手塚「竹下さんはこれまでいろいろな手塚作品にご協力いただいています。近い所では昨年公開された『ドクターピノコの森の冒険』のナレーションを担当されています。この作品には私も出ていて、アフレコの現場も一緒で、光栄でした(笑)」竹下「いいえこちらこそ(笑)あまり他の役者さんとお目にかからないですね、声の録音の場合は。だから広いスタジオで、ただただ画面を見つめながらしゃべるので、なんとなくこれで良いのかなと思うんですけど、るみ子さんとお目にかかれて、あの時はホッとしました(笑)でも難しいですね、声で全部を表現するのは。私はキャラクターに合わせた声は作れないので...」手塚「これまでにも竹下さんにはNHKの『火の鳥』で火の鳥の役を。また劇場版『ジャングル大帝』や1980年の劇場版『火の鳥2772』これも火の鳥役で...」竹下「その作品があったおかげで、手塚先生とお話しさせていただきました。とても優しく、にこやかにお話ししてくださって、いつものベレー帽のスタイルで。“あ〜、写真と同じ”と思いました(笑)感激でした」手塚「そのお話が来た時は正直どうでしたか?」竹下「とにかく夢のように嬉しくてすぐお返事はしたものの、火の鳥のイメージはもちろん人間ではないわけで、神々しくてエネルギーというか、命が溢れていて、どういう声にすればいいか掴みきれなくて、私で良いんだろうかという感じでしたね」
手塚「竹下さんは手塚(治虫)が亡くなった後、1990年に放送されたテレビドラマ『手塚治虫物語』で手塚治虫の奥さんの役、私の母の役ですね(笑)をやっていただいて、手塚の役が古谷一行さん。この時初めて私は実物以外の手塚の姿を見ましたね。生身の手塚治虫の世界を作るのは、やってみていかがでしたか?」竹下「このドラマには手塚先生の他にも、実際に活躍された漫画家の方が何人か、実際にお出になっていて、そういう一つの時代も描かれていたと思うんです。私は手塚先生が大好きだったので、亡くなるシーンが近くなると役を離れて悲しくなってしまったんです。それで“竹下さん、そんなに早く泣かないでください”と演出からダメだしされてしまいました(笑)でもこのドラマを通じて手塚先生のやって来たことのすごさを改めて感じました」
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