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2019年9月11日

【ABC特集】「寝たきりならずに儲かりまっせ!」介護費用7億円を減らした体操って?

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 舞台となるのは大阪府大東市。健康体操と言ってもいろいろあるんですが、大東市のオリジナル体操は何が違うのかどんな体操なのか、どうして介護費用が削減したのか探ってきました。

ウワサの「元気でまっせ体操」どんな体操?

そのウワサの体操をみんな知っているのでしょうか?大東市民に、まずは聞いてみました。


「大東で有名な体操があるって聞いたんですけど知ってます?」(上田剛彦アナウンサー)

「老人を対象にした体操をやってるのは聞いたことがあります」(男性)

「大東で有名な体操があるって聞いたんですけど?」(上田アナ)

「えっ・・・元気でまっせ大東」(女性)

「有名かどうかは分かんないですけど・・・元気でまっせ体操」(子ども連れの女性)

「元気でまっせ体操!?ご自身でやってるわけじゃない?」(上田アナ)

「ではなくて、おばあちゃんがやってるんです」(子ども連れの女性)


 どうやら「元気でまっせ体操」という名前で、高齢者向けの体操らしいんです。そこで、ご高齢の方にしぼって30人に聞いたところ22人が「知っている」と回答。確かに有名なようです。

「今、公民館で行われている体操を早速、のぞいてきます」(上田アナ)


“次は前でパー4回。パー、パー・・・”


 お手本のDVDを見ながらする体操みたいですね。


“つま先。かかと。つま先。かかと。戻して!”


 この「大東元気でまっせ体操」は、文字通り、大東市のオリジナル体操。考案者の一人である大東市の職員、逢坂さんに伺います。


「この体操の目的ってどんなところにあるんですか?」(上田アナ)

「高齢者が転倒して、痛い目にあったり骨折したりしないようにそれを目的としています」(大東市 高齢介護室 逢坂伸子さん)


 つまり、転倒を防ぐためにつま先やかかとを念入りに鍛えているんですね。


「骨折すると治るまでしばらく安静にしますよね。それで寝たきりの道に進んでしまうんです。本人の望まないことがちょっとした転倒で起こってしまうので、それを(体操で)防ぐためです」(逢坂さん)

 人生の先輩方に混じって私も参加させていただくことにしました。

 

「ふくらはぎが張るぐらいに上げてくださいね」(逢坂さん)

(しばらくつま先やかかとの上げ下げを続けて)「この運動、簡単すぎませんか?」上田アナ)

「簡単に見えますけど、この動きを日常生活ですることありますか?」(逢坂さん)

(ちょっと考えて)「ないですね」(上田アナ)

「ないから、かかとが硬くなってつまずくようになるんです。とっても大事な動きです」(逢坂さん)


 逢坂さんは、理学療法士の資格を持つリハビリのプロ。その視点から、理にかなった体操をつくりました。座ってやるだけでなく、立ってやるバージョンもあります。


「横に押し出して前へ。腕を広げながらしゃがみまーす」(逢坂さん)

「ちょっと武道の動きですよね。どういう効果があるんですか?」(上田アナ)

「ゆっくり動くことでしっかり筋肉がつきます」(逢坂さん)

「あつ!」(逢坂さん)

「汗かいてきましたね」(上田アナ)


 この「大東元気でまっせ体操」は2005年に誕生しました。“75歳以上の人にもできるラジオ体操”というコンセプトで、最初は1団体20人からスタート。以来、着実に広がり・・・


「いま122団体がやってます」(逢坂さん)

「122団体!?」(上田アナ)

「2200人を超すぐらいの方が週1回どこかで体操しています」(逢坂さん)


 「座る」のと「立つ」のを合わせて30分ぐらい。 けっこうな運動になりました。

介護費用が激減!ウワサの「元気でまっせ体操」

 ナゼここまで広げることができたのでしょうか?そこには、高齢者を「その気にさせる」工夫がありました。


「大阪なので商売人の方が多いです。なのでもうかる話好きですよね。損すること嫌い。お風呂入れてもらう介護で20万円使うのか、元気なままで20万円でハワイ旅行行くのかどっちが良いですか?というような売り込み方をしました」(逢坂さん)

「介護になったら大損ですよというのを伝えたと?」(上田アナ)

「そうです。キャッチコピーを考えました。それが“寝たきりならんで儲かりまっせ”」(逢坂さん)


 もうかる話に乗った、おばあちゃまたち。どんないいことがあったかを聞くと?


