キャスト -CAST-

番組で紹介した情報

特集

2020年3月16日

マスクを高額転売?連日開店前の薬局に並ぶ中国人集団を追跡 暗躍するブローカーの影を追った

特集

「列に割り込んで…」薬局前でケンカも 

横浜にあるドラッグストアの前で殴り合いのケンカ。原因は…マスク。理由についてツイッターではこう噂されている。


「列に割り込んだ中国人がいてそれに怒ったフィリピン人が殴ったらしい」


日本各地で起きた、マスク騒動。そして、目を疑う値段で取引される「高額転売」。


ABCテレビ取材班は、その裏で暗躍する、中国人ブローカーの影を追った!


次々と手法を変え現れる「高額転売」

 新型コロナウイルスの流行とともに、街からマスクが消えた。必要とする人が増えれば、価格は高騰する、というのが経済原理。マスクの高額転売が始まった。


通常なら1枚10円程度が、2月上旬のショッピングサイトでは1620枚でおよそ32万円。1枚あたり200円になる計算だ。中には、マスク本体は1500円としながら、配送料を2万5000円に設定していたものも。


そしてまた、新たな手法が現れた。大手ショッピングサイトでマスクを検索し、安い順番に並べてみると…


「価格が1円というマスクが出てきます。1円、とても安いですし配送料を見てみても、299円ということでとても安く感じるんですが、3枚購入すると、マスク自体の値段は3円なんですが配送料が897円、つまり299円×3の値段になるんです」(記者リポート)


「マスク3枚を別々に包装して送る」ということなのだろうか。いずれにせよ、これでは1枚300円のマスクを買わされることになってしまう。


出品者を追い 中国・上海へ

さらに、オークションサイトではこんなことも。マスク960枚の価格がなんと99億円!さすがにこの価格では落札されなかった。出品者情報を調べてみると住所は、中国・上海。出品者の家を訪ね、出てきた男性に話を聞くと…


記者「ここに出品者の方はいますか?」

男性「いませんよ」

「彼は日本に住んでいます」

記者「元々ここに住んでいたのですか?」

男性「かなり前、10年前にね」

記者「でも住所はここだと…」

男性「戸籍がここにあるからね」

記者「彼は日本で仕事を?」

男性「それは知らないな」


ここは便宜上使われた実体のない住所だったようだ。3月に入り、中国ではマスクが店頭に並び始めたという。


「あ、ありました。この薬局では普通に売ってますね。結構在庫もあります」(ABCテレビ上海支局・南出拓平記者)


一時相場の10倍以上で売られていたこともあったが、工場での生産を増やし、現在は元に戻りつつあるという。

並んでマスク購入→猛ダッシュの謎

「高額転売」のうまみが少なくなった中国。舞台は日本へと移ったのか?


「午前7時半です。マスクを買うためでしょうか、すごい人数が並んでいます 」(記者リポート)


大阪・心斎橋筋商店街の中にあるドラッグストア。 最近、マスクやトイレットペーパーが品薄で 開店前から長蛇の列…などという光景を よくみかけるようになったが・・・。並んでいるのは中国人が多いようだ。


「まもなく午前9時です。お店のシャッターがあがりました。お店のシャッターが上がってお客さんが続々と中へと入っていきます。みなさん箱型のマスクを手にしています」(記者リポート)


並んでいたお客さんたちの目的はそのほとんどがマスク1人1箱限定だ。


と、その時。


「みんな走ってお店から出ます。あ、いままたひとり走ってどこかへ向かっています」(記者リポート)


マスクを手に入れるなり どこかへ向かって猛ダッシュ!たどり着いた先は… なんと、数百メートル南にある同じドラッグストアの系列店。再び1人1箱限定のマスクを購入し、そして…青いコートの女性が他の女性からビニール袋に入ったマスクを受け取った。さらに、緑のダウンジャケットを着た男性が青いコートの女性に近づき、マスクの箱を渡した。マスク不足が騒がれている中、まさか買い占めているのか?

