ウワサの「元気でまっせ体操」どんな体操?
そのウワサの体操をみんな知っているのでしょうか?大東市民に、まずは聞いてみました。
「大東で有名な体操があるって聞いたんですけど知ってます?」(上田剛彦アナウンサー)
「老人を対象にした体操をやってるのは聞いたことがあります」(男性)
「大東で有名な体操があるって聞いたんですけど?」(上田アナ)
「えっ・・・元気でまっせ大東」(女性)
「有名かどうかは分かんないですけど・・・元気でまっせ体操」(子ども連れの女性)
「元気でまっせ体操!?ご自身でやってるわけじゃない?」(上田アナ)
「ではなくて、おばあちゃんがやってるんです」(子ども連れの女性)
どうやら「元気でまっせ体操」という名前で、高齢者向けの体操らしいんです。そこで、ご高齢の方にしぼって30人に聞いたところ22人が「知っている」と回答。確かに有名なようです。
大東市のみなさんに「ウササの体操」について聞いてみました
「今、公民館で行われている体操を早速、のぞいてきます」(上田アナ)
“次は前でパー4回。パー、パー・・・”
お手本のDVDを見ながらする体操みたいですね。
“つま先。かかと。つま先。かかと。戻して!”
この「大東元気でまっせ体操」は、文字通り、大東市のオリジナル体操。考案者の一人である大東市の職員、逢坂さんに伺います。
「この体操の目的ってどんなところにあるんですか?」(上田アナ)
「高齢者が転倒して、痛い目にあったり骨折したりしないようにそれを目的としています」(大東市 高齢介護室 逢坂伸子さん)
つまり、転倒を防ぐためにつま先やかかとを念入りに鍛えているんですね。
「骨折すると治るまでしばらく安静にしますよね。それで寝たきりの道に進んでしまうんです。本人の望まないことがちょっとした転倒で起こってしまうので、それを(体操で)防ぐためです」(逢坂さん)
大東市オリジナル「元気でまっせ体操」です
「元気でまっせ体操」は転倒防止、ひいては寝たきりの道に進むのを食い止めることが目的なのです
人生の先輩方に混じって私も参加させていただくことにしました。
「ふくらはぎが張るぐらいに上げてくださいね」(逢坂さん)
(しばらくつま先やかかとの上げ下げを続けて)「この運動、簡単すぎませんか?」上田アナ)
「簡単に見えますけど、この動きを日常生活ですることありますか?」(逢坂さん)
(ちょっと考えて)「ないですね」(上田アナ)
「ないから、かかとが硬くなってつまずくようになるんです。とっても大事な動きです」(逢坂さん)
逢坂さんは、理学療法士の資格を持つリハビリのプロ。その視点から、理にかなった体操をつくりました。座ってやるだけでなく、立ってやるバージョンもあります。
「横に押し出して前へ。腕を広げながらしゃがみまーす」(逢坂さん)
「ちょっと武道の動きですよね。どういう効果があるんですか?」(上田アナ)
「ゆっくり動くことでしっかり筋肉がつきます」(逢坂さん)
「あつ!」(逢坂さん)
「汗かいてきましたね」(上田アナ)
この「大東元気でまっせ体操」は2005年に誕生しました。“75歳以上の人にもできるラジオ体操”というコンセプトで、最初は1団体20人からスタート。以来、着実に広がり・・・
「いま122団体がやってます」(逢坂さん)
「122団体!?」(上田アナ)
「2200人を超すぐらいの方が週1回どこかで体操しています」(逢坂さん)
「座る」のと「立つ」のを合わせて30分ぐらい。 けっこうな運動になりました。
理学療法士の視点から考え出された動きです
ゆっくりな動きが続くんですが、いつの間にか汗が出ていました
「75歳以上の人にもできるラジオ体操」を全国で122団体が行っています
介護費用が激減!ウワサの「元気でまっせ体操」
ナゼここまで広げることができたのでしょうか?そこには、高齢者を「その気にさせる」工夫がありました。
「大阪なので商売人の方が多いです。なのでもうかる話好きですよね。損すること嫌い。お風呂入れてもらう介護で20万円使うのか、元気なままで20万円でハワイ旅行行くのかどっちが良いですか?というような売り込み方をしました」(逢坂さん)
「介護になったら大損ですよというのを伝えたと?」(上田アナ)
「そうです。キャッチコピーを考えました。それが“寝たきりならんで儲かりまっせ”」(逢坂さん)
もうかる話に乗った、おばあちゃまたち。どんないいことがあったかを聞くと?
