殺しで使われるさまざまな道具を考案し、その使い方について考えること。それが、布目真爾の仕事、特殊小道具だ。シリーズに登場した仕事人たちの個性あふれる仕事も、彼なくしては存在しなかったと言っても過言ではない。『必殺仕事人2009』では、経師屋の涼次とからくり屋の源太の殺し道具を担当。シリーズ初期から『必殺』に参加し、殺し道具を知り尽くした男が語る、意外な舞台裏とは?
まず最初に、監督から「今回はこういうキャラクターにしたいから、こういう道具を作ってくれへんか?」という要請があって、それからいろいろと自分で考えて作ります。今までずっと、殺しの道具は全部自分で作ってきましたけど、他のスタッフがね、いろいろと協力してくれるんですよ。僕が「こういう道具にしたいんだけど」と言えば、「こういうふうにしたほうがいいんじゃないか」とか、アイデアを出してもらえる。ディスカッションすれば、いろんなアイデアが出ますよ。
たくさん作り過ぎるとね、もうパターンがなくなっていくんですよ。どんな道具を使ってどんなふうに殺したらいいのか悩むようになる(笑)今は、監督さんがコンテを作ってくれることが多いから楽だけど、昔は全部自分でコンテを作ってましたからね。ここに忍び込んでこうやって襲うとか、自分で全部考えて監督に伝えてたんですよ。
涼次の道具は、どういうふうに松岡昌宏くんが使ってくれるのか、それを自分でいろいろと考えて、いろんな試作品を作って、監督と話し合いながら作りました。首筋を刺すっていうのは今までの「必殺」でもあったけど、首筋から心臓まで刺すというのは初めてだね。
プロデューサーから涼次の“殺し”は「レントゲンにしたらどうや」という提案があって、「それなら錐でやったらどうや、心臓に刺したらどうや」という話になったので、それやったら長めの針を作って、心臓に到達するようなアクションにすればいいかなと考えたんです。それで、筆の中身を長い錐にした道具を自分でも作ってみました。やっぱり、ただの錐では美しくないだろうし、デザインも小道具さんと「こういう飾り物にしようか」と話し合ったしね。
源太の道具は、今回、一から全部考えて作ったからね。いわゆるプロの殺し屋ではない素朴な殺し屋にしたいという監督からの要望で、竹で蛇を作りました。この道具、短い竹が15個つながってるんですよ。これがシューっと飛んでいって、首に巻きつくわけですね。実はこの蛇の口が開いて、舌が出るんです。最初はなかったんですが、蛇の舌が首を刺すというのもあるんですよ。首を絞めるパターンと突き刺すパターンと、監督によってパターンが違います。
アクションのかたちは、ただ紐を引っぱるだけじゃなくて、監督が「こうしたほうが力強くてええやろ」と思ったかたちを現場で作っていくんです。
『必殺』には、『助け人走る』(※『助け人走る』:『必殺』シリーズ第3作。1973~74年にかけて放送。田村高廣主演)から参加してます。それ以降はほとんどやってますね。あんまりたくさんやり過ぎてね……本数多いとね、ほとんどイメージが残ってないですよ。気に入ってるもの? 気に入ってるというよりは、どれも苦労してますよ(笑)。
三味線の勇次もね、最初は糸を投げることはなかったんです。それが、昼間の通りで、駕籠の中に乗ってる相手を、どうやって殺したらいいかという話になって、「だったら、いっそのこと、糸投げたらどないや」と。それから、スタッフで「だったらこういうふうに飛んで行くやなかろうか」というのを考えまして。で、糸がピューっと飛んで行くようなかたちになったんですよ。三味線の糸はあんなふうに飛ばないんだけど(笑)、そっちのほうがきれいじゃないですか。殺しはね、あんまりリアルにこだわると、逆にできないでしょう? やっぱり、どういうふうにして華麗に相手を殺すかというアイデアですよね。やっぱり中条きよしさんがエエかっこしてスマートに糸を投げられるかどうかが大事なんですよ。
一番怖かったのは、中村嘉葎雄さんの巳代松(※シリーズ第10作『新・必殺仕置人』に登場する仕事人。道具の竹鉄砲は撃つたびに銃身が爆発してしまう)の竹鉄砲ね。あれは本人も怖かったみたいですよ。そりゃあそうですよね、作った鉄砲が目の前でバン!と破裂するんだから。やっぱりスタントじゃなくて本人が実際に演じてるだけに火薬を仕込むのは怖いですよ。どう炸裂するかわからないし。あの鉄砲は小道具さんが作ってくれたんだけど、そのうち、ただ撃つだけじゃ面白くないからって、花火のロケットがビューっと飛んでってドーンと当たれば、画的にきれいなんじゃないかなんて話も出てきて、だんだんエスカレートしていきました。これもね、監督からいろいろと要請が来るんですよ。要請が来たら、やっぱり作らないかんでしょう。
実は、僕のこの手も「必殺」では何百回も出演してるんですよ。殺しのシーンで手だけを撮影するときは、役者本人の手ではなく僕の手を撮ってるんです。手の吹き替えということです。京マチ子さん(※シリーズ第16作『必殺仕舞人』、シリーズ第23作『必殺仕切人』などで仕事人を演じた)の手であろうが、京本政樹さん(※シリーズ第23作『必殺仕事人Ⅴ』などで仕事人を演じた)の手であろうが。秀が簪(かんざし)で首筋を刺すシーンも、レントゲンの骨外しも、僕の手で撮ってたしね。テレビを見てるみなさんは、実際に役者本人がやってると思うよねえ(笑)(了)