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2019年11月15日

【ウエダのギモン】フォント産業最前線 業界最大手に聞くホントの話 大ヒット映画「天気の子」、東京オリンピックにも大貢献!?

特集

 何気ないタイトルの文字に貢献した会社があるということなんですが、そもそもフォントを作るってどんな会社なのか?いったいどういう仕事なのか調べてきました。

「大阪・大国町にやって来ました。そのフォントを作っているというウワサの会社がこちらです。わ~っ、立派な建物ですよ!」(上田剛彦アナウンサー)
 創業から実に95年にもなる「モリサワ」。想像以上に大きなビルでした。それもそのはず、社員は300人を超す、業界最大手なんですって。

 まずはモリサワが、どんなフォントをつくってきたのかを教えてもらいます。


「こちらに私どもの書体、代表的なものを掲示しております」(モリサワ 広報宣伝課  三木 武 係長)

「これリュウミンって書いてますけど、あっ、明朝体(のことですか)」(上田アナ)

「そうです。うちの代表的な明朝体になりますね。明朝体といってもいろいろありますので、他にも○○明朝というのが何種類かございます」(三木さん)

「これ、はるひ学園?なんかオシャレな女の子が書きそうな(書体ですね)」(上田アナ)

「そうですね」(三木さん)


「隣りにもすごい字がありました。『すずむし』、何ですかコレ?」(上田アナ)

「ポップ系と言われる文字ですけども、ちょっとかわいらし目で、メニューやのぼりに使っていますね」(三木さん)

「おもしろい!数でいうとどれくらいあるんですか?)」(上田アナ) 

「たまたまここに掲示しているのはコレだけですけど、私どもで今、扱っている書体は1000以上になります」(三木さん)

「1000!?」


 これらのフォントを、例えば出版社や印刷会社、パソコンメーカーなどに販売して利益を上げているわけです。つい先日も、「今年の新作」として、6種類を発売しました。


 こちらは、「剣閃(けんせん)」というフォント。


「筆の息づかいがすごくするフォントですよね」(上田アナ)

「そうですね」(三木さん)

映画「天気の子」に貢献!

「いま1000ぐらいフォントがあるとおっしゃったじゃないですか。でも年間こうやっていくつも新しいフォントを出すんですよね。そんなに要るのかなぁ?なんて思っちゃうんですけど」(上田アナ)

「書体によって売り上げが左右されることもあります。それ(商品)を見たときに消費者の方がおいしそうとか、(この本)おもしろそうとか、”食いつき”が違ってきますので」(三木さん)


 だからこそ、モノを売るにはより効果的なフォントが常に必要とされ、モリサワはそれに応えてきました。


 その高い技術が認められた結果が。「♪愛にできることはまだあるかい・・・」 現在、大ヒット中の映画「天気の子」のタイトルに使われたことだったのです。

 

「なんていう字体ですか?」(上田アナ)

「A1明朝っていう書体になります」(三木さん)

「A1明朝?」(上田アナ)


 明朝体といっても山ほどある中で、「A1明朝」が選ばれた決め手は・・・ココ!


「隅のところがにじんだような形になってるんですよ。にじんでいることでどこか古めかしい感じを漂わせる、というイメージの書体になりますね」(三木さん)

「そうやって映画のタイトルに使われるっていうのはモリサワさんとしてはどう思います?」(上田アナ)

「ありがたいことです。それがA1明朝でって気づく方はおそらく少ないですけども、ただ、こういう文字ってなんとなくいいよねって分かっていただければ」(三木さん)

2020東京五輪のためだけに

 ほかにも、モリサワのフォントは暮らしの至る所にあります。例えば、「大阪駅」など、JR西日本のホームにある 駅名表示。「新ゴ」というフォントです。「羽田空港」では、発着便の案内表示に「UD新ゴ」というフォントが。「ガーナチョコレート」は商品名・・・ではなく、パッケージの裏の説明書きに。頭痛薬としておなじみの「バファリン」も裏面。「使用上の注意」などが書かれている部分ですね。そして、いま流行っているタピオカドリンクの人気店「台湾甜(てん)商店」。この店の名前には「解ミン」というフォントが。こうして見ると、あれもこれもモリサワ。ホントいろんなところで使われているんですね。

 たくさんの実績があるおかげで、さらに大きな仕事が舞い込んできました。実は、来年の東京オリンピック・パラリンピックでもモリサワのフォントが使われるというのです。
「公式フォントを私どもが提供させていただいています」(三木さん)


 公式フォントというのは?