「今までマッサージ毎月1回行ってましたけど今は1年に1回」(84歳女性)

「えー、だいぶちゃいますね」(上田アナ)

「マッサージ1回行ったらやっぱり3000円要りますから」(84歳女性)

「(体操を始めて)誤嚥がなくなって助かってます。楽にご飯が食べられます」(73歳女性)

「ホントに!?それ、儲かったどころか・・・(笑)」(上田アナ)

さらに大東市は、半年ごとに 参加者の体力測定を、無料で実施。日々の努力を「見える」ようにしてやる気をサポートしています。その結果・・・。


「介護保険の7段階の中で軽い方々2段階を要支援レベルって言いますけど、要支援レベルの方々がサービスを使うことがどんどん減っていってます」(逢坂さん)


 特に顕著なのはココ3年。2015年度末に1133人いた、介護サービスを受ける要支援者は、昨年度末には、466人と半分以下に。この間、行政が負担する介護サービスの費用は、実に7億円も減ったというのです。


「重度になったときにしっかりと介護(保険)を使っていただくために、軽度の方はできるだけ住民同士で支え合う。そういう街になるとここに住んでおられる住民たちが一番安心して暮らせるということです」(逢坂さん)


 要支援者一人一人が、今より少し元気になれば人手や財政が不足するなかでも、介護サービスが本当に必要な人に行き届くようになるわけです。

 この「元気でまっせ体操」には、国も注目。介護サービスに頼らない、良い取り組みとしてホームページで紹介しています。その影響もあって、「元気でまっせ体操」は実は、他の自治体にも広がっているんです。


「東北とかにも広まってまして、(岩手県)花巻市とか、福島の南相馬市とか」(逢坂さん)


 これまで、50以上の自治体に出向いて指導したという逢坂さん。ただ、そこで「あること」に気づきました。


「大阪は商売人だから“儲かりまっせ”でいけたんですけど、特に東日本は全然だめで、儲かりまっせの話は通用しない。やっぱりそこに住んでいる方々の価値観、何を一番大事に生活されているかをつかむべきということがわかりました」(逢坂さん)


 つまり、大阪以外の人をやる気にさせるにはその地域の事情に合わせた誘い文句が必要だったんです。例えば、福島県の山あいのまち、三島町(みしままち)の場合は・・・


「山の上に住み続けたい、その想いがあるならば“山から下りてちゃんと上がってこれる足腰を作る体操を”というと、みんなこぞって来ました」(逢坂さん)


 広島県江田島市(えたじまし)の場合は・・・


「島なので、漁業ですよね。息子の手伝いをしたい。そのためには体づくりが必要なので自分の息子に役に立つための体操教室ですよと言ったらみんなが来る」(逢坂さん)

「なるほど。住民の気持ちを一番に考えるのが大事なんですね」(上田アナ)

誰かにおしつけられるのではなく、自分がやりたいから、やる。住民が主体の「元気でまっせ体操」は、大成功しています。





「やっぱり人間自分でないと、自分の体は治せない。医者は治してくれません」(元気でまっせ体操に参加する女性)

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特集

2019年9月6日

【オフレコ】空前のペットブーム背景に「希少動物」の密輸 摘発が急増するタイの「カワウソ」密猟現場に直撃(前編)

特集

1匹50万円でも大人気 愛好家垂涎の「希少動物」

 絶滅が心配される「希少動物」の密輸が今、増えている。ペットブームを背景に増加する密輸の裏で、いったい何が起きているのか。7月。取材班は、京都市内で行われていたある販売イベントを訪れた。


「本当にいろんな動物がいますね。こちらの小動物ショップ、ショウガラゴは1匹50万円ほどしますね」(ABCテレビ・二村貴大記者リポート)


売られていたのは、世界各地に生息する希少動物。全国から愛好家が詰めかける、人気のイベントだ。


「カメレオンに興味があって、買えるものとは思ってなかったんですよ。

一度飼ってみたいなと」(訪れた客)

「家にモモンガがいて、将来ショウガラゴを飼いたいなって」(訪れた客)


ペットも、多様性の時代。少しでも珍しい動物を求める人が、増えているという。


「アフリカジャコウネコ、国内で初めての繁殖例のはずなんですけど。犬猫以外の珍しい動物の人気というのも、だいぶ上がってきているのかなと思います」(ペットショップ代表の男性)


しかし、ブームの影で、ある問題が起きていた。


(Q.怪しい人から動物の買い取りを持ちかけられたことは?)

