スタッフブログ
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スタッフの雑記

YAH YAH YAH

■テレビでよしもと新喜劇を観ていたら、終幕近く、『マキザッパ』で悪者をパンパン叩きまくるシーンがありました。まだあるんだ~マキザッパ。ご存知ですかマキザッパ?■長さ数十センチ、弾力のある棒状の素材を茶色っぽくコーティングしてある、吉本独特の謎の小道具です。人を叩く時だけに使います■例えば履いているスリッパを脱いで相手の頭を叩くとか、目の前の灰皿でポコっとやるとかなら、まあ、舞台上のモノを自然に利用した芝居といえるわけですが・・・このマキザッパ、何の必然もなく、舞台の物陰にさり気なく置いていあります。そして、誰かを集団でボコボコにする段になるといつの間にかみんなが手にしている。シュールだなあ■(長らく本物を間近で見ていないので間違ってたら申し訳ないですが)芯の素材にビニールテープを巻いて作るので『巻きざっぱ』かと思っていたのですが、どうやら正しくは『薪雑把』。本来は薪にするための木切れですね。だから、木肌のイメージで茶色い。新喜劇伝統の小道具なわけですが、実はまもなく、年に一度の晴れ舞台がやってきます■そう、大晦日恒例の超人気番組『絶対に笑ってはいけない』シリーズで、笑った人のお尻を叩くのが、たしかこのマキザッパなんです。なんだか面白いなーと思いますね、温故知新というか何というか・・・■吉本で人を叩く道具としてはもうひとつ、『ハリセン』が有名です。こちらは東京発のバラエティ番組でも罰ゲームなんかに登場したりしますが、大抵"ベチャッ"と頼りない音しかしなくて全然面白くない。お店に売ってるものではないのでスタッフが作るわけですが、あれ、あまりしっかり折り目をつけるとコシがなくなって駄目なんですよね■厚紙をフワッと軽く折り曲げ、それを2枚分重ねてビニールテープで張り合わせボリュームを出す。これが正式です。ハリセン作りは、ふた昔くらい前まで大阪のテレビ局のAD修業のひとつでした。チャンバラトリオさんから直接教わったり、その伝統製法を正しく受け継ぐ先輩から教わったり。懐かしいな■あー、今から誰かを殴りに行こうか(艦長)

文化の日っぽく

2008113011170000.jpg■11月3日。64年前に憲法が公布された日ですね■日本国憲法は昭和21年11月3日に公布され、これが文化の日の由来。その半年後、昭和22年5月3日に施行され、この日が憲法記念日になりました。戦後民主主義教育の真っ只中に育ったので、こういうことは今でもスラスラ云えます。荒天の続く今年の秋ですが、今日はピーカン。たしか『晴れの特異日』ですよね、さすが■ABCホールは本日、民謡グループ『十二單』のコンサート。演劇ラッシュの中、こんな催しもやってます。

■内田樹さんの『街場のメディア論』を読みました。うー、強烈に胸を打つ、頭に響く言辞に満ちた本です。内田さんの書かれるものは、表現は平易だけれど内容は結構複雑な場合が多いと思うのですが、この本は、私自身がメディア側の人間であるせいもあるのでしょうが、ページをめくるたびに深く感じ入ることの連続でした■テレビや新聞という媒体に対しても厳しい、目からウロコな指摘がいっぱいあるのですが、僕が一番強くうなってしまった、「本」についての記述・・・

『あなたが著作権を有する本をすべて定価で買い取って、廃棄処分にしたい(誰にも読ませたくないから)』・・・この申し出を前に、一瞬でも(断ることを)逡巡する人間には物を書く資格がないと僕は思います。 ※2つ目のカッコは艦長補足

痛快~!