また、他の場所ではこんな光景も…


「先ほどお金のやりとりをしてましたね 。何のお金をやりとりしていたんでしょうか。代わりに買ったということでお金を渡していたということなんでしょうか」(記者リポート)


中国はマスク不足が解消に向かっているはず。もしや、日本での転売を目的とした購入だったのか?金のやりとりをしていたとみられる女性を直撃した。


記者「すみません…」

女性「ちょっと!本当にやめてよ!」

記者「マスクをたくさん買ったのを見かけたので 」

女性「私はそんなにたくさん買ってない!」

記者「でも、一人1個と数量制限ありますよね?何箱も買っているのを見ました」

女性「昨日買った分ですよ。昨日並んで買いました 」

記者「でも今朝から並んで買っていたのを見ましたよ。誰か別の人に頼んで並んでもらってマスクを買わせていませんか? 」

女性「この2人は夫婦で、一緒に並んでマスクを買った、何か悪い? 」

記者「何軒かドラッグストアをはしごして、マスクを買っていませんか? 」

男性「そんなことしていない 」

記者「でも私たちあなたが2軒のドラックストアに並んでいたのを見ました」

男性「・・・・・」

3日間張り込み…見えてきた行動

 取材班は3日間にわたり、心斎橋の行列を追った。すると、3日とも行列に並んでいた人物を発見した。緑のダウンジャケットを着た男性だ。取材1日目に2箱。2日目は、列に並んだが販売がなく買えず。


そして3日目。再び、マスクを一箱購入した。かごにマスクを入れ自転車で立ち去る男性我々はそのあとを追った。そして…


「いま、緑のダウンジャケットの男性からブルーのデニムジャケットを着た女性に受け渡されました」(記者リポート)

「デニムジャケットの女性、誰かに電話をしています。誰かに電話をしています」(記者リポート)


緑のダウンジャケットの男性からマスクを受けとった女性はこの後一体どこへ?ドラッグストアを1軒、2軒と巡っていく。マスクを探しているのだろうか。


そして、あの緑ダウンジャケットの男性と合流した。他にも何人かと合流。グループでマスクを買い占めているのだろうか。緑のダウンジャケットの男性を直撃した。


記者「すみません。何軒ものドラックストアに並んでマスクを買っているのを見ました。どうしていつも並んでいるのですか?」

男性「今日1軒行っただけです」

記者「ここ数日間あなたが並んでいるのを見かけました」

男性「自分用に1箱、2箱ぐらいしか買っていません」

記者「でも、買ったマスクをデニムジャケットを着た女性に渡したのを見ました」

男性「そんなことしていません。そんな人は知りません」

記者「マスクは自分用ですか?」

男性「誰かに売ったりしていません。自分用です」

男性「仕事でもう行かないといけません」

記者「ここ数日間マスクを何箱も買っているのを見ました」

男性「何箱も?そんなことありません。自分用に2箱買っただけです」

記者「ひとりでそんなに大量なマスクはいらないのでは…?」

男性「知りません」

本当に自分用だったのか?それとも転売目的だったのか?さらに取材を進めると、ある中国人向けドラッグストアの店員がこんな裏事情を教えてくれた。


「いまはやっていないけど、少し前までうちみたいな中国人向けのドラッグストアが1枚10円のマスクを90円で買い取っていた。いまはマスクが高くても日本人が買いに来る」


マスク不足が叫ばれる中、買い占めた上に、高額で売り飛ばす。本当に必要な人にマスクが行き渡らないその理由の一端が、ここにあるのかもしれない。

転売規制で本当になくなるのか

 マスク転売に関する規制は、15日に施行された。スーパーやネットショップから購入した人が1円でも、高く他人に転売すると、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金となる。ネットオークションなどに政府が介入、しかも罰則がつく異例の処置となるが、これを取り締まる大阪府警の捜査幹部は…