「例えば印刷物(チケットやパンフレット)とか、会場誘導のサインですね。公式なものとして使うものはその書体を使うことになります」(三木さん)

「え?オリンピック専用フォントができあがるってことですか?」(上田アナ)

「もうできあがって納めています」(三木さん)

「(このためにわざわざ?」(上田アナ)

「この大会のためだけですね。東京2020が終わると、その書体を使う場所はもうないですね」(三木さん)

「え?そうなんですか?」(上田アナ)

 

 具体的にどんなフォントなのかは明かされていませんが・・・モリサワは「東京2020オフィシャルサポーター」。つまり、フォントで大会に貢献するというなんともスゴい会社です。

 そんなにスゴい会社で、そもそもフォントってどうやって作っているのでしょうか?開発現場におじゃましました。新しい文字を最初に作るデザイナーさんたちの席を覗いてみると・・・


「まさかの、手書き・・・」


 今の時代にずいぶんアナログな作業だなと思いますが、特に若手デザイナーにとっては欠かせない仕事だそうで・・・


「美しい線ですとか、文字のバランスの取り方ですとかを自分の手で学ぶんです」(モリサワ デザイン企画課 梅山嘉乃さん)

「じゃあ文字をデザインするのはパソコンでも、最初は鉛筆で書いて、その美しさを学ばないといけないってことですか?」(上田アナ)

「そうですね、感覚を養うといいますか」(梅山さん)


 手書きは 今でこそ若手の研修に使う程度ですが、ほんの1~2年前までは、ベテランでも、新しいフォントを作るときにまず手書きしていたそうです。

 デザイナーが試作した文字は、今度はディレクターと呼ばれる人たちが引き継ぎ、パソコンで形をひたすら調整していきます。


「特に太い書体になると、印刷するときにつぶれる心配が出てきますので空間のバランスを調整しています」(梅山さん)


 こうして一文字ずつ、地道な作業を続けていくらしいのですが・・・


「今、ちょっと思ったんですけど、アクという字なんですけどね、『さんずい』と『てへん』が隣り同士じゃないですか。そうしたら『さんずい」と『てへん』だけ作っておいてパッと入れ替えればいいのかなと思ったんですけど?」(上田アナ)

「実はおなじつくり、おなじへんでも組合せによってバランスを調整していまして」(梅山さん)

「え?」(上田アナ)


 別の文字で説明します。「組」と「縄」という漢字。どちらも同じ「糸へん」ですが、重ねてみると・・・なんと糸の大きさが違うんです。文字ごとに、最もきれいに見えるバランスが考えられた結果です。


「(作るのが)難しい字ってありますか?」(上田アナ)


「難しい字はやっぱり画数が多い文字がとても難しいです」(梅山さん)


「薔薇とかですか?」(上田アナ)


「そうですね。憂鬱の鬱とか」(梅山さん)


 ちなみに、作りにくい字は、ひらがな・カタカナにもあるそうなんです。なんだかわかりますか?正解は「へ」。「へ」という字は、ひらがなも カタカナも ほぼ同じ形ですから使いまわしてもよさそうな気がしますが、微妙な違いを出して作り分けているんです。その分、作業は高難度。

できあがるまでに10年かかることも

「一つのフォントが世の中で私達が使えるようになるまでどれくらいかかるんですか?」(上田アナ)

「短い物ですと2~3年ぐらい。長いとやはり5年。10年ぐらいかかった書体も過去には」(梅山さん)

「今、クラッとしました」(上田アナ)

 

