学園スポーツコメディです。しかし後半、次第に物語の背景に戦争と震災が浮かび上がります。理不尽な死への憤りと生き残った者の苦悩・・・。そして最後に、『生かされた者が真っ当に生きることによってのみ、生者も死者も共に救済されうるのだ』、という希望が提示されるのです■決してお涙頂戴でも説教臭くもなく、それでいて笑いの果てに滂沱の涙を誘う傑作でした。さらにすごいのは、衣装は全員稽古着風のジャージ姿、大道具はなし、照明は地明かりのみ、音楽や効果音は、その場面に出ていない出演者たちが歌ったりハミングしたり叫んだりして出す、という演出です。これは実は、青森中央高校演劇部員が、東日本大震災の被災地を始めとする全国各地を訪問して、どこでもすぐにこの劇を演じられるための工夫でもあるのです。あっぱれ!■この『もしイタ』、作者は演劇部顧問の先生なのですが、ネットを引いてみてプロの劇作家でもあることを知りました。それもただの作家ではない。劇団昴や劇団民藝など名だたる劇団に戯曲を提供されているだけでなく、ラジオドラマの脚本家として、文化庁芸術祭大賞、放送批評懇談会ギャラクシー大賞最優秀賞、民間放送連盟賞最優秀賞ほか、べらぼうな賞獲り男であることが判明しました。高校演劇日本一も今年で3回目です。畑澤聖悟さん。すごい先生が青森にいたもんです■長くなりました。あとの作品はまた後日(艦長)

初日!

けーさつ.jpgスクエア Vol.31『けーさつ』、本日初日です■2000年に扇町ミュージアムスクエアで初演、2005年にワッハ上方ホールで再演、今回で三演目。まさにスクエアの代表作といえる傑作コメディです。過去に上演場所となった2つの劇場が共に無くなってしまっているところに、演劇関係者にとって大変な関西の現状が象徴されているようですが...うーん、だからABCホールは粛々と頑張るっきゃないわけですね。

■さて、このABCホールは元々TVスタジオとしても使われるオープンな空間なので、古典的な劇場にあるようなプロセニアムアーチ、つまり客席から見て舞台を額縁のように仕切る構造物はありません。実はこのプロセニアムアーチというやつ、古来より演劇のあり方に大きな影響を及ぼしています。つまり・・・■幾人かの人間がある限定された空間で喋ったり動いたりしている。その空間を取り囲む前後左右4枚の壁を想定し、そのうち手前の1枚をこっそり取り払ってそこから登場人物たちの言動をのぞき見る。これこそが、演劇と観客の関係だ、というまあ古典的な考え方があるわけですが、プロセニアムアーチは、視覚的にこの考え方を補強する存在となっています。つまり、取り払われた壁の縁というわけですね■近年、観客の参加や舞台と客席の相互作用などが重要視される流れの中で、この『第四の壁』は、保守的でどちらかといえば古い考え方になりつつあります。しかし我々素人には非常に分かりやすい説明だし、演劇における『リアル』を追究する上で一定の説得力を持ち続けているのも事実です■さて、生半可な知識を何故長々書き連ねてきたかというと、今回の『けーさつ』、ABCホールの舞台に見事な額縁が構築されているからなんです。舞台の設定は小学校の教室です。ここで学校職員と警官たちのめちゃくちゃ面白いあれやこれやが展開するわけです。ホールの間口を一杯に使い、黒板を正面に配したリアルな教室の舞台装置が組まれています。そしてそれを囲むように構築された舞台前面の梁が、見事なプロセニアム効果を生み出しているのです(舞台美術:柴田隆弘)。なんというか、これからここで起こるであろう出来事をのぞき見られる喜びにワクワクしてしまうんですね。さっき客席に行ってみて僕はそう感じました■この感じ、学校の教室という場所の特質とも関係しているのかもしれません。誰もが子供の頃をそこで過ごし、空間の構造は容易にイメージできる(こちらの窓の外は校庭、こちらは廊下、その先に職員室があって...みたいに)。しかし、校内の不祥事を隠蔽しようとする体質がしばしば露見することからも感じられるように、学校という場所、外部の人間にとっては案外密室性が強いと思いませんか?懐かしく、けれどある種不可侵な空気が漂う空間。そこでお巡りさんたちが繰り広げる喜劇。考えてみれば、警察というところも我々には謎に満ちた組織です■そんなわけでスクエア『けーさつ』、のぞき見る楽しみは膨らむばかりなのです(艦長)

スクエア Vol.31 『けーさつ』  作:森澤匡晴  演出:上田一軒  音楽:サキタハジメ

 10月  26日(金)       19:00☆   ☆初日割引

      27日(土)  14:00 19:00

      28日(日)  13:00 17:00

 

直前予約情報はコチラ!

 

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