「今までマッサージ毎月1回行ってましたけど今は1年に1回」(84歳女性)
「えー、だいぶちゃいますね」(上田アナ)
「マッサージ1回行ったらやっぱり3000円要りますから」(84歳女性)
「(体操を始めて)誤嚥がなくなって助かってます。楽にご飯が食べられます」(73歳女性)
「ホントに!?それ、儲かったどころか・・・(笑)」(上田アナ)
「元気でまっせ体操」を考案した大東市・高齢介護室の逢坂伸子さん
「元気でまっせ体操」で何かいいことありましたか?
さらに大東市は、半年ごとに 参加者の体力測定を、無料で実施。日々の努力を「見える」ようにしてやる気をサポートしています。その結果・・・。
「介護保険の7段階の中で軽い方々2段階を要支援レベルって言いますけど、要支援レベルの方々がサービスを使うことがどんどん減っていってます」(逢坂さん)
特に顕著なのはココ3年。2015年度末に1133人いた、介護サービスを受ける要支援者は、昨年度末には、466人と半分以下に。この間、行政が負担する介護サービスの費用は、実に7億円も減ったというのです。
「重度になったときにしっかりと介護(保険)を使っていただくために、軽度の方はできるだけ住民同士で支え合う。そういう街になるとここに住んでおられる住民たちが一番安心して暮らせるということです」(逢坂さん)
要支援者一人一人が、今より少し元気になれば人手や財政が不足するなかでも、介護サービスが本当に必要な人に行き届くようになるわけです。
行政が負担する介護サービス費用が7億円も減りました
要支援者が元気になれば、介護サービスが本当に必要な人に行き届きます
この「元気でまっせ体操」には、国も注目。介護サービスに頼らない、良い取り組みとしてホームページで紹介しています。その影響もあって、「元気でまっせ体操」は実は、他の自治体にも広がっているんです。
「東北とかにも広まってまして、(岩手県)花巻市とか、福島の南相馬市とか」(逢坂さん)
これまで、50以上の自治体に出向いて指導したという逢坂さん。ただ、そこで「あること」に気づきました。
「大阪は商売人だから“儲かりまっせ”でいけたんですけど、特に東日本は全然だめで、儲かりまっせの話は通用しない。やっぱりそこに住んでいる方々の価値観、何を一番大事に生活されているかをつかむべきということがわかりました」(逢坂さん)
つまり、大阪以外の人をやる気にさせるにはその地域の事情に合わせた誘い文句が必要だったんです。例えば、福島県の山あいのまち、三島町(みしままち)の場合は・・・
「山の上に住み続けたい、その想いがあるならば“山から下りてちゃんと上がってこれる足腰を作る体操を”というと、みんなこぞって来ました」(逢坂さん)
広島県江田島市(えたじまし)の場合は・・・
「島なので、漁業ですよね。息子の手伝いをしたい。そのためには体づくりが必要なので自分の息子に役に立つための体操教室ですよと言ったらみんなが来る」(逢坂さん)
「なるほど。住民の気持ちを一番に考えるのが大事なんですね」(上田アナ)
これまで岩手県・花巻市など50以上の自治体に出向いて指導してきました
東北の人たちに“大阪流”は通じませんでした
地域ごとの事情に合わせた“誘い文句”が必要でした
誰かにおしつけられるのではなく、自分がやりたいから、やる。住民が主体の「元気でまっせ体操」は、大成功しています。
「やっぱり人間自分でないと、自分の体は治せない。医者は治してくれません」(元気でまっせ体操に参加する女性)
自分でないと自分の体は治せない。自分がやりたいから「元気でまっせ」体操をするんです