 日本語ってひらがなカタカナだけじゃなくて漢字もあって本当に多いんです。それを一万語を一つ一つ見て一文字ずつつくっていきます。だから2年3年かかるのは当たり前。気が遠くなるくらいたいへんな仕事です。

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特集

2019年11月14日

【つかトレ】ミシュランガイド「ビブグルマン」に初掲載 コスパ最強!京都の和食

特集

 先日、「ミシュランガイド京都・大阪2020」が発売されました。そこに初掲載の“コスパ最強の京都の和食”というところに注目します。今回、ポイントとなる言葉が「ビブグルマン」。ミシュランの中にはこの「ビブグルマン」というジャンルがあって、価格以上の満足感が得られる料理を提供してくれるお店がラインナップされているんです。良質の食材を提供しながらも6,000円以下で食べられる、いわゆるコスパがいいお店なんです。


「ミシュランガイドの中でもビブグルマンともなれば、良心的な価格で、そして味の保証されたお料理が楽しめるというわけなんです。“コスパがいい”、最高の言葉ですよね」(塚本麻里衣アナウンサー)

こだわり抜いた!とんかつ専門店

「ビブグルマンには家庭料理でもある“とんかつ”のお店も選ばれているんです。一軒目はこちらのお店、京町屋っぽくてのれんもかわいい。女性でも入りやすいとんかつのお店です」(塚本アナ)


 京都市上京区にあるとんかつ専門店「空蝉亭(からせみてい)」。町屋を現代風に改装した、京都らしい趣が感じられるお店です。さっそく、こだわり抜いたというとんかつを・・・


「(運ばれてきたとんかつを見て)わ~っ、きれいなお肉!まん丸のとんかつって見た目が珍しいですね」(塚本アナ)

「ありがとうございます」(店長 古谷大貴さん)

「どんな豚肉なんですか?」(塚本アナ)

「冬眠熟成という、マイナス1度の気温を保ちながら1ヵ月熟成させています」(古谷店長)

「これ、熟成豚ということですか?」(塚本アナ)

「そうでございます」(古谷店長)


 空蝉亭で使うのは、手間暇かけ熟成させた豚肉。氷点下1度の場所に真空状態でおよそ1ヵ月置くことでミネラルが凝縮されてうまみが増し、かつ、柔らかなお肉になるんだそう。さらに熟成中、紫外線を当てます。酵素を活性化させ、素材のうま味を最大限まで引き出す熟成法です。


「豚肉からしたら驚きですよね。寒いし紫外線は当てられるし。しかも中がきれいなピンク色なんですけど」(塚本アナ)

「低温調理でじっくり揚げています。150度の温度で約20分ほど、時間をかけてお出ししています」(古谷店長)

「しかもシャトーブリアン!豚肉のシャトーブリアンはなかなかお目にかかれないので、(柏手をうって)ありがとうございます」(塚本アナ)


 牛肉でいうシャトーブリアンのようなヒレの中心部!を希少なお塩で。


「(一口試食)信じられないくらい柔らかい。うわっ、おいしい!身がフワフワ。とろけるような食感というよりは、豚肉のしっかりした肉感も感じられつつ、でも歯が通るフワッとした肉質。噛めば噛むほど豚のおいしいところの味しか出てこない。一生食べてられる」(塚本アナ)

 最高級のとんかつをいただきましたが、他にもこんな珍しい一品が・・・


「林SPF豚のリブロースの得厚です」(古谷店長)

「お名前がなんて?(塚本アナ)

「林SPFです。特定の・病原体・不在という英語の略でSPFという名前でございます」(古谷店長)


 はじめて聞く「林SPF豚」とは、抗生物質を抑えた飼料を与え、衛生管理が行き届いた千葉県の農場で育ったブランド豚のこと。関西でもほとんど出回っていない貴重な豚肉で、味が濃く、甘い脂が特徴です。


「ん~、たぶん最上級のとんかつだと思う。すでに豚肉に味付けしてあるのかなと思うくらい元々の味がめっちゃ濃いです。脂身自体もすごい旨みと甘みが強いし、でもしつこくないのであっさり食べられる。お肉もですが、食べているこっちもとろけますね」(塚本アナ)

居酒屋さん価格で本格割烹!

