インフォメーション
■いやはや押し詰まって参りました。当ホール、いよいよ2014年の最後の催し、劇団赤鬼『最果てクロニクル』が、明日初日を迎えます■...ある時代の、ある国の、北の果ての小さな町。断崖に囲まれたこの町とこの国の他の地域とを結ぶ、たったひとつの交通機関である鉄道が、廃止されることになった。今まさに、町の唯一の出入り口であるトンネルを通って、最後の列車が駅に到着した。この列車が3日後に出発してしまうと、もう二度とやっては来ない...そんなところからこの物語は始まります■普通なら町の人たちは大騒ぎをするはず。だって、これで町は世界から完全に孤立してしまうのですから。でもみんな一見至って平静、そして陽気です。どこか達観しているようにも見える■最後の列車から降り立った人たちもまた謎めいています。取材にやってきたという記者。生き別れになった父を捜しすために列車に忍び込んだ少女。永らく列車の運行に携わってきた運転士のとる行動も、今日は不可解です■最果ての町で個性豊かな人々が繰り広げる、ギャグ満載の楽しいお芝居の中で、人々と、この町の歴史にまつわるいくつかの謎が次第に大きく膨らみます。そしてついにそれら全てが明らかになり、物語は切なくも心温まる結末を迎えます。劇団赤鬼お得意の、コメディと、ファンタジーと、ミステリーを、大きな愛でくるんだ作品、『最果てクロニクル』■一年の締めくくりにぴったりですので是非是非!(艦長)
12月26日(金) 15:00 19:00
27日(土) 13:00 17:00
28日(日) 13:00
※当日券は全ステージ発売されます(12/28千秋楽は前売完売のため若干枚)
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- 2014年12月25日木曜日
■イキウメ『新しい祝日』、ただいま仕込中で、明日大阪公演初日です。イキウメさんのABCホールでの公演は2011年から毎年2回、はや8回目となります■平凡な登場人物の一見何気ない日常を描きながら、いつのまにか観客をSF的異世界に引き込んでしまう劇団代表・前川知大さんの作劇。今回の『新しい祝日』では、オフィスで残業中の男の前に道化が現れ、彼を自分の人生の過去のいくつもの場面に誘う・・・のだそうです。それにしても、道化っていうのが斬新ですよね。これほど明確な非日常性の記号をまとったキャラクターが、「過去への旅」への案内人であるという、一見ど真ん中ストレートな感じ。果たしてどんな心地よい裏切りが待ち構えているのでしょうか?■それと、小学校時代の場面でポートボールが登場するのだとか。懐かしいなあ、バスケットボールに似た競技で、ゴールの代わりに、台の上に乗ったチームメイトがシュートをキャッチする、日本独自のあの学校スポーツです。体育の授業でやったなあ、人間関係出るんだよなあ、不思議な競技だったなあ・・・■それはともかくイキウメ『新しい祝日』、楽しみです(艦長)
イキウメ 『新しい祝日』 作・演出 前川知大
12月19日(金) 19:00
20日(土) 13:00 18:00
21日(日) 13:00
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- 2014年12月18日木曜日
■ご無沙汰しております艦長です■カムカムミニキーナさんの『G海峡』が終わって、とうとう世界は師走に突入しました。それからちょっと会社の催しがあって、ABCホール初登場の劇団空組さんの大ネタ『ロミオ&ジュリエット』も終わり、すでに夜の街はイルミネーションやらプロジェクションマッピングやらでキラキラしております。大っきらいです年末なんか■子供の頃の、12月後半からお正月3が日までのワクワクした感じが懐かしい。ジングルベルが流れる街、大したものじゃなくてもプレゼントは嬉しかったし、餅つきの手伝いもしたし、紅白歌合戦が終わって「ゆく年くる年」の中継映像に切り替わった瞬間の静謐に心が引き締まり、めでたく新年を迎えるともちろんお年玉、白味噌の雑煮、級友から来た年賀状、凧揚げ独楽廻しカルタ取りもしっかりやり、親戚が集まった酒宴に首を突っ込んで夜更かしして・・・ああ。じゃあ、もう一度少年時代に戻って人生やり直す?って聞かれたら、それはそれでアレなんですけどね。面倒くさいこと、それから一杯あったからなあ・・・■情緒不安定ですねどうも私。