「買い取りとかの依頼はあるにはあるんですけど、(動物を)送るので振り込んでくれみたいな」(ペットショップ代表の男性)


(Q.そういうのは密輸のブローカー?)

「中にはそう(密輸)なのかなというのはなくはないです」(ペットショップ代表の男性)


そう、希少動物の「密輸」だ。

後を絶たない密輸 いま摘発急増の動物が・・

密輸を水際で止める防波堤・関西空港税関。今年4月、会社員の男が逮捕された。押収されたのは、取引が規制されているトカゲとヘビ24匹。食品に紛れ込ませ、鍋の中に隠して東南アジアから密輸したという。


「密輸の発見を逃れるために巧妙になっているということは考えられると思います。国際取引が禁止されているものが多いですから、それらを密輸することでですね、国内で販売すれば利益が得られると」(大阪税関関西空港支署・坂本直也 統括監視官)


後を絶たない、動物の密輸。その中でも、ここ数年、摘発件数が急増した希少動物がいる。それが・・・カワウソだ。2016年には7匹。17年には32匹が押収されている。今年1月に、羽田空港で摘発された男たちは、キャリーバックに、カワウソ5匹を隠して密輸。発見された時には、すでに2匹が死んでいて、別の2匹もまもなく死んでしまった。


 2017年、東南アジアで、密輸により押収されたカワウソのうち3分の2以上が日本向けだったという。なぜ、日本なのか…

カワウソカフェで起きた逮捕劇

東京・池袋にあるカワウソカフェ「コツメイト」。カワウソと直接ふれあえる事が評判となり、連日多くのお客さんで賑わっている。ここにいるのは、正規のルートで輸入されたカワウソたちだ。


「最高。やばいっす。もう」(利用客)


しかし、去年6月、この店が「逮捕劇」の舞台となった。きっかけは、若い男からの1本の電話。


「『カワウソがいるので、いくらで買い取ってくれますか』と。そもそもコツメカワウソは日本にはいない動物なんで、買い取ってくれという話はまず密輸だなと思いました」(「コツメイト」オーナー・長安良明さん)


店主の長安さんは、すぐ、警察に通報。男は3日後、警察が待機するなか、カフェを訪れた。


「当日ここから入ってきて、段ボールを抱えてこんにちはと。これくらいのアマゾンの段ボールに2頭入っていまして」(長安さん)


長安さんは、男とのやりとりを録音していた。

「これどこからとかわかる?国によって持ってる病気が違うのよ。予防接種とか多分やってないよね」(長安さん)

「そうですね。タイ・・・ですね」(男)

「すごいね、タイからまだ入ってくるんだ」(長安さん)

「そうですね」(男)


男はこの直後、踏み込んだ警察官により、逮捕された。

取材班、タイへ

先月開かれた、ワシントン条約の締結国会議。ペットとして人気を集めるコツメカワウソについて、国際取引を全面的に禁止する提案が可決された。コツメカワウソは、過去30年間で、生息数が30%減少したという調査結果もあり、絶滅の可能性が指摘されている。


世界的な流れとは裏腹に、日本で高まるカワウソの需要。では、どうやって密輸は行われているのか。その実態を探るため、ABCテレビの「キャスト」取材班は、タイへ、飛んだ。


向かったのは、タイ最大の動物市場「チャトチャック市場」。


「本当にいろんな動物が。鳥から、ミーアキャットですかね。かわいいな。ハムスター・ハリネズミなんかもいるんですね。うわぁ!こわ・・・こちらフェネックという動物が売られていますが、日本では1匹100万円以上もする貴重な動物です」(二村記者)

市場には、タイのみならず、世界中の珍しい動物が集まってくる。数年前は、カワウソも、堂々と売られていたというが…。

(Q.カワウソはいますか?)

「カワウソはいません。違法なので。森林局の職員が毎日見回りをしています」(販売員の男性)


コツメカワウソの写真を見せると・・・


「ないわ。警察に捕まってしまいます。お店にはありません」(販売員の女性)


(Q.カワウソはありますか?)

「ありません。売っているお店も知りません」(販売員の女性)


タイで、飼育・販売が禁止され、罰則が強化されて以降、姿を消したカワウソ。しかし、市場の男性からある有力な情報を得ることができた。


「2、3年前に罰則が強化されて、あまりカワウソを売らなくなりましたが、それでも密売をしている人はいます」(市場の男性)

(Q.カワウソはどのあたりにいますか?)