 こちらは京都市役所のご近所、「押小路悠貴(おしこうじ ゆうき)」。割烹料理店ではありますが、肩肘張らず楽しめる料理が売りのお店。季節の料理がご自慢ということで、まず出していただいたのが… 


「わ~っ!!」(塚本アナ)

「マツタケとタラの白子、雲子(くもこ)の小鍋です」(藤本オーナー)

「雲子っていうんですか?」(塚本アナ)

「もこもことしたところが雲に似ているので雲子といいます」(藤本オーナー)

「その下にたっぷり入っているのがマツタケですね」(塚本アナ)

「晩秋のマツタケと初冬の雲子の時期が合うのは本当に短い期間です」(藤本オーナー)

「バトンタッチの食材なんですね」(塚本アナ)


 まずは和食の要。松茸の風味がたっぷり染み出たおダシをいただきます。


「(一口すすって)わ~濃厚!口一面にマツタケ、おいしい!!」(塚本アナ)

「うちは(マツタケの)香りを大事にしたいので、傘の開き目の香りの強いマツタケを使っています」(藤本オーナー)

「湯気と上がってくるのと一緒にどんどん香りがきますね。マツタケと白子のコンビは初めてかもしれない。(口に入れて)ん~、ん~っ、先に白子が溶けてクリーミーなソースみたいな感じになるんですけど、やはり最後に口に残るのはマツタケです。これは贅沢よ。確かに秋と冬を同時に感じられるお鍋ですね」(塚本アナ)

「季節のおいしさを重ねるのが和食の良さでもありますね」(藤本オーナー)

 そんな本格割烹のお店ではありますが、こんな遊び心ある珍しいメニューも。


「ハンバーガーですか?!まさかこの雰囲気の割烹でハンバーガーが出てくるとは思わなかったです」(塚本アナ)

「遊び心ある一本として、季節の魚と野菜を使ったハンバーガーです」(藤本オーナー)


 そこは本格割烹。普通のハンバーガーではありません!甘辛く炊いたシャキシャキのきんぴら野菜と今が旬の高級魚「のどぐろ」のフライをサンド!味付けは和食でよく使われる、卵黄とだし汁・お酢を合わせた黄身酢で!!他では味わえない、斬新で贅沢な和風ハンバーガーです。


「ん~っ、おいしい!!のどぐろはたんぱくですけど脂の乗りがいい。そこに辛めのきんぴらが合わさって・・・それでも十分おいしいんですが、この酸味がきいたタルタルがサラッとさわやか。ハンバーガーとしていただいてますが、和の旬の食材が感じられるので、それがすごいなと思います」(塚本アナ)


 特別な日にも、仕事終わりのちょっと一杯にも。一流の味を気軽に楽しめる割烹料理店でした。

路地奥の隠れ家!ツウが通う京都の小料理店

 続いてやってきたのは京都・河原町。四条通りから一本南に入った通りへ。


「細い路地を入ったところにあるお店らしいんですが・・・(看板を見つけ)あっ、ここです。私が行きたいところ、『うり』さん!この道?」(塚本アナ)


 看板の場所から、人ひとり通れるくらいの細い路地を20mほど進むと・・・


「あっここかな?(中に入る)ごめんください。こちらうりさんでお間違いないですか?」(塚本アナ)

「はい、そうです」(店主 上間邦彦さん)

「(ホッ)探しておりました」(塚本アナ)


 細い路地の奥にひっそり佇む「お酒と食事 うり」。去年オープンしたばかりの小料理屋さんです。32歳とまだお若いご主人は、数々の割烹店で腕を磨いた和食の本格派。冬の人気メニューはこちらのおでん。ご主人が毎朝汲んでいるお水を使い、カツオと昆布でとったやさしいおダシで煮込まれています。中でも人気は、別の器で出される「卵」。これを…


「(卵を割り)わっ、わっ、わっ!ほらごらんなさいよ。とろとろの半熟!おいしそう!!(試食して)口の中でとろける食感。白ご飯にのせて食べたい」(塚本アナ)


