難波で白昼堂々と落書き!?トンデモ犯罪と思いきや・・・
「難波・道頓堀に来ました。この辺りに堂々と落書きしている人がいるというんですが・・・。(ナンバで有名な戎橋の上から辺りを見回すが)どうでしょうかね?さすがにこんな昼間から落書き、やっぱり夜中とかじゃないですかね。ちょっと探してみましょうか」(上田剛彦アナウンサー)
落書きの現場をなんとかおさえようとしばらく探しましたが、道頓堀といっても戎橋や御堂筋付近ではないようです。範囲を広げてもう少し西へ。すると、そのとき!
「あ、あれあれあれあれ。あれですね。壁にスプレーで、ペイントしてますよね。こんな昼間から堂々と。ちょっと行ってみましょうか」(上田アナ)
(駆け寄って)
「エクスキューズミー。あのうココ、No落書きです」(上田アナ)
「落書きじゃない、ちゃんと仕事してる」(外国人男性)
「落書きじゃない?え?お仕事なんですかコレ?」(上田アナ)
「はい」(外国人男性)
大阪観光のメッカ「難波・道頓堀」、こんなところにメーワク落書き犯が・・・?
ホントにいた~!しかも真っ昼間から堂々と
ちょっと怖そうな外国人だけど、ちゃんと注意しないとね
いきなり流暢な日本語で返されたことの方がびっくりしましたが・・・ちゃんと見ると、落書きじゃありませんよねコレ。
「確かに、まったく迷惑がかからないようにシートも敷いてコーンも立ててるんですね」(上田アナ)
しかしココで絵を描くって、どんな仕事?
「この辺は道頓堀アートストリートになる」(外国人男性)
「アートストリート?」(上田アナ)
近くにはすでに完成した絵が整然と並んでいました。ここは、道頓堀川の両サイドが遊歩道として整備されている「とんぼりリバーウォーク」。この通りの一部で実は今「道頓堀アートストリート」というプロジェクトが進んでいて、今年中に35の作品を並べ、観光名所にしようというんです。ただ板を貼っただけ壁が、アートを彩るキャンバスに。
この日、絵を描いていたのは、アメリカ人のエリック・スヴァリさん。日本人の奥様と堺市に住む、プロの絵描き、肩書きはアーティストです。下書きもせず、スプレーだけで描き上げていきます。
「普段はどんな絵を描いてらっしゃるんですか?」(上田アナ)
「普段はいろいろ、Tシャツのデザインとか店の中の壁も描きました。新町と堀江のシャッターも」(エリックさん)
「いつから日本にいらっしゃるんですか?」(上田アナ)
「11年半前ぐらい」(エリックさん)
「まさかそのとき、この道頓堀川のココに絵を描く事になると思ってました?」(上田アナ)
「全然」(エリックさん)
「ないですよね。じゃあ気持ちとしては最高ですか?」(上田アナ)
「うん(笑)」
ちなみに、いま描いている絵は難波とも関係が深い歌舞伎役者と、アメリカの有名なラッパーを融合させた作品、だそうです。
「とんぼりリバーウォーク」の両岸で進行中の「道頓堀アートストリート」プロジェクト
堺市在住のアーティスト エリック・スヴァリさん
テーマは歌舞伎役者とラッパー、日米文化のフュージョンですね
でもナゼ、こんな思い切った取り組みが始まったのでしょうか?遊歩道の管理を大阪市から委託されている南海電鉄、その担当者に尋ねると?
「戎橋に比べて賑わいや人通りが少ないエリアですので、アートの力を使って、人が立ち止まって楽しんでいただけるエリアになればなと思ってます」(南海電気鉄道 島津直生さん)
同じ遊歩道でも戎橋付近は、今や世界中から人が集まる一大観光地。しかし、その戎橋から500mも離れていないのに西側の遊歩道はというと・・・人はあまり見当たりません。夜になると、多少ライトアップされ、オシャレはオシャレなんですけど、やっぱり人はまばらで、寂しい気もします。ここにアートで賑わいを作ろうとしているんです。
アートを使ってにぎわいを呼び込みたい
お隣りの有名観光スポット「戎橋」からわずか500メートルしか離れていないのに大きく差をつけられてしまいました
「道頓堀アートストリート」。この取り組みに、付近で働く人たちの反応は?