「タイ南部です。まだ密猟をやっている人がいるかもしれません」(市場の男性)


取材班は密猟の実態を探るべくタイ南部へ。そこで目にしたのは…違法飼育の摘発現場だった。

「車の部品屋の表にあるこちらのカゴなんですが、表から見えない形で、コツメカワウソ1匹が飼育されています」(二村記者)


「キャスト」取材班は、カワウソを密猟している現場を捉えようと、さらに手がかりを探った。


後編は9月12日(木)の「キャスト」で放送予定です。

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特集

2019年9月5日

【災害列島2019】近畿直撃 大きな被害もたらした「台風21号」から1年  6年後に万博開催の“大阪ベイエリア”で何があったのか

特集

3トン超の巨大コンクリートも 「万博」予定会場に残された“爪あと”

 去年9月、近畿地方を直撃した台風21号。2025年に大阪万博が開かれる人工島「夢洲」(ゆめしま・大阪市此花区)も、大きな被害を受けました。25年ぶりに、「非常に強い勢力」で日本に上陸した台風。あのとき、“大阪ベイエリア”で、何が起きていたのでしょうか。


関西空港の連絡橋にタンカーが衝突。神戸の六甲アイランドではコンテナが炎上するなど、沿岸部に大きな被害をもたらした台風21号。大阪港の周辺には今も、その爪あとが残されています。


大阪万博の会場となる、夢洲。大阪市立大学の研究チームが、ドローンで台風21号による被害の全容を撮影しました。


「これが、被害を受けた護岸の部分ですね。ここがもともとあったブロックの位置ですよね。跡が残っているんですけど、それが台風後に護岸から落ちて行ってしまっている」(大阪市立大学・吉田大介准教授)


重さ3トン以上もある巨大なコンクリートが、高波の影響でずれ動いていました。

さらに。


(Q.人の背丈越えてますもんね。すごく大きい。これがどこかから流されて、岸壁を乗り越えてここまで来たということですか?)

「うーん、おそらく」(吉田准教授)


(Q.把握はしていた?)

「それはわかってますけど、どちらのほうから来ているかは、正直わかりません」(大阪市港湾局・木口行治さん)


台風前にはなかったコンクリートの塊が、どこからか流されてきていました。突き出た鉄筋はぐにゃりと曲がっています。あの日、岸壁にいったいどんな波が押し寄せていたのでしょうか?

台風の直後に夢洲に入った、大阪市立大学の重松孝昌教授は土手の削れ方に注目します。


「土手側がえぐれているのと、砂地がいつもと質が違うというのを感じましたね。このあたりぐしょぐしょに濡れていて。おそらく波が入ってきたのでこの上に這い上がっていくと。そのあとに波が引いていくときにえぐられたんだろうなというふうには思いましたね」(重松教授)


護岸を乗り越え、土手をえぐるほどの激しい波。この波が発生した原因は、「台風が通った進路」にありました。


「大阪湾から見て西側を通っていくコースが大阪湾にとっては非常に危険なコースです。西側を通られると大阪湾に向かって南からの風が吹きますので、その風に吹き寄せられて海水面が湾の奥では高くなるということになります」(重松教授)


大阪湾の西側を、一直線に通過した台風21号。台風を動かす風と、巻き込む風が、同じ方向になることで勢力を増し、大阪湾では、最大瞬間風速60メートルに迫る風が吹き荒れました。暴風で押し寄せられた海水は、湾の奥で逃げ場を失い、潮位は過去最高となる、3メートル29センチの高さを記録したのです。

魚つり園、ホテル…注目集まるベイエリアで見た被害

大阪ベイエリアでは、他にも、台風の被害が出ていました。南港(大阪・住之江区)にある「魚つり園」。現在は営業を再開していますが、今年4月に訪れたときには・・・


(Q.これが売店ですか?)

「はい、これが売店です。元売店ですね。」(大阪市港湾局・福本肇さん)

(Q.海に面しているところが、見る影もない感じになってしまってますね?)