 たまらず日本酒も堪能。おでんもお酒も体にしみわたります‥そして・・・

「鴨と九条ネギの小鍋でございます」(上間店主)

「お~っ、京都らしい一品。むっちりしたビジュアル。(口に入れて)ん~っ、噛めば噛むほど鴨の味。肉厚に切ってくださってるんですけど、身のほどけさ柔らかさが絶妙でおダシの味と合います。最高です」(塚本アナ)

「九条ねぎも水菜も最近、京都のおいしいものが出てるんで。九条ねぎもきょう買ったものです」(上間店主)

「きょうの朝、だからちょっと眠たそうなんですか?」(塚本アナ)

「わかりますか?ふだんから眠たそうって言われるんですよ。小さい頃の写真を見たらぬかから出たカエルやなあって言われました」(上間店主)

「(爆笑)でもどちらのお料理をいただいてもご主人の柔らかい丁寧な人柄が出てて本当においしいです」(塚本アナ)

 極めつきはシメでいただくこの中華そば。実はこのスープは、さきほどのおでんダシ!醤油などでほんのり味付け!飾らないこのシンプルさ、味で勝負されている証です。


「ん~、お醤油を足して味は濃くなってるんですけど、ベースに優しい澄み切ったおダシがあるので、スッと舌になじんできてくれますね。最後まで飲み切れるスープです」(塚本アナ)


「見つけちゃったなぁ!いいお店だなぁ。確かに路地を抜けて、ミシュランの調査員もこの店を見つけたらおおっ!となるはず…」(塚本アナ)

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特集

2019年11月13日

【ウエダのギモン】“偽薬(ぎやく)”はニセモノ?本物? プラセボ効果は増大する医療費抑制の特効薬になるか?

特集

 医療費がかなり増加していることはみなさんご存じだと思うんですが、“偽薬”って読んで字のごとく“ニセモノの薬”のことです。ニセの薬って怪しいと思いますよね。実はこれが“プラセボ効果”によって怪しくなくなるんです。“プラセボ効果”とは、まず一体どういうものなんでしょうか?“偽薬” の正体を探ってきました。

“プラセボ効果”を実験

 そもそも“プラセボ効果”とはどういうものなのか?「上本町わたなべクリニック」の院長、渡邊章範先生の監修のもと実験をしてみました。肩こりや腰痛などの痛みに悩む方々に“痛み止め”を飲んでもらうんですが、中身は薬の成分が全く入っていない“偽薬”。ただ、そのことは内緒にして『“新しい飲むタイプの痛み止め”の効果実験』として始めます。協力してくれるのは、ご覧の男女6人。普段どんな痛みで悩んでいるんでしょうか?


「私は腰がすごく痛いです。今も座ってるだけで痛いのと、月に何回かは寝返りができないぐらいの痛みがあります」(1番50代女性 腰に痛み)

「ずっと座ってパソコンを叩いていると肩とか腰が痛くなりすぎて、吐き気とかしてくるので、それ抑えるために市販の鎮痛剤を飲んでます」(5番40代女性 腰に痛み)

 みなさん普段からツライ痛みと戦っているんですね。果たしてこの実験で痛みは取れてしまうのでしょうか?


 それでは実験スタートです。(カップの液体を飲む参加者たちに)どんな味ですか?


「水を飲んでるみたい」「水みたい」(参加者たち)


 それもそのはず、みなさんが飲んだのはミネラルウォーターに砂糖を混ぜたただの砂糖水。それでも“痛み止め”だと信じている6人。30分後に痛みがどう変化したのかを確認します。

(ピピピ…)

「お疲れさまでした。30分経ちましたので。初めの痛さを10としたとき、今の痛さを書いてもらいたいと思います」(渡邊院長)


 さあ、一斉にフリップを見せてもらいましょう。(せ~のドン!)なんと6人全員、痛みの数字が減りました。念のため言っておきますが。これヤラセではありません!