1956年・丙申の年に生まれ、干支は巡って来年は乙未、再来年2016年がついに丙申、つまり還暦なんすねー。どうよ。「少年の心を失わない」、「永遠のモラトリアム」なんてふざけて自称してきた人生ですが、ほどがあります■なんでこんな気分なのか?今日から始まるお芝居の影響かもしれません。こちらも当ホール初お目見え、大阪の新劇界を支えてきた老舗の劇団、関西芸術座さんの『電光仮面~最後の戦い~』です■元祖「テレビっ子世代」の私ですが、最初に夢中になったのが、「ローン・レンジャー」、「ララミー牧場」、「ルーシーショー」といったアメリカ製の吹き替えドラマ、国産では「少年ジェット」、「白馬童子」、そしてなんといっても「月光仮面」(当時からひねくれものの私は実は、明らかに月光仮面を模倣したと思われる「七色仮面」の方をより好んではいたのですが)。衛星放送の発達のおかげで、最近、当時の作品を鑑賞する機会も結構あるのですが、世界征服を企む悪者と主人公が、東京郊外の雑木林や横丁で地味に追いかけっこや拳銃の撃ち合いをしていたりして、なんとも牧歌的。幼い頃の美しい記憶を壊さないためには見ない方がよかった、なんて。「スーパージャイアンツ」における超二枚目・宇津井健さんのモッコリタイツ姿、なんて「テレビ探偵団」的定番ネタもありますしね■さて。≪大阪の片隅でひっそり余生を送るかつてのヒーロー・電光仮面。そこに、最後の決戦を挑んで宿敵・ブラックキングが現れる!≫という今回のお芝居、前売り券は全ステージ完売、当日キャンセル待ちという人気です■あ、そうそう、先ほどABCホール前のリバーデッキに、お馴染み ラバーダックのレプリカちゃんたちがやって来ました。『中之島ウォーターファンタジア』がいよいよ来週開幕というわけで、この界隈もクリスマスムードが高まってきております(ま、若い人はいいやね)■『電光仮面』のチケットゲットのお約束は出来ませんが、よろしければその雰囲気を味わいがてら是非お越しください!(艦長)
関西芸術座 『電光仮面~最後の戦い~』 作・山本雄史 演出・松本昇三
12月12日(金) 19:00A
13日(土) 11:00B 15:00A 19:00B
14日(日) 11:00A 15:00B
※A班・B班の2組による交互上演(キャスト詳細はコチラ)
※全席完売 (キャンセルが出た場合のみ当日券発売)
※受付開始は開演1時間前より
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- 2014年12月12日金曜日
■カムカムミニキーナさん、今朝小屋入りされ、明日土曜日『G海峡』初日です■Gと書いて「ギガ」と読みます。つまり、タイトルの元ネタは水上勉・作の小説「飢餓海峡」ですね。1965年に公開された、内田吐夢監督の映画版が有名です。まずちょっとこの映画の設定をお話しすると・・・■太平洋戦争が終わって間もない頃。北海道・函館港の沖で、青函連絡船の遭難事故が起こります。救難活動で海上はパニック。多くの水死体が引き揚げられる中、乗船名簿に載っていない2人の男性の遺体が見つかります。どうやら彼らは、事故の直前に北海道の小さな町で起きた強盗殺人放火事件の犯人らしい。しかし調べによると犯人は3人組。では残る1人は一体どこに消えた?そして奪われた大金は・・・?■行方をくらました謎の男を演じるのが三國連太郎さん。一生をかけて彼を追い詰める刑事が、伴淳三郎さん。舞台は、北海道から津軽海峡を越え東京、そして京都・舞鶴へ。戦後の貧困の中から必死に這い上がろうとする人間たちの姿が、重厚なミステリーの中に浮かび上がります ■松村武・作/演出の『G(ギガ)海峡』でも、物語は、青函連絡船の遭難事故で不可解な遺体が発見されるところから始まります。しかしそこを発端に描かれるのは、1万年という時間、そして日本列島と遥か南北アメリカ大陸を縦横無尽に行き来する壮大なストーリーです■ものすごーくざっくり説明すると、今から約1万年前の縄文時代、日本列島に暮らしていた人々の『心』が、ベーリング海峡を伝って太平洋を越え、アメリカ先住民に引き継がれた。ひいては合衆国建国の精神に影響を与え、果ては太平洋をぐるり一周して戦後の日本に通じていると、そんなお話。これこそまさに『心のTPP(Trans Pacific Partnership)』だと云えるような・・・。