「こちらの壁もですし、奥の壁も手前の壁も全てやられてしまいましたね」(福本さん)


釣り道具のレンタルなどを行っていた建物が波で破壊され、今にも崩れそうな状態に。中にあったものは全て流され、自動販売機が原型をとどめないほど折れ曲がりました。


さらに、此花区にある別の宿泊施設では・・・


「当時事務所にいたんですけど、木が目の前でバサバサ倒れていて…。ログハウスのほうが結構被害があって。テラスのところのガラスなどがすべてダメになってしまいました」(ホテル・ロッジ舞洲 小畑藍子副支配人)


強い風でなぎ倒された木々。ログハウスのガラスが割れ、テラスの柵は折れてしまっています。台風が通過していた当時、数人の宿泊客がいました。

「丸太がこういうふうな作りになっているので、(宿泊客から)『間から水が入ってきて怖いです』という内線をいただいたんですけど、そのときには直撃していた時間帯だったので・・・」(小畑副支配人)


外に出ては危険なため、2階に避難するよう伝えたといいます。ところが、台風が通りすぎた後も、問題が。


「停電しました。電話もつながらない状態になってしまいますし、お水が一番困りましたね。お手洗いが。大阪自体があまりそんなに台風が来るところでもないですので、正直ここまでの被害がというのは予測はできませんでした」(小畑副支配人)

有数の観光スポット「海遊館」では

外国人観光客に人気の観光スポット「海遊館」(大阪・港区)では、ベイエリアの施設ならではの対策がとられました。


「岸壁がありますけど、それを乗り越えて水が来る場合がありますので、それをここでせき止めるといった形でできあがっていると思いますね」(海遊館 施設部・米本博嗣さん)


「防潮鉄扉」と呼ばれる扉を閉じることで、高潮による浸水を防ぎました。

当日は朝から休館。ところが。


「やはり何名かの方は来られていたということで、帰っていただいたというのがありました」(米本さん)

(Q.どういう人が来た?)

「外国人の方が多かったように思います」(米本さん)


ホームページや駅で案内していても、施設を訪れる人がいたのです。


「台風のことは、よく知らないなぁ」(アメリカ人観光客)

「日本で台風にあったら?全然わからないよ。たぶんホテルに残るね」(中国人観光客)

海上からわかった「舞洲」の意外な効果

去年、台風21号が上陸してから1年。大阪市立大学の重松教授と、改めて海の上から見渡してみました。


「これたぶん、コンテナかなんかでちぎられてるんじゃないですか?」(大阪市立大学・重松教授)


近くの人工島から流されてきたコンテナが、手すりや柵を破壊していました。各地であまりにも多くの被害が出たため、復旧作業は今も続いています。


そして、高波が押し寄せた、夢洲南側の岸壁は。


「右手側の柱にカメラっぽいのが見えると思いますけども、雰囲気としたらあれくらいのところまで波は来てるというような感じです」(重松教授)


台風で壊れてしまったという、波の力を計測する装置。カメラがとらえていたのは、くり返し押し寄せる激しい波の映像でした。大阪市によると、6メートル以上の波が護岸を乗り越え、30回ほど土手の中腹あたりまで到達していたのではないかということです。


一方で、重松教授は「夢洲」には「防災効果」があったと指摘します。


「この人工島自身が高潮を防護してくれていたのではないかなと思いますけど、風も同じでこれが最前線になるので、これが一つの抵抗物となるので、背後の土地にとっては少し風が弱まるような効果があったかもしれない」(重松教授)


台風による暴風や高波を最前線で受けた夢洲がブロックとなり、その奥のエリアが大きな被害を免れた可能性があるというのです。

万博開催まで6年 「夢洲」に何が必要か?

大阪万博の開催期間は5月から11月。台風の直撃に備えるために、何が必要なのでしょうか。


「最前線にあるので、ここで飛来物を作ってしまうと、背後の市域に飛んでいってしまうことになりますから、いわゆる“災害の種”が飛んでいくということになるので、そこが気をつけて設計をしたほうがいいかなと思います」(大阪市立大学・重松教授)


もし、夢洲から強風で物が飛ばされると、周辺の観光地や住宅に被害が出るおそれも考えられます。


「暴風対策はこれから建物を建ててやる中において、もちろん強度はしっかりしたものをやる。」(大阪市・松井一郎市長)

「万博やIRが開催されるにあたって、もし台風が来たときにどうやって避難経路を確保するか、どうやって災害から守るかというソフト対策の部分が非常に重要だと思っています」(大阪府・吉村洋文知事)


大阪万博の開催まであと6年。より手厚い防災対策が必要です。

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特集

2019年9月4日

【島田大の記者目線】やさしいオトナのペースで大人気!「50歳以上限定の富士登山ツアー」に挑む

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初挑戦の参加者も 大盛況!50歳以上の富士登山ツアー

「さあやってまいりました、島田大の記者目線!なんと今回は富士山にやってまいりました。ごらんください、この雄大な富士山!と言いたいところですが、モヤに霞んでしまっております」