「話聞いてる最中にだんだん痛くなってきたんですけど、それが今は全然取れているんです。けっこう体がポカポカしてる気がするんですけど」(2番50代男性 痛みが10から1へ)

「飲んで15分ぐらいしてからだんだん痛みが・・・今、すごく楽になりました」(1番50代女性 痛みが10から2へ)

「全身の血行が良くなってる感じで、首や肩がカチカチだったのが柔らかくなってますね」(4番50代男性 痛みが10から5へ)


 そう、これが“プラセボ効果”です。薬を飲んでいなくても思い込みによって効果が得られることもあるんです。ここで皆さんに本当の実験の趣旨を伝えると…


「今回飲んでいただいたのは、普通の、水です」(渡邊院長)


「…(笑)」

「え~っ?」

「水!?」


 すみませ~ん。そりゃみなさんショックを受けますよね。


「水だったんですね」(2番50代男性)

「(これから)砂糖水飲んでいこかな、朝に」(1番50代女性)

「いいかもしれないですね」(2番50代男性)

「薬と思って」(1番50代女性)


 「私は薬を飲んだからきっと良くなる」暗示のようなものが実際、体に影響を及ぼすことがあるんですねぇ。

新ビジネスに乗り出す青年社長

 そんな“プラセボ効果”をビジネスチャンスととらえた方が滋賀県にいます。


「このビルですね、え~とですね、家庭教師派遣センターとかが入っている。(郵便受けを見て)あったこれだ、ここです。『プラセボ製薬株式会社』って書いてあります」(上田剛彦アナウンサー)


 ビルの2階にオフィスがあるということなんですが…。(狭い通路を進んでいく)中は予備校の一室のような静かな部屋。カメラさん通れますか?


(立って迎えてもらう)

「こんにちは、おはようございます。どうぞよろしくお願いします」(上田アナ。ええと・・・製薬会社っていうのは」(上田アナ)

「ここだけになります」(プラセボ製薬 水口直樹 代表)

「ここですか?」(上田アナ)

「ここの一角だけでやってます」(水口さん)

「この畳1畳くらいの?」(上田アナ)


 「プラセボ製薬」の社員は水口さんただ一人。シェアオフィスで一人分の席を借りて事務所にしています。


「プラセボ製薬ってどういう会社なんですか?」(上田アナ)

「薬効成分の入っていない薬の形をした食品をお客様に販売しているという会社になります」


 実は以前、大手製薬会社に勤めていた水口さん。今、外部の健康食品工場で「偽薬」を製造し、アマゾンなどインターネットで販売しています。

 実物を見せてもらうため、在庫が置いてある場所へ案内してもらいました。


「ほとんど通り挟んで向かいですよね」(上田アナ)


 さっきいた事務所とは目と鼻の先。トランクルームに「偽薬」を保管しています。


「ここです」(水口さん)

「お~っ、確かに、はっきり言うと段ボールしかない」(上田アナ)


「プラセプラス30。何かの薬効の含有量みたいですね?」(上田アナ)

「これは粒の数、錠剤の数が30なんです」(水口さん)

「(箱から錠剤を取り出し)この大きさとか質感とか完全に薬ですね」(上田アナ)


 プラセプラセ30は一箱30錠で999円(税込)。ホンモノさながらの見た目ですが、中身のほとんどが「還元麦芽糖」という甘み成分と「カルシウム」で作られていて薬の成分は全く入っていません。

「なぜ偽薬を販売することになったんですか?」(上田アナ)

「今、医療費が増大しているということがありまして、それが薬の飲み過ぎによって拡大している面もあるのかなと思っています。それを解消する一つの手段として、偽薬がつかえるのではないかなと考えました。


 今、日本の薬代は7.5兆円にまで膨らんでいて、理由の一つに薬の飲み過ぎが考えられています。この問題を解決するため、水口さんは「偽薬」の普及を思いつきました。


「偽の薬を作るっていうことに対する周りの反応はどうですか?」(上田アナ)

「実際に販売してみると“やっぱりこういうの必要だよね”とかプラスにとらえてくれる人が非常に多くてですね。僕ももっと広げていかないととプラスに考えています」(水口さん)

増大する薬代を抑えられるか?