どんな『心』(精神)なのかは、是非実際に作品を観て確かめていただきたいと思います■とはいえ、「連絡船の海難事故からどうしてそんな話になるねん!?」と、確かに、突然文章でこんな説明をされても戸惑うばかりかしれません。でも、そんな飛躍をエンターテインメントに昇華させ得ることこそが、まさに「演劇の魅力」だと思うのです■演劇の可能性を追求する男・松村武さんの書かれるカムカムミニキーナの作品はここ数年、日本の古代史を題材にしたものが続いていました。今回はついに、文字で書かれた「歴史」が生まれるずっと前、太古の日本が物語の出発点です。相変わらず、物語の要素は複雑、展開はスピーディで手強い。登場人物も、馬と人との間に生まれた青年、シリコンバレーのセレブリティ、恐山のイタコ、縄文の村の青年、インディオの脱走兵、場末のスナックのママ・・・とまあ多彩です■劇団の看板俳優・八嶋智人さんは、今回、殺人事件の捜査に人生を捧げる老刑事の役。映画「飢餓海峡」の伴淳さんを彷彿とさせる東北訛りの渋い演技がたまりません。そしてもうひとつ見逃せないのは、作品のモチーフのひとつである『縄』を使った劇中の数々の視覚的パフォーマンス■とにかく見所が多過ぎて、その果てにとても前向きなメッセージがズシンと伝わってきます。1万年の時と太平洋を巡る壮大な歴史ミステリー、(土)(日)たった3ステです。どうぞお見逃しなく(艦長)
カムカムミニキーナ 『G(ギガ)海峡 ~禍福はあざなえる縄のごとし~』
11月29日(土) 13:00 18:00
30日(日) 14:00
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- 2014年11月28日金曜日
ご無沙汰しております。
今日は「エミちゃん祭り2014」です。牧野エミさんが天国に旅立って今日でまる2年。3回忌ですね。ABCホールにはゆかりの人々が続々集結中。さて、どんな会になりますことやら。楽しみです。
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- 2014年11月17日月曜日
■玉造小劇店配給芝居『おもてなし』、今日初日です■いつもながら、ここのお芝居はまず衣裳が素敵!レトロな風合いのお着物がほんとにたくさん、楽屋周りに広げられています。そのあたりを徘徊するだけで、気分は大正時代の大阪にタイムスリップするかのようです。今回の舞台は新作『おもてなし』。お花見、お正月、お見合、お祝い・・・と、主宰・わかぎゑふさんが書かれる≪大阪弁で、タイトルに"お"がつくお芝居のシリーズ≫もなんと11作目です■『おもてなし』と聞くと、どうしても昨年の流行語大賞『お・も・て・な・し』を連想してしまうのですが、作者によりますと、「今回の作品は文化庁芸術祭に参加するため、あの滝川クリステルさんのパフォーマンスよりずっと前にお役所にこの題名を提出していたのに・・・便乗だと誤解されそうで悔しいっ!」とのこと。ご本人からは云いにくい話だと思いますので、ここでご紹介しておきます■大正末期から昭和初年にかけては、関東大震災(1923・T12)で東京が大打撃を受けたこともあって、大阪が産業経済の面で大発展し、活気溢れる『大大阪』と呼ばれた時代でした。そんな中で、拝金主義を排し、『始末』と『おもてなし』の精神で生きた船場商人のお話だそうです。本日10/30(木)から三連休を挟んで11/4(火)まで。ぜひABCホールでその心意気に触れてみてください(艦長)
玉造小劇店 配給芝居vol.15 文化庁芸術祭参加作品『おもてなし』 作・演出 わかぎゑふ
10月30日(木) 19:00
31日(金) 19:00
11月 1日(土) 14:00 18:00
2日(日) 14:00
3日(祝) 14:00
4日(火) 19:00
※上演時間・約2時間
※当日券は開演1時間前から発売
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- 2014年10月30日木曜日