ABCテレビ・島田大記者がやってきたのは、夏山シーズンに多くの登山客が押し寄せる“霊峰”富士。5合目の富士宮口で、50歳以上限定のツアーを見つけました。


「(富士登山は)初めてです。ドキドキしてます」(65歳の参加者)

「題名が『中高年のための』ちょっとはやさしいかなと思いまして」(59歳の参加者)


52歳から65歳の参加者14人は、ほぼ全員、富士登山初挑戦。関西から参加している女性も多くいました。


毎回大盛況の中高年ツアー。その仕掛け人に話を聞くと・・・


(Q.中高年のための富士山ツアーはいつから始めた?)

「12年目くらいになります。若い人と一緒に登るのはしんどいという方、結構いらっしゃるので中高年の方にとっては安心なんですよね」(「冨士エコツアー・サービス」代表・福田健史さん)


このツアーの行程は、5合目の富士宮口から出発して、体力を回復するために8合目の山小屋で1泊。翌朝頂上を目指します。

中高年にあったペースでゆっくり登山

「今から富士山登るぞー!エイエイオー!」(参加者)

「行きます。いよいよ5合目を出発します」(島田記者)


先日52歳になったばかりの島田記者も一緒に登山開始。午後1時すぎ、標高差850m上の8合目を目指して、「中高年のための富士登山ツアー」がスタートしました。


「皆さん!深呼吸繰り返してくださいね!深呼吸。ご自身の歩くペースで結構です」


列の前後にはガイドがつき、通常のツアーより2、3割ゆっくりしたペースで歩いていきます。


だいぶスローペースですね。それが中高年の皆さんにはいいと思いますね。あまりオーバーペースでいっても皆さん大変ですから。こうやって所々に花が咲いています。白いような黄色いような。高山植物かな?キレイな花ですよ」(島田記者)


登りはじめは高山植物や、300年前の大噴火で誕生した宝永山(ほうえいざん)を眺めながら標高を上げていきます。

富士山に登りたい!その理由は・・・

(Q.どうですか7合目まで?)

「今までは軽快に登ってます。ちょっと不安だったんですけど、同じ年代の方がいるので色々話ながら登ってこられて」


と話すのは、本格登山は初めてという藤本早百合さん(64)。ツアーの2日前、京都市内の自宅にお邪魔して話を伺いました。


「死ぬまでに1回富士山に登ってみたいなと思って。若いときからやってみたいことが3つあった。その1つが富士山だった」(藤本早百合さん)


雪見酒と、北アルプスの山々を見られる絶景ホテルに宿泊する夢は既に実現。唯一達成できていないのが富士登山だそうです。


「今暑いので百貨店の階段を利用して、地下から屋上まで何回か登っています」(藤本さん)

「がんばりやさんですので、たぶん登ると思います」(夫・博史さん)

「ほんまかいな(笑)がんばります」(藤本さん)


階段トレーニングの成果もあり、しっかりした足取りです。

お天気も上々。ところが…


「うわー風強い!風が強いな・・・急に山の天気はかわりますよね」(島田記者)


日本一の山は、そんなに甘くはありません。休憩のため、登山道にある山小屋にはすべて立ち寄ります。


愛知県から参加した白井忍さん(57)。思わぬものを見つけました。


「富士山です(笑)。描いてもらったんです。すごく気合い入れて」(白井さん)


爪の上に描かれたかわいい「富士山ネイル」が。そこまで富士登山にのめりこむ理由って?


「何か全然普通の穏やかな生活も大事だけど、こういうのもほしいっていうか(笑)。達成感もほしいっていうか。ワクワクするよね」(白井さん)


日常とはまた違った充足感。それが富士山に挑む理由なのだそうです。

もうすぐ山小屋 急角度の難所が

「いやいや来ました来ました。標高3000m。ついに3000m来ました。はー高いよ。高い高い、高いね」(島田記者)

登山開始から3時間。ようやく8合目の山小屋が見えてきました。その手前には1日目最大の難所が。溶岩の塊でできた急角度の登り道。


「ロッククライミングみたいですね、ほんとに目の前なんだけど・・・大変だこりゃ、よいしょ、よいしょ、はーはー」(島田記者)

ひざまずきながらも、自分のペースでゆっくり・・・なんとか難所を抜けていきます。


そして出発から4時間。一般的なコースタイムより1時間近く遅いペースで、8合目の山小屋に到着しました。


「着いた、よかった」(藤本さん)