■この一文の中に、この本のエッセンスが詰まっていると僕は思います。つまり内田さんは、

《ひとりでも多くの人に自分の考えや感じ方を共有してもらう》こと、そしてそれが、《世界の成り立ちについての理解を深める一助になる》こと、が、本を書くことの目的であるべきだ。

と語っているのです。本作りは商品作りではない、本質的に『知の贈与』なのだ、と。この考えはもちろん全ての《表現》に広げることが可能です。

■テレビ、新聞、出版などのメディアのみならず、教育や医療までがすべて《ビジネス》として語られるようになってきました。自分たちの過失や享受した利益を忘れてひたすら学校に抗議する親が増え、行政の指導で『患者様』と呼ばれるようになった患者たちは平気で悪質なルール違反をするようになりました。つまり、お客が店に理不尽なクレームを云う感覚です■この風潮は、口当たりのよい、平易で、実用的で、刺激的で、定型的な情報ばかりが商品として垂れ流される日本のメディア界の現状と原因を一にします。つまり、あらゆる社会関係を、商品やサービスを提供する人とそれを金で買う消費者との関係でとらえてしまうという現代日本の陥穽です■文化人類学者レヴィ=ストロースが探求したコミュニケーションの起源に論は及び、この本はついに、人間の社会活動の原点として思い出すべきあるひとつの言葉にたどり着きます。それは、

『ありがとう』

・・・突然こう書いてしまうと薄っぺらい道徳論のようですが、そうではありません。内田さんがどんな思考過程を経て、この『ありがとう』にメディアの本質があると結論づけたのか、是非確かめてください。小さな新書ですが、とても重い本だと思いました■(『ビジネス』という言葉に日々悩める)艦長

 

オクレバセナガラ・・・

■先週の話になってしまいますが、スクエア『マンガマン』、面白かったです。アタマ20分(リーダーで演出の上田一軒さんに聞いたところ、カットを重ねて正確には18分)で、完全にお客の心をつかみましたね。説明的でなく、登場する5人の人間関係と物語の骨格が笑いの中で明らかになり、これからの100分の展開がものすごーく楽しみになるっていう・・・うん、素晴らしい第一場だったと思います。さすが『コメディ職人』の名前はダテではありません■しかしそれにしても、です。「マンガ家になる夢を捨てきれない男」と、「文芸担当を外されマンガ担当になったことを恥じている編集者」という二人の男がこの物語の芯になるわけなのですが、こんな設定がスッと僕たち観客の頭の中に入ってきて、彼らの喜怒哀楽にすごく素直に感情移入できてしまうっていうのは、やぱり『日本はマンガの国』ってことですよねー。ほとんどの日本人が、物心ついてから死に至るまで、好むと好まざるとに関わらずマンガという表現から逃れることは出来ません。一時の毎週600万部などという異常な発行部数の雑誌はなくなったものの、多くの出版社を経営的に支えているのはやはりマンガです■演劇が、《戯曲という文学》、《舞台・衣装などの美術》、《照明などの視覚効果》、《音楽》、《俳優の肉体表現》などを合わせた『総合芸術』だとよく言われますが、考えてみればマンガもやはり総合芸術です■《物語》と《絵》が二大要素であることはもちろんですが、様々なアングルとサイズを駆使した場面の描き方は映画のカット割りにあたり、省略と誇張によって物語を心地よく進めるコマ割りの技術はいわば音楽のリズムとテンポです。これらすべての要素が高いレベルで揃わないと、きっと人気マンガは生まれないのでしょう■・・・なんて自分で考えたように書きましたが、《マンガ=総合芸術》論は、大昔、僕が中学に入った頃に読んだ名著『マンガ家入門』で、石森(後に石ノ森)章太郎先生が書かれていたのを覚えていたんです。もう40年以上も前に書かれた、本当に素敵な本です。石ノ森先生が自身の半生を語りつつ、自作の制作過程を詳細に解説するという本なのですが、当時マンガ家に憧れていた少年少女は全員読んだんじゃないでしょうか?中でも、『龍神沼』というファンタジー作品の構成を1コマごとに解き明かすくだりの素晴らしさは、『マンガってこんなに緻密に作られてるんだ!』という驚きに満ちて、ファンの間では伝説化されていますよね■以後、マンガ論やマンガ入門書は星の数ほど出されてきたわけですが、もうひとつ、今回のスクエアの皆さんもきっと読んでおられるに違いない本を思い出しました。相原コージ・竹熊健太郎による『サルでも描けるまんが教室』!・・・これも僕の愛蔵書です。これは純粋なハウツー本ではなく、マンガ家と編集者が人気マンガを生み出すために共闘するというギャグマンガ。まさに『マンガマン』の世界です。あくまでマンガ作品ではあるのですが、物語の中で、作品作りの様々なテクニックや当時の業界事情を語るという、いわば《メタマンガ》の傑作です。面白いよー。