「この規制で大手サイトから転売は減少するのではないか。そうなると、市場はツイッターなどのSNSに移ることが考えられる。ここの捜査を強化していきたい」と話す。


規制が施行された今後、マスクがSNSで隠語で取引される大麻のようになる可能性も指摘されている。

詳細を見る

詳細を閉じる

特集

2020年3月16日

【真夜中の定点観測】もっとカジュアルに生きてゆく・・・がんサバイバーたちが集うバーを定点観測

特集

 大阪・キタの片隅にあるカフェバー。週に2度、水曜と金曜にだけ開く、その扉の向こうには…

「私乳がんです」

「あ~いっしょいっしょ」

「この人がん種一緒や、とか」

「ありがち~」


集まるのはがんを生き抜き闘う人たち。そして、マスターもがんと闘う同士。


「僕もがんをはじめ、生きづらさのことを話さなくてもいいんだけど、それを隠さなくてもいい場というのをたぶん作りたくてここやり始めたんだろうなと」


街で気になる、あの場所この場所にそっとカメラを置いてみる。シリーズ「真夜中の定点観測」。今回お邪魔したのは、がんと向き合う「がんサバイバー」が集うバー「カラクリLab.」(大阪・北区)いったいどんな人がやってくるのでしょうか。

がんをもっとカジュアルに


「こんばんは~」

「なんか続々と」

「あ~久しぶり~」


午後7時半開店。小さなバーは、あっという間に満員に。常連さんも、ここで初めて出会う人も。


「元骨肉腫で(再発せずに)もう15年たって」

「私19年」

「すご~い」

「カラクリLab.」のマスターは、自らもがんと闘う谷島雄一郎さん(42)。会社員をしながら去年9月にオープンさせました。


谷島さん「ポップコーン食べたらがんが消えるらしいからな(笑)」

お客さん「あかんあかん!全部カットですよ(笑)」


「がんをもっとカジュアルに」。それが「カラクリLab.」のテーマです。


「はじめ(顆粒球)肉腫で後々白血病になるみたいな感じの病気で、18歳の時に病気になったんですけど」


バーの常連、29歳の小林さんががんを経験したのは、大学での新生活が始まる直前でした。


「ちょうど春休みの時に入院して抗がん剤スタートした日が(大学の)入学式の日やって。(大学に復帰して)誰も詳しくは聞いてこないけど、休んでた子みたいな感じで優しくしてもらうけど、その優しさが逆に辛かったりとか気遣われてるみたいで。この場は気を遣わなすぎてちょっと…こんな感じなんで(笑)でもそれがいいですね、癒やされます」(小林さん)


がんを経験した時に感じた「孤独」や「生きづらさ」。その思いを気軽に話せることが、この場所が存在する理由。

「私、豊かな人生を歩んでる」

「大阪で(会ったの)は2回目や」

「そうだわ会ったわ」


 岐阜と和歌山から来た土橋さんと荒井さん。今も抗がん剤治療中なのだそうです。


土橋さん「(この場所では)言いたいこと言える。例えば家で『再発した夢見た』なんて言われへんもんね。でもここのメンバーやったら、『再発した夢見たんやけど』と話をすると、みんな『あるよね~』みたいな」

荒井さん「『私がもし死んだら』みたいなことを言うと、周りの人たちが『縁起でもないこと言わないで』ってまともに聞いてもらえないんです」


現在45歳の荒井さんは、5年前に舌の裏の唾液をつくる部分にがんが見つかり、舌をほぼ全部切除しました。


荒井さん「手術の前はたぶんもう話せないだろうし、ごはんも食べられても流動食(と言われた)。でも今しゃべってるし、食べてるし。リハビリ頑張ったんですけど」


荒井さんの一番の楽しみは、がんサバイバーの友人とめぐる四国八十八か所のお遍路参り。


荒井さん「私は豊かな人生を送れているなと思う。何を食べても『ああおいしい!』ってありがたいなと思うし、もう話せないって言われてたのに、話してるからもう十分幸せ」

がんになったからこそ見える景色

マスター・谷島さん「まあうちの子正直客観的に見てもだいぶかわいいですからね」

土橋さん「小学校2年生やったっけ」

谷島さん「1年生なんですけど、縦も横もでかいんですよね(笑)」


マスター・谷島さんの食道に、がんが見つかったのは、8年前の34歳の時です。10万人に1人から2人と言われる「GIST」(ジスト)という希少がん。長女が生まれる直前の事でした。


谷島さん「ちょうどセカンドオピニオンに行って帰ってきた日に生まれてたんですけど、なんとしてもこの子のために生きなきゃいけないし、できればその当時は小学校の入学式に絶対出たいぞと決意を新たに治療を頑張ろうと。それが当時の気持ちですね」


