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10月9日ゲスト:建築家、環境デザイナー彦坂 裕さん |
彦坂さんは今年の4月にもご出演されています。
手塚「9月25日に閉幕した愛知万博。彦坂さんは長久手日本館、瀬戸日本館を始めとする政府出展事業のクリエイティブ統括ディレクターを務められました。どのくらいの期間、名古屋に滞在されていたのですか?」彦坂「東京と名古屋を25往復、1週間ぐらい滞在していることもありましたから、会期185日の4分の1会場にいた計算になります」
手塚「お客さんの反応は?」彦坂「人の対応が素晴らしいという反応が多くて、これはすごくよかったなと思います」手塚「長久手日本館は竹を使ったパビリオンでしたが、海外からのお客さんの反応は?」彦坂「西洋の人は木とか竹を内装材には使いますが、外装にはあまり使わないんです。ですから9割の人が非常にビックリされて、興味を示してくれました。中にはこの建物を丸ごと自分の国に持って帰りたいという国が数カ国ありました。特に中東とかインドとか日差しの強い国でしたね」手塚「自国で作れないかという技術的なことも聞かれたんですか?」彦坂「聞かれました。竹は外に出しっぱなしにしておくと、最初は青いのがあっという間に黄色くなって、だんだん灰色になり、最後割れちゃんです。ですから構造材に使うには工夫がいるんです。今回も煙でいぶしたりしています。そういう技術は他の国には無いんです。日本には囲炉裏というのがあって、あれは結局建物をいぶしているんです。それでもちが違うわけです」
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手塚「他の国のパビリオンをご覧になった感想は?」彦坂「B.I.E.(博覧会国際事務局)という組織があって、そこの方と全部で9人と“自然の叡智賞”の審査員をやっていました。それで全部のパビリオンをまわりました。と言っても主催国と企業館は賞の対象にはなりませんのでそれらを除いてです。出展費用が少ない外国館は知恵を絞って面白いことをやっていました。ですから外国館が面白かったですね。外国は自然と人間の関係が我々と違うんです。我々は自然とか環境と言うと当たり前のように自分を含んでいます。アジア全般もそういう考え方ですね。でも外国は自分を含んでいないんです。対照なんです。それをベースに作り上げていくので、見え方が違ってくる。文化の違いが如実に現れているんです。それはものすごく面白いです」手塚「アジア性とヨーロッパ、欧米性ということですか?」彦坂「乱暴に言ってしまうとそうですね。そして植民地だった国とそうでない国ではまた違うんです。ですからB.I.E.の人とよくもめたんです。彼らは自然に叡智は無いと思っているから。“叡智があるのは人間であって自然はただあるだけである”そういう考えなんです。我々は“叡智は人間の方にあるけれど、人間と自然が一体化している場合は自然の中に神を見いだしたり、美しさを見いだしたりする”この考え方の違いがあるわけです。
もう一つ僕がビックリしたのは、どういう素材を核にして展開するか、何に集約するか、というその素材に“塩”が多かったことです。フランス館やクロアチアとかそうでしたね。床一面に塩を敷き詰めていました」 |
10月16日 彦坂 裕さん |
手塚「今回の万博のテーマは“自然の叡智”でした。今振り返って今後私たちの生活に行かされる物は何がありましたか?」彦坂「“もったいない”という言葉を世界共通言語にしようという動きがあります。他の国の言葉に“もったいない”にあたる言葉が見当たらないんです。20世紀は産業と環境が競合していました。21世紀は産業と環境を両立する。そのキーワードの一つが“もったいない”だと思います。今、地球環境は危機になっています。でも地球自体はタフだから氷河期を迎えたりなんとでもなるんです。でもそれで困るのは人間です。そしてもっと困るのは物を言わない動植物。それを守るために研究者や自然保護団体が活動しています。そこに普通の人が加わったら変わると思います。それに対する勉強もするだろうから。生態系を壊さないような知恵が常識化されればと思います。そして自分が欲望に対して抑制する、そういう技術を持った方が幸せになると言うことが定着すればもっと良いですね。抑制の技術というのは武士道がそうだったんです。世界的に見るとダンディズム、ハードボイルドもそうでしょ...」手塚「男性が多いですね(笑)」彦坂「女性は開放型だから(笑)それをやるだけで変わってくると思いますよ」
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手塚「他に気づいたことは?」彦坂「国際博なのに圧倒的に日本人が多いんです。ヨーロッパは地続きだから近隣諸国の一般大衆が来られるんです。でも日本は遠いですから来られる方も限られてしまいます」手塚「本当はもっといろいろな人種の方がその中にいれば、日本人もいろいろな刺激を受けますしね」彦坂「万博で良いのは普段絶対会えない人と平等に会えるということなんです。そういうことを経験できた方は、本当の意味の万博に参加されたと言えるのでしょうね」
手塚「万博が終わって元のお仕事に戻られるわけですが、彦坂さんの今後の活動は?」彦坂「2008年にスペインのサラゴサ、2010年は上海で博覧会があります。それに今回の日本を合わせた3つが21世紀最初の万博と言われています。愛知万博は、世界的には21世紀型万博の道筋をつけた万博として評価されています。また今後、僕自身が万博に参加するかどうかは分かりませんが、時間を意識できる空間を作っていきたいと思っています。時間を感じるためには心が豊かでなければダメなんです。ところが心を豊かにするためにはそういう場を作らなければいけません。ですからそういう物を作っていきたいと思います」
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トヨタ白川郷自然学校レポート |
藤崎達也さん |