スクエア『マンガマン』、あす28日から東京公演です。大阪で見逃した方、ぜひぜひ!(艦長)

飛んだ

■今日これから、ホールでは秘密の集会が行われようとしています■何やら楽屋も異様な雰囲気です。アジア各国から、日本各地から、大勢の人が集まっているようです。秘密なので、ここで中身を書くわけにはいきません。実は僕もよく分かっていないのです。ただ、すごいらしいです、まもなく舞台に立つ人のパワーとか魅力とか。多分、覆面をしていたり空中浮遊したりするわけではないと思いますので、ご安心ください■事後になりますけど、明日以降できたら説明しますね。

■先日チラっと書きましたが、一昨日の日曜日、リレーに出たんですよ。案の定、怪我しました■スタートして20m、カーブで足がもつれ、一瞬、『空、飛んでるんちゃうか!?』という時間があって、その後スローモーションみたいに感じながら見事に転びました。お蔭でチームは下位に沈みました。自分のエラーで甲子園に行けなくなった高校球児の心境です。とほほ■まあこけたのとか、結構派手な擦り傷作ったのとかはいいんです。青春の勲章ですわ。ただ、アンカーの小学生(すごく速い子)に慰められたのがツラい。応援席のやさしいおばあさんと目が合う度に『怪我、どうもないですか?』と聞かれるのがツラい。僕からバトンを受けたスポーツ大好き主婦から『頑張った頑張った!』と笑顔で言われるのがツラい。人の慰めがこれほどこたえるなんて・・・ほんと、体の傷より心の傷ですわ■まあ、まだファイティングスピリットを失っていないってことかなあ・・・

■さて、美津乃あわ二人芝居『レス』、まもなく先行予約受付が始まります! レス1.jpg■あのチラシのビジュアル、すごい!とアチコチから耳にしますが、中身もそれに負けないものになります。これまでの『関西を代表する怪女優』という美津乃あわ像を一度ぶち壊し、よりスケール大きく再構築したい!ティッシュペーパーの海に埋もれて、それでもまだ取り出さざるをえない女の業、みたいなものを4人の共演者と共に描くオムニバスです。ご期待ください!(満身創痍の艦長)

本日初日、そして

劇団天悟『朝霧のうた きくはきえにし』、本日初日です!(当日券は開演45分前より発売)

■うーん、天悟さん、去年もここABCホールで公演されているのですが、何故か私の記憶にない。どうしてだろう?・・・ボケが始まってるよなあと悩んでしたのですが、やっと疑問が氷解しました。私事ですが、昨年12月に天悟さんが公演された同じ週、私、お休みをいただいて大阪市内某所で課外活動をしていたのですね。完全なすれ違い。しかも課外活動というのは演劇だったりして・・・申し訳ありません!!■申し訳ないついでに私事が続きますが、私あさって地域の運動会でリレーに出場する羽目になってしまいました。町内対抗で50代から小学生までの男女がバトンをつなぐっていう・・・。私の担当はわずか50mですが・・・どうしよ。恥ずかしながら小学生の頃から運動音痴でならしてまして、競走は必ずビリ。リレーの選手など無論やったことがありません。先日の深夜、近所の道路で歩幅で大体50mを計って走ってみたのです。・・・ん?案外足上がるやん。これなら全然大丈夫♪と思って、2本目。今度はタイムを計ります。スタートしてすぐに腿に違和感を覚え、1本目とは比べ物にならない疲労を感じながら走りきり、ストップウォッチをみたら・・・!!■後でネットで調べたのですが、そこに表示されていたのは、文部科学省の調べによる8歳男子の平均タイムでした。すまん、町内のよい子のみんな。第一走者のおじさんを許してくれ。決して悪気はないのだよ。

■さて、いま予表を確認してビビッてしまったのですが、先週の伊藤えん魔プロデュースを皮切りに、ABCホールでは10月~12月怒涛の12週間連続演劇公演が始まってます!!(ひとつはコント、かな?)皆さま是非是非、何度も足をお運びください!!■日曜、雨降らないかなあ・・・(艦長)

明日初日!