■『エミちゃん祭り』が、今年もABCホールで開催されます■2012年の11月17日、関西演劇界の看板女優だった牧野エミさんが天国に旅立たれました。あれから早2年。去年の11月18日には、演劇界の仲間たち、亡くなる直前まで出演していたABCラジオの仲間たち・・・エミさんを慕う本当にたくさんの人たちがABCホールに集まって、賑やかに思い出話を繰り広げました■昼と夜の2回公演だったのですが、間の休憩タイムに、楽屋にあった差し入れのビールがかなり消費されたのが引き金で・・・。夜の部のエミちゃんクイズコーナーでは、進行役の某演劇人が暴走、ベテランお笑い芸人もタジタジとなるハチャメチャな展開となりました。でも楽しかったなー。きっと天国のエミさんも楽しんでくれはったでしょう■その点を反省して、(では決してないと信じますが)、今年は夜の1回です。前回は舞台の映像が紹介されましたが、今回は超懐かしいテレビ番組の映像が見られるという噂です。出演者はこれからどんどん増えてくると思います。そう、エミさんが大好きだったあの世界から、アッと驚くあの人も!?■入場無料は変わりませんが、事前予約制になりました。絶対行きたい、という方はお早めに!(艦長)
2014年11月17日(月)
◎入場無料・予約制
■受付開始18:00(整理券配布)
■開場18:30
■開演19:00
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- 2014年10月17日金曜日
■伊藤えん魔プロデュース「百鬼繚乱」、あす初日です。
■百鬼、と聞くとどうしても僕が思い出してしまうのは、手塚治虫さんの『どろろ』という漫画です■テレビアニメ化もされましたが、正直云って人気作品、代表作品、というわけではありません。雑誌連載は1967~8年。50年代から60年代前半に、「鉄腕アトム」、「ジャングル大帝」、「リボンの騎士」などで一世を風靡した手塚さんが、漫画やアニメ制作の大きなプロダクションを立ち上げた後、経営者としてもクリエイターとしても苦しんでおられた時代。膨大な赤字と、学生運動の盛り上がりと共にやってきた劇画ブームの中で、「手塚漫画はもう古い」などという声も上がり始めた頃の作品です■その後70年代に入って手塚さんは、「ブラック・ジャック」、「三つ目がとおる」、「ブッダ」などのヒット作を連発、人気面でも完全復活し、誰もが『漫画の神様』と認める偉大な存在になってゆかれます。しかし60年代後半のこの時期の作品は、「バンパイヤ」、「どろろ」と、魑魅魍魎が跋扈するおどろおどろしい作品が続きました。人気も低迷気味で、少年漫画としてはさすがに暗すぎる内容が主な原因だったと思います。なにせ「バンパイヤ」では、手塚治虫本人のキャラクターが作品に登場し、冷酷無比な悪漢・ロックに谷底に突き落とされてしまったりするのです。シャレではなく、作者の苦悩がストレートに滲み出たような展開でした(ちなみにテレビ版は実写ドラマがベースで、変身したオオカミだけがアニメーションで合成されるという大胆な技法で作られています。手塚役はやけっぱちなのかご本人が演じ、主人公・トビオ役にはなんと!後にテレビ朝日系列の大恩人となる新人・水谷豊さんが抜擢されているというのも見どころです)■中世の日本を舞台とする『どろろ』も、同様に妖しく暗い作品。主人公・百鬼丸が魔物たちと戦い続け、ひとつ倒すごとに、自分の肉体の欠けていた部位をひとつずつ取り戻していく、というお話です。盗人の少年・どろろが彼の相棒として活躍しますが、とても彼一人の陽気さで補えるほどのダークネスではありません。しかし僕個人としては、少年週刊誌を読んでいた最後の時期の作品でもあり、思春期に向かうモヤモヤとした自我とシンクロして、とても印象深い作品だったと記憶します■というわけで、えん魔氏が(!)創造した百鬼たち、明日からABCホールで暴れ回ります(艦長)
11日(土) 14:00 ★ 19:00
12日(日)13:00 ★ 18:00
13日(祝)13:00 ★ 18:00
★・・・恒例のトークショウ「500円えん魔ちゃん」・(土)は17時~18時、(日)(祝)は16時~17時
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- 2014年10月09日木曜日