「いやー、しんどかったね(笑)」(島田記者)

「何となく明日も行けるぞ!って気がしてます。今のところ」(白井さん)


標高3250m。山小屋からは雲上の世界が広がっていました。


午後6時半、お待ちかねの夕食。メニューは…カレーライス。


「美味しいですね。5合目から8合目まで頑張った甲斐がありましたよ、このカレーにたどり着いて。いやほんとに」(島田記者)


お腹を満たしたあとは、寝床へ…2段ベッドの狭いスペースに3人が寝るんです。夏の2カ月間におよそ20万人が訪れる富士山。肩を寄せ合って一夜を明かすのが山小屋の流儀なのです。


「明日は4時半から行かないといけませんから、早めに寝て起きます。おやすみなさい」(島田記者)

山頂の手前にまたも急勾配!全員登頂できるか

午後8時に消灯。8時間半ほど睡眠時間を取って・・・


「おはようございます。朝の4時半ですね。今日はいよいよ山頂に向かいます」(島田記者)


山頂でご来光を拝む多くの登山者は深夜に出発。しかし、このツアーでは、体力と安全面を考慮し、そこまで無理はしません。気温6度。まだ薄暗い中を登っていきます。


午前5時半、東の空から、ご来光が…


「きれいですね、いいタイミングで」(藤本さん)


ご来光に背中を押され、標高3400mの9合目へ。山頂までの標高差はおよそ300m。最後に急勾配の岩場が待ち受けていました。


「大丈夫ですかー?ここからが勝負です」(登山ガイド)

「ひょえ~!これ登るの!?すごい岩場、すごいなこりゃ・・・よ、よ、よ、よ。すごい風、すごい崖だよ、ひえ~」(島田記者)


富士登山初めての藤本さんと、日常を離れた達成感を求める白井さん。無言で、1歩ずつ登ります。


(Q.あと少しですが?)

「きつい・・・ふんばりどころですね」(藤本さん)


「右手に頂上見えてますね、あのくぼんで水平になっているところ。あそこが頂上です」

「本当にあと一息だ!本当にあと一息ですよ!鳥居越えた10m先がもう頂上です!がんばってください!!」(登山ガイド)


ガイドさんに励まされながら、てっぺんまでもうひと踏ん張り・・・

午前4時半に山小屋を出発してから3時間。やっと山頂にたどりつきました。


「やったあ!」

「来た来た!やった!みんな元気に着きましたよ!」

「山頂?山頂着きました!?(笑)山頂来ましたよ!頂にやってまいりました!バンザーイ」(島田記者)


1人も脱落することなく、登頂を果たしました。


「願い叶いました」(藤本さん)

「よかったですね」(島田記者)

「はい、皆さんのおかげで(笑)」(藤本さん)

「よかったです!!」(白井忍さん)

(Q.全員みなさん体調不良もなくゴールされましたもんね)

「息も絶え絶えだよね、ははは、実をいうと(笑)」(白井忍さん)


中高年だけの富士登山ツアー。その人気の理由は、非日常の達成感と、それを後押しする優しさにあふれていたからでした。


「いやー、人にやさしい中高年の富士登山ツアー、本当に魅力的なツアーでした。わたしもこれだったらもう1回きてみたいと思います」(島田記者)

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特集

2019年9月2日

出荷直前のウナギが火事の犠牲に 難を逃れた5000匹も出荷断念 「命を無駄にしたくない…」窮地に立たされた養殖業者が選んだ道は

特集

出荷直前・・・火事で3000匹のウナギが災難

 神戸市西区の田園地帯にあるウナギ養殖会社「神戸養鰻(こうべようまん)」。海から離れたこの場所で、六甲山の地下水を使ってウナギを育てています。

このウナギ養殖場で火事が起きたのは7月15日。原因は水温を保つために水槽に入れていたヒーターの不具合でした。およそ10年の試行錯誤の末、ようやく商品化にこぎつけ、「神戸美人うなぎ」の名で世の中に広めていこうとしたウナギ3000匹が、この火災で犠牲になりました。


(Q.そこにいたウナギはどういう状態ですか?)

「もう丸焼け状態です。もう出荷の段階に入ってたので…まあ仕方がないですけどね…」(神戸養鰻・楠原真社長)


難を逃れた5000匹も

(Q.こっちは生き残った?)