■伊藤えん魔プロデュース『惑星ボーイズ』、劇場入りされましたー 惑星ボーイズ.jpg!

■いやあ、ワクワクしますね、今回のタイトル。私、1960年代の米ソ宇宙開発競争の只中で科学大好き少年時代を送ったもので、宇宙の話というだけで胸が高鳴る感じがします。月の裏側の写真を撮った、有人飛行に成功した、今度は女性が飛んだ、ランデブーした、ドッキングした、宇宙遊泳した、有人機が月の軌道に乗った・・・と恐るべき速さで人類は宇宙に進出し、1969年7月、アポロ11号の月面着陸でクライマックスを迎えます■で・・・その後予算の関係などで縮小されたアポロ計画が終了して以降、40年近く人類は月に行ってません。結局、軍事技術への転用と国威高揚が目的だったのかなあ、当時の宇宙開発って■たとえば今NASAが月に行こうと思ったら、ちゃちゃっとロケット作ってすぐに行けるのか、ちょっと心配になったりもします。アポロ宇宙船には無論当時最新の「コンピューター」が積まれていたのですが、それは今百均で売ってる電卓くらいの能力しかなかったそうですから、技術のレベルは比較にならないわけですが、必要なのはそれだけじゃないですからねきっと・・・。まあ余計なお世話ですが■宇宙といえば日本では先日、小惑星探査機「はやぶさ」の帰還が大きな話題となって、ワイドショーにも取り上げられたり、JAXSAの予算仕分けにも影響を与えたりしました■7年余、60億㌔の宇宙の旅。人間はそんな彼方の小さな機械の制御が出来るのに、なぜ目の前の人の心ひとつ自由にならないのか?永遠の謎ですね・・・。なんてそんな話じゃないのかな?『惑星ボーイズ』。

宇宙しか知らぬ男達の 初めての恋 

大人になれない中年達が目指すは、地上の愛か天上の星か・・・。  (チラシより)

ということですから、中らずといえども遠からずじゃないかしら■とにかく、劇作家・伊藤えん魔の持ち味が遺憾なく発揮されたスケールの大きな物語だそうです。乞うご期待!!(艦長)

 

伊藤えん魔プロデュース 『惑星ボーイズ』

10月 1日(金)            19:30

     2日(土)   14:00   ★ 19:00     (★17:00~「100円えん魔ちゃん」)   

       3日(日)   13:00   ★ 18:00       (★16:00~    〃               )

      4日(月)         ★ 19:15         (★17:30~    〃          )

                                     ※当日券は各回開演1時間前より発売

 

青春の象徴?

■急に涼しくなったりまた暑さがぶり返したり・・・そのせいか珍しく風邪をひいてしまいました。多いみたいですね、そんな人。お気をつけください■さて昨日ふと思いついたことがあります■昨日僕は、大阪・梅田のシアター・ドラマシティで催された『朝日東西名人会』という落語会に、まあ何もしないながらもお仕事で行ってたんですが・・・噺家さんていうのは面白いなあ、なんて改めて思いましたね。役者さんとも、漫才やコントの芸人さんとも違くて(・・・変だけど、このギャルな言い方なんか好き)、一匹狼的なたたずまいというか、一匹狼だったり、一匹犬だったり、猫だったりトラだったり羊だったり個性も様々で。着物と扇子を詰めたトランクと、噺という武器を何十か詰めた脳ミソひとつで、全国を軽やかに飛び廻る落語家さんっていう仕事、かっこいいなあ・・・って憧れたり■さてその落語会で、柳家さん喬さんの『文七元結』を聴くことができたのです。江戸人情話の代表ともいえる名作ですよね、確か。恥ずかしながら全編ちゃんと聴いたのは初めて。最後方の席で咳を我慢しながら拝見していたのですが、こらえ切れず二度ほどやっていましました。申し訳ありません■欠点だらけだけれど、どこまでも人に優しい主人公の左官職人をどう魅力的に演じるか、うーん、やり甲斐のある話だろうなあ、気持ちいいだろうなあ・・・と思いました。駄目な人間が素敵に見える・・・談志さんのいう『落語とは人間の業の肯定である』というのは、たとえばこんなことなのかもしれませんね。