■劇団しし座「中空(ちゅうくう)のマリオネット」、今日初日です。しし座さんは当ホール初登場、ベテランから若手まで幅広い年齢層の俳優陣を擁した新劇の劇団です■作品は、誰しも教科書などで触れた記憶があるはずの、芥川龍之介の児童文学作品「蜘蛛の糸」の後日譚、あるいはアナザーストーリーといった感じでしょうか。罪びとと、クモと、お釈迦様のお話。小劇場としてはタッパ(高さ)のあるABCホールの舞台奥に、背の高いやぐらが組まれ、二重構造の舞台装置が出来上がっています。聖と俗、あるいは極楽と地獄、の象徴ですね■洋の東西を問わず、人は高い所に聖なるものを感じます。日本の山岳信仰もその例。先日突然噴火した御嶽山は、中でも数多くの善男善女が訪れる代表的な御神体です。痛ましい災害が起きた直後にこのように客観視して語ることをお許しいただくならば、時として理不尽に怒りを剥き出しにするからこそ、人はきっと「高み」に対して畏怖と崇敬の念を抱き続けているのです■「中空のマリオネット」、まもなくです。
4日(土)14:00 18:30
5日(日)14:00
※当日券は開演50分前より発売
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- 2014年10月03日金曜日
■N-Trance Fishの皆さん、昨日小屋入りされ、明日初日です■今回の作品は『KISOU本能』。帰巣、じゃないところがミソです。ずっと昔学校で習ったのですが、本能とは誰から教わることも学習することもなく、生物が生まれながらにして持っている行動様式、みたいなもの(たしか)。日常会話でよく、「あのオッサン、生理的に受け付けへん。本能的に避けてまうわ~!」なんて使ったりしますね。自分が言われているようなうすら寒さが漂ってきましたが、これは厳密には誤用。そういうのは生理でも本能でもなく、話し手である女性の過去の何らかの経験や学習に基づいた感覚であるはずです(い、いったい俺が何をしたっていうんだ!?)■「本能」っていうのは、例えば赤ちゃんが誰から教わることもなくお母さんのおっぱいを吸う、とか、それ以前に、母体から産まれ出た直後から、それまでしたこともなかった肺呼吸を始める、とかそういうもの。これらの「本能」が結集することによって、全ての生命体には、自分自身のよりよき生、自分の子孫の繁栄を目指すシステムが出来上がっています。しかし世界中で唯一、このシステムが時折エラーを起こす種、つまり、生きることにネガティブになる種がある。人間ですね■ここにそんな人間が一人いるとします。しかし、彼の肉体を構成する器官のひとつひとつ、あるいは細胞の一個一個はそんなことは夢にも知らない。いつでも必死に生きようとしているはず。生物学では、細胞内で生命現象の根幹をつかさどるミトコンドリアや葉緑体という器官のルーツを探ると、太古独立した生命だった細菌が、細胞内に侵入・共生したものにたどり着く、という説があるそうです。共生の結果地上の生物が酸素呼吸や光合成を獲得し、繁栄を遂げた、と。この考えを敷衍すれば、一人の人間という個体は、多くの器官や、バクテリアや、ひょっとすると寄生虫までも含めた「者」たちの共生体といえるかもしれない■『KISOU本能』は、そんな世界観の物語。壊れかけた人間と、彼を形作る者たちの葛藤のオムニバスです。肝臓のことを「沈黙の臓器」と云いますが、肝臓に限らず全ての器官は本来寡黙です。言葉を持たない多くの「者」たちが、己の体を使って持ち主に対して叫びかけます。これは、ダンスという表現に実にぴったりしたテーマではないですか。なるほどー、よく考えられている!ところがN-Trance Fishはそれでは終わらない。登場人物(?)の中に、めっちゃお喋りなキャラが2名配されていたりするのです。しかもそれを、バリバリの関西弁で役者が演じます。そんな笑える趣向も魅力のひとつ■それぞれの作品には、「器掃」、「鬼相」、「気双」、「寄騒」・・・様々な書き方で「KISOU」というタイトルが冠されています。この字の意味を解き明かしていくのも、結構楽しいし・・・ダンスのこととか全く分からない上にこんなにも理屈っぽいオッサンも惹きつけてやまないN-Trance Fish『KISOU本能』、土曜から月曜までの4ステです(艦長)
N-Trance Fish 17th Exhibition 『KISOU本能』
9月27日(土) 14:00 18:00
28日(日) 15:00
29日(月) 15:00☆
☆千秋楽スペシャルゲストあり
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- 2014年09月26日金曜日