現在も会社員として働きながら、闘病している谷島さん。「がん経験を生かす活動をしよう」。そう思ったのは、長女の何気ない姿がきっかけでした。


谷島さん「ちょうど子どもが3歳の頃ですかね。『デジカメほしい』というから買い与えたんですよね。そしたらすごく面白い構図の写真をいっぱい撮ってきて、その(子どもの低い)目線だから撮れる景色だよなと。だったら僕もがんになったからこそ見える景色というのがあって、それを誰かを幸せにするような価値に変えていけるんじゃないかなと思って」


目指すのは、がんに限らず、生きづらさを抱えた人が、ありのままの悩みを、「話のついでに」語れる場所。


土橋さん「いつ来ても楽しいですねここは。何も飾ることをは、いらないし、かっこつけることもいらないし、楽しく笑ってまた今度って言う感じで」

がんとつきあいながら働く、ということ

「私金融の総合職だったんですけど、いま保険会社で派遣で働いてるんですよ」


3年半前に乳がんが発覚した40代の女性。ガンに対する職場の理解が得られず、20年勤めた会社を去年、辞めざるを得ない状況に。今も怒りがおさまらないようで…


女性「もうすごいほんと腹立ったから、(前の職場の)本社を見下ろす場所で働いたろと思って、前働いてた会社の本社を見下ろして私仕事してます(笑)」

谷島さん「すごいですね」

女性「握りつぶすぞって感じですよ(笑)」


今の会社には、闘病中であることは話していないといます。ただ、がんの5年生存率が60%を超える今、がんとつきあいながら働くことは珍しくありません。


「めちゃくちゃ痩せましたよ。僕、20キロ痩せましたかね」


不動産会社で働く四谷さん(38)。8年前、30歳で胃にがんが見つかりました。


「やっぱり働けるからこそ、元気、まあしんどいですけど、無理してでも働いたからこそ、今元気でおれるんちゃうかなと」


このバーを訪れるのは「がんサバイバー」だけではありません。


「築地から来たんでお寿司を持ってきたんで…(笑)」

「わぁ~すごい」

「にぎりセットみたいな感じかな(笑)」


東京から、お寿司…ではなくおかきを手土産にやってきた男性。


「築地の国立がん研究センターで、がん対策情報センターというところでがん情報サービスというHPとか作ったりしてがんの情報を出させて頂いています」


数々のメディアにも出演する、国立がん研究センターの若尾先生。ここは、ガン患者の「本音」が聞ける貴重な場所です。


「ヒエラルキーみたいなのありますやん」

「ありますね」

「すい臓がんとかいわれたらおお~」

「この人がん種いっしょや」とか

「それはそれで嬉しいでしょ」

「10年目の方がえらい感じがする」

「病歴長いやつがえらいみたいな」

「あるあるですわ」


がん経験者の「あるある」が聞けるのもこの空間ならではです。


若尾さん「本当はがん患者さんだけの集まりじゃなくてみんなでダイバーシティですよね、色んな方がいる中で、共に生きる共生できるような社会を目指していかないといけないかなと感じてますね」

さて、午後11時、そろそろバーの扉が閉まる時間。


谷島さん「がんの経験というものに価値を与えていきたい。僕に何があろうと、やっぱり家族であったりとか友人であったりとか、大切な人の未来って言うのは今後も続いていくんだから、そこに対して何かを残していくといことが僕に取っての救いになるんじゃないか思って、がんの経験というのを価値に変えることで大切な人たちの生きる未来を作っていこうと思っています」