■さて次回の名人会のお知らせです。

『第17回朝日東西名人会』 

■2010年2月25日(金)  ■梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

《出演者と演目》    川柳川柳 『ガーコン』    桂文珍 『粗忽長屋』    柳家権太楼 『不動坊』      笑福亭鶴二 『稽古屋』    桂よね吉 『お公家女房』

                 ※前売りチケットは全席指定で4500円  ※発売は10月16日(土)~

■あら、肝腎の『昨日ふと思いついたこと』、がまだでした■実は昨日梅田に行く前に僕、古い部屋の整理をしていたんです。僕が12歳から26歳という、まあ青春時代を過ごして、その後廃屋同然で置き去りにされていたかつての実家が、まもなく取り壊されることになりまして・・・■ご多分に漏れず、古い漫画に見入ったりしてなかなか作業は捗らないんですが、いろんな物が出てきましたねー。ノートに書かれた青い青い詩、戯曲や小説の書き出しみたいな断片、肥大した自意識が暑苦しいイラスト、誠実で頭脳明晰な友人たちからもらった手紙、写真・・・その他決して他人には見せられない青春の思い出が大量に発掘されて、感慨ひとしおでした■感慨というよりほとんど後悔です。『どうしてこの時!?』、『なぜこんな・・・!?』って。まあ大抵の人にとって青春って悔恨のてんこ盛りでしょうから、まあそれはいいや。それはいいんですが・・・そんな中、ひとつ思いついたことがあるんです!突然ですが

■『高2の文化祭で何をしていたか?』・・・ここに、その人のその後の人生の方向性、そして人生の歩み方が表れるんじゃないだろうか。

どうですか?そういわれてみればそんな気しませんか?落語が描く人生の断片にその人間の業が表出されるように、高2の文化祭には、その人に一生ついて回る『生き方の本質』みたいなものが象徴的に出ちゃうんじゃないでしょうか?でしょ?でしょ?高2の時って誰でもホラ、ねえ・・・。まあ科学的とまでは云えませんが、巷の占いよりは何万倍も信用できるんじゃないかなぁ・・・。

あなたは高2の文化祭、何をやってましたか?(艦長)

