手塚「石川さんは今年の『手塚治虫文化賞、マンガ大賞』を『もやしもん』という作品で受賞されました。まずは受賞された感想をお聞かせください」石川「最初にお話を聞いたときも今でも、ピントは来ないです。“うそ〜”というところから始まって、会場に行ったら本当に貰えたなという感じで。家でちまちまマンガを描いているので、そんな表舞台で褒められて“らしくない”という感じでした」
手塚「この『もやしもん』という作品は菌をモチーフにしています。このアイデアを思いついたきっかけは?」石川「団体劇をやろうかと言うところから始まりました。ですから『菌』ありきではありませんでした。現代劇で団体劇、それでおもしろ、おかしいのは大学かなと言うことになりました。僕が小さい頃から育った町、大阪の堺に大学の農学部がありました。僕の担当は東京農大の近くに住んでいて、農大に行こうとなりました。東京農大は学生さんがお酒を造っているらしい、未成年のうちからね。それは面白いと言うことになりました。また和歌山の酒蔵にも行ってお話を伺いました。そうしたら“お酒造りは菌の声を聞くんだよ”と言うことを聞きました。リアルな世界で菌の声を聞くのならば、マンガでは菌の姿が見えたり話してもいいんじゃないかと考えました」
手塚「とにかくものすごい数の菌が登場しますが、その菌をデフォルメしてキャラクターとして描こうと思ったきっかけは?」石川「最初は編集長の方でネームが通らなくて、もう2週間後には第1話が載るのに通らない。“どうしよう”と言うことになって、顕微鏡写真のそのままを描いても気持ち悪いだけなので、“丸描いて、目でもつけとけ”と言われました。そうした“これで行こう”と言うことになって、“こんなものなのか〜”(笑)」
手塚「描いていて、一つ一つ違いがありますが、ごっちゃになったりしませんか?」石川「なります。一応電子顕微鏡写真をデフォルメしようとは思うのですが、だいたい細長いか丸いかなのです、菌は。後は適当です(笑)」
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