がんサバイバーが集うバーをのぞいてみると、そこには、人の数だけ、物語がありました。

詳細を見る

詳細を閉じる

特集

2020年3月13日

「新型コロナ」感染拡大の一途で大打撃 ウイルスと闘い続ける関西企業のいま

特集

関西経済に重くのしかかる、新型コロナウイルスの影響。バス会社の社長自ら、タクシー運転手に。


「体は壊れてないけど、心が…」


一方、光明が見え始めた会社も。

「ほぼ全ての職人さんが戻ってこられて、無事生産の方はかなり順調に」


ウイルスと闘う関西企業のいまを取材しました。


イベント中止の陰で…華々しい「ラストラン」が幻に

「目標135、ブレーキ、よし」


後輩の指導をする、新幹線の運転士・藤原茂さん(61)。


運転士歴28年、2004年に天皇陛下が京都に来られた際には「お召し列車」の運転を任されたJR東海のトップ運転士です。


「やはり残念の一言で・・・。最後はやはり熱い気持ちを持って運転して、新大阪駅まで無事故で700系が到着することを願っておりました」(JR東海 新幹線運転士・藤原茂さん)


1999年から運行が始まった700系新幹線。カモノハシのような独特の形状が多くの人に愛され3月8日に引退を迎える予定でした。ラストランでは、藤原さんが運転席に座るはずでしたが、新型コロナの影響で取りやめになってしまいました。


「(8日の)12時20分ピッタリに到着して、皆さんに拍手でお別れしてほしかった」(運転士・藤原さん)


結果的に最後の運行となったのは3月1日。ファンにとっても、藤原さんにとっても特別な一日が、予想外の結末になってしまいました。


「700系を愛していただきました皆様、心の中で700系に「お疲れ様」と言っていただけましたら幸いです」(運転士・藤原さん)

売上が9割ダウン 泣く泣く編み出した苦肉の策は

 コロナショックで窮地に立たされた企業があります。タクシーと貸し切りバスを運行する日本城タクシー(大阪・住之江区)です。


「おはよう今日は(バスの予約が)1台もない、ははは…」


と話すのは、社長の坂本篤紀さん。先月、主要な顧客だった中国からの団体客は、すべてキャンセルになっていました。


「これは大阪のバス会社・業界全体やと思うんですけど(新型コロナの)影響が出ないはずがない。うちで言ったら・・・9割ダウン」(日本城タクシー・坂本篤紀社長)


運行スケジュールを見せてもらうと、去年はぎっしり詰まっていたのに、いまは真っ白。2月の売上は1700万円から170万円程に激減しました。


「従業員140人の給料を払えない」(坂本社長)


坂本社長がとった苦肉の策は…


「もう3台ほど中古業者の方に渡っています。置いていても仕方ないから」(坂本社長)


従業員を一人も辞めさせたくないと、坂本社長は10台あったバスのうち3台を売り払い、事態を耐えしのぐ選択をしました。


そして3月初旬。


(Q.今からはなにを?)

「今からタクシー」(坂本社長)


なんと、社長自らタクシーを運転し、お金を稼ごうというのです。


「いろんな経費を自分で叩き出さなアカンやんな。もう営業も行き尽くしていくことないしな。することなかったら、自分でお金を稼がないことには」(坂本社長)


バスの仕事がないならタクシーで稼ぐ。坂本社長は「今できる限りの事を全力で取り組めば

悩んでいる暇などない」と前向きです。それでも、社長としての重圧は容赦なくのしかかります。


「『うわっ、金払われへん』とか『うわっ、給料払われへん』というような夢見て起きんねん(笑)夜中目を覚ます」(坂本社長)

(Q.最近も見る?)

「最近は特に見るんやない?バスで払われへんでつまづく夢なんかザラに見るわ(笑)」(坂本社長)


タクシーの営業を終え、事務所に帰った後も社長の業務は続きます。


「体は壊れてないけど、心が…ははは」(坂本社長)


重圧と戦い、仕事に忙殺され、大切なバスを売ってまで、坂本社長が守りたいものとは。


「いる順番は、僕らの世界でははっきりしている。お客さん、乗務員、それから会社。僕らにとっては良い運転手さんをもっているというのは誇りかもしれない」(坂本社長)

就職戦線、異状あり

 新型コロナウイルスの影はこれから社会に歩み出す学生たちにも・・・。

「説明会はもちろんそうですし、OBOG訪問、それから座談会もオンラインでしている企業もある。あと面接もけっこうオンラインで」


大学3年生のアユミさん(仮名)。2月下旬ごろから合同説明会の中止が相次ぎ、アユミさんが希望する会社の説明会もなくなってしまいました。本来なら対面でおこなわれる、説明会や面接の場が、インターネット上に移ってしまったのです。