雑誌を読む

■昨日会社でずっと書き物をしていて、ふと机の引き出しの奥にしまってある古い雑誌を取り出して読んでみたんです。雑誌って大体読んだら処分するんだけど、たまにしまいこむのもあって、大抵は気になる芸人さんや演劇人についての特集記事ですね■ある女性月刊誌の1994年5月号。今では旅行とかコスメとかの特集がメインのまあ普通の雑誌になってるけど、当時はこの本、毎号実にエッジの立った特集を組んでカルチャーシーンへの斬り込みがすごかったんです。すでに中年にさしかかったおじさんの僕でしたが、毎月楽しみに買ってましたもん■そういえば80年代から90年代前半は雑誌も面白かったなあ。必ず購読するものだけで十いくつありました■さて、僕がこの号を保存した理由は、松本人志さんとナンシー関さんのかなり長い対談が載ってたから■当時からなかなかメディアで本音をさらすことのなかった松本さんですが、この対談では、とんねるず、ビートたけし、島田紳助、萩本欽一(以上敬称略)など他の芸人さんへの思いをかなりストレートに語っています。ナンシーさんとの信頼関係が胸襟を開かせたのだと思いますが、この時の松本さんの発言は、後にいろんなところで引用されているように思います。強烈なDTビリーバーというわけではない僕ですが、面白いんですよこれが。思わず読み耽ってしまいました■そして夕方に見つけたのが、「シアターガイド」最新号の、つかこうへい追悼特集。つかさんへの追悼文は本当にたくさん目にしましたが、さすが人選・内容とも行き届いた感じです■俳優によるつかさんの思い出話といえば風間杜夫さん、平田満さんが語ることが多いのですが、二人に加えてここには、平田さんの奥さんでつか事務所設立当初からの女優・井上加奈子さんが登場しています。「熱海殺人事件」の婦人警官ハナ子役、「初級革命講座飛龍伝」の嫁役など、70年代の熱狂的つかブームを抑制した演技で静かに支えた女優さんです■そして、「熱海殺人事件」の容疑者・大山金太郎役で、毎回オレンジ色のツナギとサングラス姿でマイウェイを謳い上げながら登場した姿が忘れられない、加藤健一さん。彼は割合早い時期につかさんと離別し、独自の演劇活動を続けておられます。加藤さんの発言で面白かったのは、『自分は今も50%はつかさんの演技論を引きずっていて、そこにスタニスラフスキーをミックスさせている』というところ。口立てなどの手法で役者の内実に合った台詞を作ってくれるつか芝居と、役を徹底的に掘り下げるスタニスラフスキー・システムの融合・・・なるほど。ちょっとだけ距離を置きつつもリスペクトに満ちた素敵な芸談だと感心しました■さらに、元・朝日新聞記者で演劇評論家の扇田昭彦さん。60年代から小劇場演劇にどっぷり浸かり、つか演劇の魅力を最も早く世に広めた方の一人だと思います。扇田さんの文章で、『そう!それを誰か言ってほしかった!』と膝を叩いたのは、『82年に一度演劇活動を休止するまでのつか演劇と、87年に復帰してからのつか演劇は別物』という指摘です■そう!90年代から00年代、それまで演劇と縁が薄かったアイドルやモデル出身のタレントさんたちを次々と舞台に上げ、演技に開眼させてきた後期つかこうへいも確かに素晴らしい■しかし、やはり僕にとっては、学生時代に暗い小さな空間で観た、三浦洋一、平田満、井上加奈子、加藤健一、根岸とし江(現・季衣、以上敬称略)たちが演じる、笑いと怒りと愛と憎しみに満ちた、激しくそして時に情感溢れる芝居がつかこうへいの芝居なんです。でも70年代の舞台はつかさんのこだわりで映像も残ってないし(本当か!?)、追悼企画で流される舞台映像は必然的に後期のものばかり。若い人たちに誤解してほしくないんだよなー・・・って常々悲しくて。でも、僕なんかがこれいうと年寄り臭いんですよ■ほんと、よくぞ書いてくださいました(艦長)

うーん、参った

■このお休みにちょっとすごい映像作品を観てしまいました。少し前にNHK・BS-hiで放映されたのを録画していたものですが、『日本のいちばん長い夏』というテレビ番組です■どういう作品かというとですねー、何というかとりあえず構造がめちゃくちゃ複雑なんです。

1963年、雑誌・文藝春秋が、ある座談会を企画しました。第二次大戦末期の、敗戦に至る日本のリアルな状況を、当時さまざまな立場にあった当事者の口から聞き出し、記録して後世に残そうという試みです。出席者は、終戦当時政府や軍の要職にあった人、戦地で死線をくぐり抜けて生きのびた人など総勢28人。司会が、当時33歳の文藝春秋社員だった半藤一利氏■この座談会はすぐさま大反響を呼び、大作映画『日本のいちばん長い日』の原点にもなりました。今から3年前に改めて出版もされています■さて、ややこしいのはここからです。このテレビ番組『日本のいちばん長い夏』は、

