手塚「宮脇さんは、最初に雑草の研究から植物学者としての活動をスタートしていらっしゃいますが、雑草に興味を持ったのは、どんな理由からだったのですか?」宮脇「私は岡山県の農家の4男坊として育ちました。横着者で、2階から近所の人が農業をやっているのを見ていました。農業は草取りが仕事のすべてなんです。今でこそ除草剤がありますが、当時はありませんでした。そこで日本の農家の方は薬を使わずに雑草を抑えることが出来たら、楽に幸せになると思ったんです。それが始まりです」
手塚「その後、ドイツに2年間、留学されるわけですが、一番印象に残っていることは何ですか?」宮脇「朝から晩まで土を掘ったり草を取ったりしていて、ある日ラインハルトチクセン教授に我慢出来なくなって“もうちょっと科学的な研究をしたい”と言ったんです。そうしたら“まだ人の話や本を読むのは早い。見ろ現場を。30数億年の地球の、命の歴史がある。そこには何万マルクの研究費でも出来ない物がある。だから現場に行け。そして自分の体を測定器にし、自然がやっている実験結果を目で見、匂いを嗅ぎ、なめて、触って、調べろ”と言われ、それ以来50年泥臭いことを続けています」
手塚「私の父も自然が好きでよく自然の中に入っていきました。森の中にいると、森が教えてくれると言う話をしてくれたことがあります」宮脇「その人の自然に対する見方によってあらゆる物が見えてきます。私、口幅ったいかもしれませんが、基本的な自然、命を見る見方の哲学というか本質は、似ているのではなく同じなのではないかと思います。手塚先生と」 |