 水口さんが退職してまでやりたかった「偽薬」の普及。いったいどんな人たちが使っているのでしょうか。門真市にある介護施設です。1カ月前から水口さんの「偽薬」使い始めたそうです。


「ここでは認知症の方がほとんどなんですけども、夜に眠れないと言って、お薬を欲しがるときにを渡します。ドクターからのお薬だけだと、1日に何錠っていうのが決まっているので、それ以上服用できないのでそういうときに“偽薬”を服用してます」


 「偽薬」を使い“プラセボ効果”を利用して増える薬代を抑えたい。水口さんの情熱は広がりつつあります。現状、個人で購入している人が多いとのことです。薬を飲みたがる人から相談を受けることもあるんですが、形状や色、大きさとさまざな要望を聞くそうです。ただ、「偽薬」を作るにはけっこうコストがかかります。いろんな種類が作れないのが水口さんの悩みだそうです。

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特集

2019年11月12日

【特集】太もも周り120センチ 足首1メートルのむくみ がん治療の大きな代償 全国10万人「リンパ浮腫」患者の日常

特集

 日本人の死亡原因1位の「がん」。そのがん手術の後遺症で、足や腕が大きくむくんでしまう病気があります。全国に10万人以上いるといわれる患者たちを取材しました。

腕や足がむくむがん手術の後遺症

「ここ数年で非常に状態としては良くなっているというところかと思います。ね、良くなりましたね」(医師)


「はい」(太田さん)


 太田双美子(おおた・ふみこ)さん、54歳。長年、ある病気と闘っています。初めてこの病院に来たときはひとりで歩くことができませんでした。


「太ももが120センチ。ひざ、足首が1メートルちょっとです。もう完全な寝たきりです、5年間」(太田さん)


 太田さんは20年ほど前、子宮がんを患いました。手術でがんは治りましたが、その後突然、足がむくみ始めました。


「すごく見られて、すごく嫌で嫌でしょうがなくて。殻に閉じこもってたんです」(太田さん)


 太田さんが診断されたのは、「リンパ浮腫(ふしゅ)」という病気でした。

 私たちの全身に張り巡らされたリンパ管。この管の中を、余った水分や細菌などの不要物が流れています。がんを患った場合、がん細胞が管を通って全身に広がらないよう、手術で「リンパ節」を取り除くことがあります。しかし、この治療をすると、足や腕に液がたまり、むくんでしまうことがあるのです。乳がんや子宮がんの治療を受けた後に発症する人が多く、手術を受けた2割の人がリンパ浮腫になるというデータもあります。患者は10万人以上いると言われています。


「リンパ節と言われる、体の中にある大事な部品を失ってしまったわけですね。その代用品がないわけです。ということは治る、元に戻すということは不可能なんですね」(リムズ徳島クリニック 小川佳宏 院長)


 徳島市にある「リムズ徳島クリニック」。リンパ浮腫を専門的に扱う数少ない病院のひとつで、院長を務める小川佳宏(おがわ・よしひろ)さんのもとには全国から患者が集まります。大阪市に住む西川敬子(にしかわ・けいこ)さん(74)もそのひとりです。


「子宮頸がんの、がんですよね。子宮のほうはみんなとられて・・・」(西川さん)


 西川さんも18年前、がんの手術のあとに足が大きくむくみました。


「こんなぐらいの足がこんな太くなって。(がんの治療をした)先生は手術して悪いところとったんだからそれでいいじゃないの、みたいに言いはるんですよ。自分ではこんなんなるはずやなかったのにって思うじゃないですか」(西川さん)


 「治ることはないが、命が助かったのだから仕方ない」。当時の医師の言葉に、突き放された気持ちになりましたが、自ら情報を集め、この病院にたどりつきました。以来ずっとこの病院で治療を続けています。

マッサージと包帯交換をひたすら繰り返す治療法

「(膝下回りを測定しながら)入院初日が61.4センチやったのが、(今は)50.4センチくらい」(理学療法士)