「例年とはまったく違う環境での就活なのでお手本がない。けれどもそれってみんな同じ条件なので、私だけがそういう環境にいるわけではないので、とにかくいつも以上に情報のアンテナ張って、インプットして、自分なりのベストの戦略とか計画を立てて行動することに尽きると思う」(アユミさん)


 大阪で「就活CAFE」を運営し、学生の面接指導をするなど、就職活動をサポートしている採用コンサルタントの田中克典さん。合同説明会の中止は学生だけでなく、企業にとっても大きな損失だと指摘します。


「出会いの場が減ったというのが一番大きいですね。中小企業は特に、名前を知られていないところはそこで見つけてもらうとか知ってもらうっていうことがけっこうある」(田中克典さん)

合同説明会中止で企業側も「パニックに」

 大阪・高槻市で産業廃棄物のリサイクル事業を行う浜田。従業員130人ほどの中小企業です。今年度は5名程度の採用を目指し、合同説明会に3回参加する予定でしたが、すべて中止になりました

「大ダメージです。本当にパニックというか焦ってしまった」


採用担当の武内季樹さんは、「毎年内定者の9割は合同説明会で確保していたため、中止は死活問題だ」と話します。


「実際に話を聞いたらこんなにも社会貢献度のあるビジネスなのだとわかってもらえるが、なかなか『浜田』という名前を見ただけ、リサイクルという名前を見ただけでは、とっつきづらい分野かなと」(浜田採用担当・武内季樹さん)


そこで武内さんは、多くの学生にアピールするのをあきらめました。個別に学生に連絡を取り、少人数の説明会に切り替えたのです。説明会に参加した学生たちは・・・


「やっぱり社風とか人事の方にお会いするとわかるのですごくためになりました」

「(実際に話を聞いて)こういうビジョンを持ってるんだってのがすごくしっかり伝わってきました」


ただ、この日集まった学生は26人。合同説明会1回で会うことができる人数の3分の1にも届きません。


「みんなよく来てくれたなというのはすごくありますね。本当に地道にこつこつやるしかないと思っています」(浜田さん)

明るい兆しが見え始めた企業も

 一方、暗いトンネルを抜けつつある企業もあります。

「2月の頃の不安を思えばまだましなのかなと思うんですけど」


オーダースーツを販売する「ツキムラ」(大阪・西区)の専務取締役・岸裕亮さんは話します。新型コロナの影響で、2月には中国に3つある工場のうち、湖北省の1工場がストップ。残り2つも従業員がそろわず、ほとんど生産できない状況でした。


「スーツ1着遅れるだけでも、その方に対しては全部遅れちゃうのと同じなので、納期遅れに関してはシビアに考えています」(ツキムラ・岸裕亮さん)


国内唯一の仙台工場がフル回転、通常の2倍の商品を生産してなんとかカバーしていました。その後、湖北省以外の2工場がようやく稼働し始めたのです。


「(いまは)ほぼ全ての職人さんが戻ってこられて、無事生産の方はかなり順調にいっていると聞いてます」(岸さん)


ただ、不安がすべて解消された訳ではありません。


「ここにスーツがばっと掛かっているはずなんですけど、ちょっと物流で商品が遅れてしまってて、かけるはずの商品がまだ店頭にきてないと」(岸さん)


中国からの航空便の欠航が影響し、生産はできても配送できないという事態が起きています。


「減便してスペースがないと。うちの荷物が載せられないんですね?減便したから。次のチャンスで言えば?きょうの夜ですか?」


岸さんは毎日現地の担当者と連絡を取り合い、商品が無事に届くよう調整に追われます。

一進一退の日々ですが、少しずつ日常に戻りつつあるのを感じると言います。


「やっぱりうちの商品を選んでもらった以上、期待に応えたいなっていう思いがあって、きちんとしないとあかんなって思いでいっぱいです」(岸さん)