「殺風景ですしね、何もなければ。こうやってアートにしていただけると、それに対してまたいろんなお客さんが集まってきてくれるので、非常にいいかなと思います。あんな絵は書けません、僕には」(スポーツ用品店の社員)
川沿いの飲食店の店長は・・・
「ココに座ったお客さんは喜んで見てくれているので、ココの席の価値も上がりますし(アートは)増やしたらいいと思います」
地元の商店街の理事を務める男性は、賑わいとは“別の効果”も期待しているといいます。
「落書きをする方には“アートに対してはいたずら書きをしない”、というルールがあるみたいで、こういう風に川沿いをずっとアートで飾っていただければ、おそらく落書きをする方はその上からは書かないんでしょうね」(地元商店街の理事)
迷惑行為が減ることがありがたい様子でした。
地元の人たちも大いに期待しています
アートを飾ることによって悪質なメーワク落書きを防止する効果も
ただ、話はココで終わりではありません。アーティストを連れてきたのはこちらの若い二人。彼らは180(ワンエイティー)という会社を立ち上げ、壁に描くアートで、新ビジネスを手がけているというのです。
名付けて「ウォールシェア」。実はこれ、いまこの記事をご覧のみなさんももうかるかもしれない、という話です。その仕組みが分かる、1枚の絵があるというのですが・・・
「こちらになっております」
「(2人が案内してくれた絵を見て)めちゃめちゃかっこいいじゃないですか」(上田アナ)
この絵に隠された「儲かる仕組み」って、ナニか分かりますか?ポイントは赤丸で囲んだこのマーク。
「駐車場の予約アプリを作っているアキッパ株式会社さん」
「よく見ます」(上田アナ)
180(ワンエイティ)株式会社の上仲 昌吾 代表(左)と川添 孝信さん(右)
この絵が新ビジネス「ウォールシェア」ということなんですが、どういうしくみなんでしょう?赤い丸に注目です
駐車場の予約アプリを開発するアキッパ株式会社
アート作品に見えて、実はこれ、企業のアート広告だったんです。ということは、
「広告主さんから広告料をいただいております。そのうちの一部を壁主さんに対してお支払いすることで、何もなかった壁から収益を得られる)」(180株式会社 上仲昌吾 代表)
だから、みなさんの自宅でも職場でも、使っていない壁にアート広告が出れば収入が得られるというわけ。これが「ウォールシェア」。壁を、持ち主と広告主とアーティストで共有しましょうという意味です。
「こうやって見たらいろんな作品があり1個1個見ていくなかに実は広告も入っているのか」(上田アナ)
「そうですね」(上仲代表)
この場所では、作品35点のうち10点ほどがアート広告になる予定です。
使っていない壁を持ち主と広告主とアーティストで共有するビジネスです
アートの力が人やにぎわいを集めお金も集めます
二人のアイデアは、アートが持つ力を世界各国で感じたのがきっかけでした。
「治安が悪かった場所が、アートによって良くなったりとか、過疎化の村がアートによって復活したりだとか、そういう事例はたくさんあるので、日本にもそういう場所をもっと作って行きたいなと思っています」(180株式会社 川添 孝信さん)
壁に絵があることで人が集まり、犯罪が起こりにくくなるというのです。
「具体的に言うと例えばどういう国でどういう所で?」(上田アナ)
「有名なところで言うと、ベルリンの壁も、今アートで有名ですし、ハワイのカカアコという所も昔は治安が悪かったんですけど、アートで今はもう誰もが行く場所になっています。そういう場所はたくさんありますね」(川添さん)
「じゃあ実際にアートによってその地域の経済的価値が上がっているってことですよね」(上田アナ)
「と思っています」(川添さん)
180株式会社 川添孝信さん
ハワイ・カカアコ地区。アートによって治安がよくなり、経済的価値もあがっていくんです