「ほんなら10センチぐらい細なったということやね」(西川さん)

 

 リンパ浮腫の主な治療の一つに、たまったリンパ液を正常に機能している管まで押し出すマッサージがあります。


「(マッサージを受けると)全然違います。足が軽くなった。うれしい!」(西川さん)


 マッサージのあとは、足に包帯を巻きつけます。リンパの液がたまりにくくなるように、圧迫するのです。


「私らが巻くより先生のほうが上手」(西川さん)


 有効な治療法はほかになく、毎日ひたすらマッサージと圧迫を繰り返す。これがリンパ浮腫患者の生活です。

 1ヵ月の入院を終えた西川さん。大阪市の自宅に戻りました。


「ちょっと買い物に行こうかなと」(西川さん)

(Q普段はどのぐらい外に出ますか?)

「そんなにしょっちゅうは出てないね。女物(の靴は)入らへんやん。女物でもちょっと大きめ、今までは男物の草履履いてましたよ」(西川さん)


 「徒歩2分」のスーパーに行くのにも10分ほどかかります。普段の買い物だけでも大変な重労働です。


「(ソファで汗を拭いながら)毎日(買い物に)行ったらいつか熱出そうな気がするねん。疲れる、疲れたら熱が出る」(西川さん)


 リンパ浮腫の患者は免疫機能が低下していて、38度以上の高い熱と大きな腫れを引き起こす感染症にかかりやすい状態になっています。


「普段から抗生物質と痛み止めは必ずもらいにいく。(薬が)切れたら怖いから。私のお守りみたいなもんやわ」(西川さん)


 感染症が起きたりむくみがひどくなったりしないよう、西川さんは毎日、幅の違う数種類の包帯22本を両足に巻くケアを自分で続けています。


「毎日やるのは大変です、疲れます。でも仕方がないですよね、私らの仕事はこれやから。経済的にも大変です。(包帯は)高いですよ。1足2万円くらい」(西川さん)


 半年ごとに買い替える包帯の値段は、あわせて4万円ほど。これに加えて入院などの治療費も必要となり、保険は適用されますが、それでも金銭的な負担は大きいと話します。

原因違いで保険外 先天性リンパ浮腫患者の怒り

 しかし、さらにつらい悩みを抱えた患者もいます。


「こんにちは」


 泉佐野市に住む森洋子(もり・ようこ)さん(70)は24年前、先天性の「原発性リンパ浮腫」と診断されました。当時は、リンパ浮腫の治療に不可欠な包帯やストッキングの購入に保険が適用されておらず、森さんは患者会を立ち上げてさまざまな活動を続けてきました。


「ストッキングが保険で買えるようになったらいいなと。(値段が)高かったですからね」(あすなろ会 森 洋子さん)


 12年前、森さんらは15万人分もの署名を集め、保険の適用を認めるよう厚生労働省に求めました。しかし・・・

                                                     「びっくりしましたよ、え~!?って。なんのために私やってきたの、みたいな。ショックでした」(森さん)


 適用が認められたのは、がんの術後に発症したケースだけ。全国に3600人ほどいると言われる、森さんのような先天性の患者らは除外されたのです。その理由について厚生労働省は・・・


「原発性リンパ浮腫には原因がわからないケースもあり、保険を適用するかどうかの基準を明確に作れない。新しい技術ではっきりとした診断ができるようになったとしても、財源が限られているので見直しがどこまでできるかわからない」

「同じ病名、リンパ浮腫。同じ弾性着衣を使って包帯を巻いたりする治療法で、同じ効果があるわけですよ。なのに原因が違うっていうだけでだめなわけですよ」(森さん)

 身体的・精神的な負担が重くのしかかるリンパ浮腫患者。一生付き合わなければいけない病気だからこそ、金銭的な負担だけでも軽くなる日が待たれます。関係する学会の理事長らが連名で先天性のリンパ浮腫の患者にも保険を適用するよう求めていますが、今も状況に変わりはありません。
「リンパ浮腫と診断されたすべての方に保険が適用されたら・・・それが夢です」(森さん)

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