《この座談会の模様を再現ドラマとしてテレビ番組に仕立て上げようとするテレビ演出家を主人公としたドラマ》なんです。

"超"のつくメタ構造です■平凡なテレビ制作者が半藤氏の著作『日本の・・・』をテレビ番組にしようとしたら、まず、当時の出席者の発言の『中身』を再現ドラマや資料映像で再構成しようと考えるでしょう。『座談会自体を再現』しようとはまず考えないはずです。しかし彼は、スタジオに高級料亭の大広間のセットを組み、座談会そのものを再現しようとしました。なぜか?実はこの番組は、この『再現ドラマ』を企画・演出した初老のディレクター自身の『やり直し』のドラマでもあるからなのです。つまり、彼にとってこの番組作りは、今は亡き自分の父から聞けなかった戦争の記憶、あるいは父との対話という体験そのものを、仕事を通じて取り戻す作業でもあったのです■そしてさらに特筆すべきは、このディレクターが企画した座談会再現の手法がタダモノではない!というところです。いわゆる『文士劇』なんです。著名な作家やジャーナリストの方々本人が、終戦当時に高級官僚や軍人だった人物を演じているのです。鳥越俊太郎さんが終戦当時陸軍中将だった人の役、田原総一朗さんが日本共産党幹部、アニメ監督・富野由悠季さんが陸軍大将、漫画家・江川達也さんが上等兵・・・しかもそれは過去の肩書きで、座談会の時点ではそれぞれ戦後日本社会の重鎮として活躍しておられる、という難しい役どころ■僕がこの番組でいちばん素晴らしいと思ったのは、この『文士劇』スタイルが単なる『意表をついた演出』にとどまっていない点です。『知的ではあるが、演じること・語ることが本業ではない』文士たちの大真面目な演技によって、俳優では決して出せないであろう独特のリアリティを醸し出すのに成功しています■このリアリティの在り様は、恐らくこの番組のテーマに密接に関連しています。すなわち、戦争という愚行そのものに対しての怒り、組織の体面に囚われて冷静な判断ができず、敗戦が決定的になってからポツダム宣言受諾に至るまでの期間に膨大な数の同胞の命を失ってしまったことに対する悔恨、そしてそれら掘り返したくない記憶を公の場でさらしているやりきれなさ・・・それらあまりにもゴツゴツした感情のエッジが、演技者本人の批評眼とないまぜになって、その無骨な演技からにじみ出ているのです■書いているだけでややこしくて頭がクラクラしてくるわけですが、異色の作品で、ホントとにかく面白かったです。でね、実はこの作品、この夏劇場公開されているみたいなんですよねー(艦長)

 

in my life

■あさの@しょーいち堂『どくろ』シリーズ三部作、さきほどめでたく完結致しました。

■その開演に先立つこと3時間、あまりの暑さと喉の渇きに耐えかねた僕はホール近くのコンビニに出かけ、何本かの飲み物と一緒に、あるものを買ったのです。最近テレビの情報バラエティ番組で取り上げられていた人気のアイスキャンディー、ガリガリちゃんでしたっけ?■実は僕、生まれてこのかたガリガリちゃん?を食べたことがありませんでした。この商品が普通の氷とかき氷の2層構造になっていて、それによって生まれる独特の食感が人気の秘密だということも、その独特の製造工程も、この番組を観るまで知らなかったのです。■まず、冷えたキャンディーの金型に溶液を注ぎます。金属面に接する部分が薄く凍ったところで、まだ凍っていない残りの液を吸い出します。すると、氷の殻が出来ますよね。その中にクラッシュアイスを入れ、バーを差し込んでしっかり凍らせたら出来上がり!なんですが、もちろんフル・オートメーション。ホントよく出来た機械だなぁ、って感心至極でした。で、これは一度食べてみようじゃないかと思った次第■味や食感は、あーなるほど!って感じでしたが、なぜかこの人生初ガリガリをしながら僕、ある言葉を思い出してしまいました。

The first experience in his life

■・・・大学生の時だったか、(多分)夏に桂枝雀さんの独演会を観に行った時のこと■『夏の医者』という噺のクライマックス、山道でウワバミ(大蛇)に呑まれてしまった医者が、何とか脱出しようと、持っていた下剤を蛇の腹の中で撒いた時の描写です。

枝雀 『普段薬を飲みつけてない人がたまぁに飲むと、人一倍効果がよく出るということが言われております。むろんウワバミ君、薬なぞ飲んだことございません。ザ・ファースト・エクスペァリエンス・イン・ヒズ・ライフ ですから、モォ効ぃたの効かんの・・・』 と演じはったのです。

■場内は大爆笑!僕の人生で、落語を聴いて一番驚いた瞬間でした(まあ、学生受けするギャグではありますね)。その後、枝雀さんは全編英語の落語なども演じられるのですが、あの時は、すごいもの見たなー!と思いましたね(艦長)

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