詳細を見る

詳細を閉じる

特集

2020年3月13日

孤独な育児から逃げたい…なら、ここにおいで 産後うつを乗り越えたママの手で作った「ママたちの駆け込み寺」

特集

ママさんもリラックス 好評の親子ヨガ教室

「手をたたこう~ 1,2,3でお・は・よ♪」


大阪・守口市内で、ベビーマッサージや親子ヨガ教室を主宰する林 麻里さん(33)。6歳の女の子と4歳の男の子を育てながら、自宅などで活動を続けています。


「アップダウンで高低差を楽しんでもらいます」

「しっかりおなかとおしりキュッと締めて」

「はい、ダウン~」


ヨガのインストラクターとして起業してから6年。レッスンのあと,必ず“おしゃべりタイム”を作るのが麻里さんのこだわりです。


「離乳食とか、その時々によって、夜泣きとか、経験者からも聞けるし、先生自体も経験してるから参考になります」

「何でも相談できる。お母さんみたいな存在で頼らせてもらってます」

きっかけは「孤独な育児」

 ママさんたちから絶大な信頼を受けている麻里さん。この仕事を始めたのは、自らが経験した「孤独な育児」がきっかけでした。夫は仕事、実家も遠方だったため、第1子を出産した後、「産後うつ」になりました。


「身近で、顔を見て話せる相手が居なかったから、途中でどんどんしんどくなっちゃって。娘が泣いてるたった10分。たった10分泣き止まなかっただけで、どうしようって、涙がぽろぽろぽろぽろこぼれてきて」


核家族化が進んだ現代。いまでは、およそ10人に1人の割合で、「産後うつ」を発症することが分かっています。


「死なせない、ただそれだけで必死」

「誰も代わりがいない授乳という母親業に孤独を感じた」

「平日のワンオペ・・・旦那に理解を求めてもうわべだけの返事が返ってくる」

つらい産後を乗り越えた2人のママが動き出す

 孤独な子育てを防ごうと、長年、ママたちと向き合ってきた麻里さん。これまで店を持たずに活動していましたが、自分の店を持ちたいと思うようになりました。


「いつでも私に会いに来てもらえる場所で、もうちょっと広いスペースでたくさんの人に来てもらえる場所が欲しいなと思った」


そんなとき、ベビーペイント講師や写真家として活動していたhaju(はじゅ)こと、笠井由果さんに出会いました。3歳と2歳、年子の子どもを育てる彼女もまた、つらい産後を過ごしていました。


「子どもってややこしいとずっと思って、苦手やったんですね。産んだらいきなり母親じゃないですか。家をきれいにしなければと思ったし、ご飯も作らなきゃと思ったし。毎晩のように主人にヒステリーでわめき散らして…」


互いに2人の子どもを育てる麻里さんとhajuさん。2人は意気投合し、ママたちを笑顔にする新しい店をもつことが、共通の夢になりました。

「お店持ちたいよと相談受けてから、互いの家庭環境とか話すじゃないですか。この人信頼できるなと思ったし、うまくいくんじゃないかなって」


資金準備にDIY…初めて尽くしの開店準備

 こうして、去年秋、2人の夢が動き出しました。2月、新たな拠点となる大阪市城東区の物件で、DIY作業が進んでいました。麻里さんとhajuさんは、Wオーナーとして物件を借り、準備資金は、わずかな貯金と、インターネットで支援を募りました。

(Q.何の作業?)

「天井にチュールを張って、ここでベビーマッサージとかヨガとかするんですけど、上をぱっと見たときにかわいく、赤ちゃんがふわっとした気持ちになれるように」


過去に水漏れして、大きなシミが残っていた天井。麻里さんは、メリーゴーランドをイメージしてカラフルで、やさしい雰囲気に仕上げていきます。


「かわいーわー!すごいー いいね」


壁には「漆喰(しっくい)」を塗っていきます。勢いよくへらを動かすhajuさん。ちょっと雑な様にも見えますが・・・そこで麻里さん、すかさずサポートに入ります。


麻里さん「人生で漆喰塗る経験とかないよね・・・(笑)」


普段は、普通の主婦2人。DIYももちろん初めて。そのほか、ホームページやチラシの制作、予算の管理。分からない事ばかりでしたが、これまで交流を重ねた多くのママたちが、得意分野を生かして手伝いに来てくれました。


「めっちゃかわいいな~。いいんじゃない!」


店のコンセプトは、「つながりのある育児」、そして「育児から逃げられる場所」。子育て中のママ同士、ここで会話を楽しんだり、ベビーマッサージや写真撮影会など様々なイベントも開催する予定です。

ママに戻る時間

 夕方になると、「オーナー」から「ママ」に戻る時間。子どもたちのお迎えへ、慌ただしく店を後にします。6歳と4歳の子どもを育てながら、開店準備にあたる麻里さん。夫は単身赴任中のため、家事・育児も1人でこなします。

(Q.ご飯どうしてる?)