「そうです、なのでこんなに元気な…エサも一応やってるんでね、生きてるんですけど、実際人の体に入る物なのでそこはやっぱり安心安全という観点から、あかんもんはあかんで諦めなしゃあない」(楠原社長)


火元から遠い水槽にいた5000匹ほどのウナギは被害を免れましたが、ススなどを吸い込んでいる可能性があり、出荷は断念せざるを得ませんでした。


「こういうやつは異種って言って日本の川に放したらあかんのですよ、生態系を崩すので、ですんでもう殺すか、殺処分ですよね」(楠原社長)


八方ふさがりの中・・・あの「スマスイ」が動いた

 火災から1ヵ月後。養殖場にやってきたのは、須磨海浜水族園の飼育員。残ったウナギを処分しないで済む道はないかと、社員達が引き取り先を探した結果、須磨海浜水族園が一部を引き受けてくれることになったのです。


「純淡水で飼われてるんですよね」(須磨海浜水族園 魚類飼育課・東口信行さん)

「そうですよ、六甲の伏流水、地下水」(楠原社長)

「なりやすい病気って何がありますか」(東口さん)

「ここまで大きくなってきたらそんなに発生することはないと思いますけど」(社員の男性)


ウナギの飼育方法について、細かく確認します。


「このまま放っておいたら焼却処分になってしまうのでね、それはできるだけ避けたいなってみんな思っているので」(楠原社長)

「基本的には水族館って一般の方からの引き取りはしてないんですね。ただ今回はちょっとまた話が別で、出荷できなくなったら下手したらどうなるんだってところと、(今回引き取る)ビカーラ種は飼ったことがないので、水族館の飼育技術をあげるというか」(東口さん)


「須磨水族園ってみんなが知ってる大きな水族館で、そこで我々が養殖して育ててるウナギがたとえどんな水槽であろうと飾られるっていうか展示されるってことはすごく我々にとっても誇らしいことなので」(楠原社長)

「ありがとうございました。大切に飼育させて頂きますんで」(東口さん)

「よろしくおねがいします」(楠原社長)

神戸市須磨区の須磨海浜水族園。


「うん、全然元気そう」


神戸養鰻からやってきたウナギは、36匹。しばらくはバックヤードで様子を見ることになりました。飼育員たちは、水槽に入った36匹の様子をじっと見ながら・・・


「かわいいっすね~」

「顔がな」

「目でかいからな」


「神戸養鰻さんもすごい喜んでくれてらっしゃったので、たぶんウナギめっちゃ大切に飼ってらっしゃるんですよね。僕たちも飼育員なのですごくお気持ちは分かるんですよね。その気持ちにちょっとでも応えられたら、と思っています」(東口さん)

さらに、未来の調理師たちのもとへ

 それから3日後。神戸養鰻の社員たちがウナギ100匹を持って向かったのは、神戸市中央区にある調理師専門学校です。出荷できなくなったウナギを、調理師のタマゴたちの練習のために、無償で提供することになったのです。


「この3本の指結構使います、こう持つ感じ」(神戸養鰻・楠原社長)

「うわ動く!」(学生)

「女の子達も乱暴に手つかまれたらいややろ、ウナギといっしょ(笑)」(社員の男性)


参加したのは今年4月に入学した1年生です。


(Q.ウナギさわったことある?)

「ないです」(女子学生)

(Q.さわってみてどう?)

「ヌルヌルです(笑)」(女子学生)

ウナギを触るのも初めての学生たち


「骨の上を包丁が入っていく感じ」

「生きてるから…動くので、いつもの魚みたいに骨のところに上手に包丁が入らないです」(女子学生)

(Q.なんで参加しようと?)

「いま日本料理行こうかなって迷ってて。いや~難しいですね」(男子学生)


なんとかウナギに串を打ち、焼き上げるところまで、やり遂げました。


(Q.普段ウナギを授業で使うことはありますか?)

「ウナギはもうないですね。食材自体がやっぱり高いですし。学生は本当にみんな生き生きして、初めての経験ですけども、生きたウナギをさばけるという機会を与えていただいてありがたいなと思ってます」(神戸国際調理製菓専門学校・石髙晃二先生)

命を無駄にしたくない、その思いがつないだ新たな縁。


「彼らは特にこれから料理人で育っていく人たちだし、そういう人たちがウナギにもっともっと興味を持って、今後この中から『神戸うなぎ』をちょっと扱ってくれる料理人なんかでも出てきてくれたら素晴らしいですけどね」(神戸養鰻・楠原社長)


※火災にあったウナギは、一般の方には譲渡されていません。


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