「手抜きで買ってくるとか。でもだいたい作ってる。帰ってきて、お肉炒めるだけとか」


家族との時間を犠牲にしながら、夢の実現まであと少し。


「色んな人に手助けしてもらいながら、どんどんお店が出来上がって。悩みを相談してというお母さんたちが多いので、そういうお母さんの気持ちに寄り添う人でありたい」


多忙な毎日を過ごす麻里さんとhajuさん。準備の合間に、焼き肉ランチで息抜きです。


「元気出るー」

「もう食べたくて食べたくて今週はどんだけ忙しくても焼き肉を、と・・」


駆け抜けてきた、数ヵ月。2人はいま、お互いのことをどう思っているのでしょうか。


hajuさん「私は企画力とか人を集める力はあるけど,毎日毎日は会いたくない位、やかましいし(笑)。麻里ちゃんは会ったときから毎日会いたい。ほんまに癒やしキャラやから」


肉食女子のランチタイム。たくさん喋り、たくさん食べて、パワーチャージできたようです。

オープン直前 まさかのあのニュースが…

 オープンまで、あと数日。店は“hajuと麻里が支える、どっしりとした大木”の意味を込めて、「hajumari(はじゅまり)の木」と名付けました。内装も、ほぼ完成。


ところが、大きなニュースが飛び込んできました。


安倍総理「3月2日から春休みまで、臨時休業を行うよう要請します」


各地で感染が広がっている新型コロナウイルスの影響で一斉休校が決まり、イベントなどは自粛モード。苦渋の決断を迫られます。そしてー


「こんな時期にありがとう」

「かんぱーい!!」


2人は、予定通りお店をオープンさせました。こんな時期でも、「お店に来たい」と言ってくれたママたちの期待に応えるためです。消毒や部屋の換気など対策をしっかり行って、日付を限定しての営業です。親子をあたたかく迎えるインテリア。ママさん作家たちのハンドメイド作品が並びます。


「かわいーーー」


ママたちの手でゼロから作り上げた空間は大好評。たくさんの笑顔があふれていました。「hajumariの木」にやってきたママたちからは・・・


「そこに行ったら友達いるみたいな場所が欲しいと思ってた」

「元の物件は、古めかしい感じだったので、ママが好きそうな感じのインテリアになったんじゃないかな」

「こんな時期にありがとう、コロナの時期なのに来てくれて。出かけるとこない」

「もう、行くとこない・・・」

「ここは人数も混んでる訳ではないので,遊んでいって」


麻里さんとhajuさんのこだわりが随所にちりばめられた“憩いの場所”。施設の利用料は、フリードリンク付き、親子で1時間380円。おしゃべりしたり、レッスンに参加したり、使い方はママたちの自由です。


麻里さん「いっぱいの子どもとお母さんがここに来て、笑顔で帰って行くというイメージがあるので、それを実現していくスタートラインに立った」

hajuさん「育児疲れたというままを受け止めて、2人でぎゅーッと抱きしめてあげられるようなお店にしていきたい」

麻里さん「たのしみだね」

hajuさん「超たのしみ!」


ただいま、お帰りと、温かく包み込んでくれる「hajumariの木」。ここは、ママたちの駆け込み寺です。


【hajumariの木 ホームページ】

https://www.hajumarinoki.com/


【hajumariの木 インスタグラム】

https://www.instagram.com/hajumarinoki/


【hajumariの木 Facebook】

https://www.facebook.com/hajumari.no.ki/

詳細を見る

詳細を閉じる

  • 1

番組公式SNS

月別アーカイブ(特集)
2020年 2019年 2018年

番組公式SNS